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「やめてー」刺された夫に覆いかぶさる妻にナイフを振り下ろす 子どものBB弾めぐるトラブルで刺殺 58歳の男を止めに入った隣人が証言

2023年11月16日(木) 15時46分 更新

殺人と殺人未遂の罪に問われている川口和人被告58歳(去年9月)
殺人と殺人未遂の罪に問われている川口和人被告58歳(去年9月)

 去年9月、北海道旭川市で、30代の夫婦を死傷させた罪に問われている58歳の男の裁判員裁判で、16日、当時現場で犯行を目撃し、男を止めに入った男性と、死亡した男性の妻への証人尋問が行われました。
 男性は、男を後ろから羽交い絞めにしたが、力が強くて止められなかったなどと証言しました。

事件現場は、川口被告の自宅前(旭川市)
 14日に旭川地裁で始まった裁判員裁判は、被害者特定事項秘匿制度により、夫婦は匿名にされています。
 起訴状などによりますと、旭川市の無職、川口和人被告58歳は、近くに住んでいた30代の夫婦、Aさん(夫)とBさん(妻)を折りたたみナイフで何度も突き刺し、Aさんを死亡させた殺人、Bさんに重傷を負わせた殺人未遂の罪に問われています。

 14日の冒頭陳述では、AさんとBさんの長女(当時11)が、学校からの帰り道に、道端で拾った玩具の銃のBB弾を被告の自宅敷地に投げ入れたことに、被告が怒鳴りつけるなどしたことが事件の発端となっています。
 AさんとBさんが被告に、事情を聴きにいったところ、被告が2人を折りたたみナイフで刺しました。

被害者の夫婦の長女(当時11)が川口被告の敷地にBB弾を放り込んだことに川口被告が激高
 
 16日は、被告の自宅の隣に住み、当時、現場で被告を止めに入った男性への証人尋問が行われました。

事件のきっかけとなった玩具の銃のBB弾
 男性は、もめている被告とAさんに「やめましょう」と声をかけたと証言。
 その後、被告は、Aさんをナイフで刺したため、男性が「おじさんやめろ」と言ったり、被告を後ろから羽交い絞めにしたりしましたが、力が強すぎて止めきれなかったなどと証言しました。

BB弾は直径5~6ミリのプラスチック製
<隣人の男性の証言>
・男性の視力は2.0
・被告とAさんは1メートルほど離れて向かい合っていた
・2人に「やめましょう、やめましょう」と声をかけた
・被告がAさんを右手で殴ったと思ったら、手にナイフが見えた
・「おじさん、やめろ」と大きな声で言って、間に割って入ったが被告に払われた
・被告を後ろから羽交い絞めにしたが、力が強すぎて止められなかった
・被告は後ろに下がったAさんを追いかけて、肩や腕、背中を刺した
・Aさんの妻Bさんが「やめてー」と大きな声で言って、Aさんに覆いかぶさった
・被告はBさんにナイフを振り下ろすように刺した
・被告とは、会ったらあいさつする間柄
・事件前はいい人だと思っていた

 また続いて行われたAさんの妻Bさんへの証人尋問では、長女がBB弾を投げたことの謝罪を含めて、被告の家を訪ねた経緯などを証言。
 そして被告には「一生、刑務所の中で、刑を受け止めてもらいたい」などと話しました。

<Aさんの妻Bさんの証言>
・長女がBB弾を投げたことの謝罪と事実確認のため被告の家に行った
・被告は夫Aと話す間、ポケットに手を突っ込み、カチャカチャと変な音がした
・Aは殴られるたびに血が出ていた
・被告に体当たりをして止めに入った
・気が付いたら、体に何かが入ってくる感覚と熱いものが流れる感覚があった
・被告は「全員ぶっころしてやる」と言っていた
・事件後、長女はあえて元気にふるまっているように見える
・被告に対しては、一生刑務所の中で刑を受け止めてもらいたい

 15日の証人尋問では、夫婦の12歳の長女が下記のように証言しています。

<長女の証言>
・投げたBB弾は5~6ミリの白いプラスチック製
・右手で下から上に1個投げると、被告の家のコンクリートの階段にぶつかった
・飛び出してきた被告が「おまえら、何やってんだ」
・何度も「ごめんなさい、すみません」と謝った
・被告にランドセルを引っ張られて玄関まで連れて行かれた
・算数のノートをちぎって、名前や電話番号、学校名、担任の名前を書かかされた
・帰宅してママに話すと、謝りに行くことになった
・被告は「石を投げられた」と言っていた
・パパと話をしているとき、被告はずっと右手を隠していた
・パパが「住所を書かせるのはやりすぎではないか」と言ったところで被告が刺した
・被告は、パパを追いかけて何度も刺し、パパが着ていた白いシャツが赤く染まった
・パパやママを襲うとき、被告は「みんな、殺してやる」と言っていた

被告とAさんは1メートルほど離れて向かい合っていた
 14日の初公判では、検察は冒頭陳述で犯行に至った経緯を下記のように説明しています。

<検察が説明、犯行までの経緯>

※きっかけは、子どもの些細な“いたずら”
・Aさんの長女(当時11歳)は友人と下校中、被告の住宅前で玩具の銃の弾=BB弾を拾う
・カーポート奥の玄関前に投げつける
・被告はカーポートに設置した防犯カメラの映像を自室で見て、外に出る
・「おまえら、何やってるんだ」と2人を怒鳴りつける
・さらに、友人のカバンを蹴り、中の水筒を凹ませる
・2人に住所と名前をノートに書かせる

※長女から話を聞いた夫婦は…
・生後7か月の次女も連れ、4人で被告の住宅へ
・Aさんがインターフォンを押すと、被告はナイフをポケットなどに隠して玄関へ
・Aさん「娘がBB弾を投げちゃったみたいで?」
・被告「石を投げられ、傷がついた」
・Aさん「住所を書かせるほどのことなんですか?」
・被告「なに言ってるんだ、やるか?」とナイフを取り出し、Aさんを襲う

※夫婦を刺した状況
・Aさんは腕を上げて防御し、後退する
・被告は背中などを何度も刺す
・妻のBさんが被告に体当たり
・被告は体当たり後に座り込んだBさんの背中を刺す
・その際「全員、ぶっ殺してやる」と叫びながら何度も刺す

<弁護側の反論>

※被告の精神状態
・夫婦を殺すつもりなどなかった
・危害を加えられると勘違いし、恐怖で精神障害を引き起こす
・善悪の判断ができず、思いとどまれない状態
・Aさんに「どこが傷ついているんだ」などと捲し立てられ、恐怖が膨らむ
・急性ストレス反応で、何が起こっているかわからず、行為の危険性もわからない状態

17日の証人尋問では川口被告の精神鑑定をした医師が証言予定
 殺意の有無や刑事責任能力などが争点になった裁判…17日は川口被告の精神鑑定をした医師への証人尋問が行われる予定です。
 判決は12月1日に言い渡されます。