男性を襲ったのは知床で「有名なヒグマ」今年に入って30回以上目撃情報“人との距離感”がわからなくなった可能性…という指摘も
2025年09月02日(火) 16時08分 更新

8月、知床半島にある羅臼岳の登山道で、26歳の男性がヒグマに襲われ死亡した事故について、公益財団法人 知床財団は、1日、新たな調査結果を公表しました。
その中で「事故前の7月29日、岩尾別地区で、捕獲されたヒグマとの関係性はわからないものの、ヒグマへの餌付けが疑われる事案が発生していたこと」、「男性が、事故当日、いわゆる『トレイルランニング』と呼ばれるスタイルで登山していたという情報はないこと」、「遭遇地点から谷側に下った林の中で、被害男性のスマートフォンなどの遺留品やヒグマの体毛を新たに発見したこと」などを明らかにしました。
ヒグマによる人身事故では、8月14日、羅臼岳の登山道で、東京都在住の26歳の男性が襲われ死亡しました。
■捕獲されたヒグマは、知床の“有名なヒグマ“男性が襲われた現場に通じる登山口(8月14日 北海道・羅臼岳)
知床財団によりますと、今回捕獲されたヒグマは、2014年から 知床国立公園内で毎年のように目撃されていたクマで、岩尾別地区を中心に活動していました。
地元の人たちの間では、“有名なクマ“でした。
今年に入ってからは子グマ2頭も確認され、公園内の道路沿線など人目につく場所で繰り返し目撃されていて、この親子グマとみられるヒグマの目撃情報は、30件以上寄せられていました。
「人を避けない。人に出会ってもすぐに逃走しない」行動がたびたび確認されていたため、こうした行動を予期するための追い払い対応を繰り返し行ってきた経緯もあるということです。岩尾別の登山道(資料)
一方で、知床財団は、岩尾別地区で、7月29日、ヒグマへの餌付けが疑われる事案があったことを新たに明らかしました。
捕獲されたヒグマとの関係性は分かっていません。
■被害男性と同行者の距離は200メートルほどだったか羅臼岳(標高1661m)
知床財団によりますと、被害男性は、同行者と200メートルほど離れ先行して単独で走って移動していたとみられていますが、男性が、いわゆる『トレイルランニング』と呼ばれるスタイルで登山していたという情報はないということです。
被害男性は、クマ鈴をつけていましたが、クマスプレーを持っていたかどうかは分かっていません。
男性の同行者は、「クマよけスプレー」とうたっている商品を持っていましたが、ヒグマに対応したものではなく、利用した形跡があるものだったということで、現在、詳細を調べているということです。
一般的に、一度使用したスプレーは、効果が期待できないということです。男性が襲われた現場に通じる登山口(8月14日)
また、同行者は、救助を待つ間に、登山道を下るヒグマ1頭を目撃していたことが新たにわかっていて、男性を襲ったヒグマの可能性があるということです。
■被害男性のスマホなどを新たに発見
知床財団によりますと、8月20日に実施した現地調査で、被害男性がヒグマと遭遇した地点から谷側に約10メートル下った登山道外の林の中で、新たに男性のスマートフォンなどの携行品と、ヒグマの体毛を回収しました。男性の捜索に向かう警察(8月15日)
遺留品から採取したヒグマの毛や唾液を調べた結果、捕獲したヒグマのDNAと一致したということです。
羅臼岳の岩尾別コースは現在も閉鎖が続いていて、再開時期は未定です。男性の捜索に向かう警察(8月15日)
知床が世界自然遺産に登録されてから20年という節目の年に起こった痛ましい事故。岩尾別の登山口(資料)
30年以上にわたってヒグマの保護管理に努めてきた知床財団は、今回の事故は重大かつ深刻な事案と受け止めていて、人との距離感がわからなくなったヒグマが増えている可能性もあるとして、今後の安全対策や再発防止などについて、関係機関と協力しながら、検討を進めていきたいとしています。羅臼岳(資料)