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釧路湿原で進む太陽光発電工事 タンチョウの生態に影響は?現場は民有地で規制の対象外…自然保護か再生可能エネルギーか価値観の対立の行方

2025年07月26日(土) 07時00分 更新

 メガソーラー建設を巡って、北海道の釧路湿原が揺れています。

【調査依頼内容】



札幌在住のまりなさん(30代)
「釧路湿原のメガソーラー建設について、野生動物や自然環境の調査が行われているのか調べてください」

◆近くにタンチョウ 食い違う主張
これまでHBCでは、釧路湿原に敷き詰められたソーラーパネルの問題を取り上げてきましたが、ここにきて、新たな問題が発生しているといいます。

いったい何が起こっているのでしょうか?



・猛禽類医学研究所 齊藤慶輔代表
「私が働いている釧路湿原野生生物保護センターは国立公園に指定されている。隣接する国立公園外の区域で、大規模なソーラーパネル建設の工事が行われている。センターで飼っている鳥たちにも届く騒音を立てて、朝から晩まで工事が行われている。どんどん湿原を埋め立てる工事が行われている」

警鐘を鳴らすのは、猛禽類医学研究所の獣医師、齊藤慶輔代表です。

工事現場は、研究所からわずか300メートル。サッカー場6面ほどの広さに、6600枚のソーラーパネルが設置される計画です。

齊藤代表には、さらに懸念していることがありました。

調査員が現場を訪れると…。



・調査員
「あちらに、タンチョウの親子を発見しました」

工事現場から数百メートル離れた場所には、ヒナを連れた国の天然記念物タンチョウの親子がいます。

タンチョウを発見したのは、工事現場から500メートルほどの馬の放牧地。

・猛禽類医学研究所 齊藤慶輔代表
「今までと環境が変わることで、繁殖地として使わなくなる可能性がある。一時工事をストップして、タンチョウに影響があるかどうか見極めて、影響がないように行うのがマナー」

齊藤代表は、もし工事現場にタンチョウの営巣地があった場合、文化財保護法や鳥獣保護管理法に抵触する可能性もあると指摘します。

さらに、絶滅危惧種のキタサンショウウオも生息している可能性があると主張しています。

一方、今回のメガソーラー工事を行っている大阪に本社を置く日本エコロジーの責任者に話を聞くと…。



・日本エコロジー 大井明雄営業部長
「私たちは、釧路湿原とは距離を置いたところを場所として選定している」

工事現場は、国立公園外の民有地であり、自然公園法の規制はかかりません。

また、建築物でもないため、ソーラーパネルの設置が可能なのです。



日本エコロジー 大井明雄営業部長
「私たちは調査して、第一次調査の結果は博物館にメールしている。釧路市環境保全課にも届け出をして受理印をもらった」

2023年、釧路市は「太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を施行しました。

事業者は、工事60日前までに市長宛に届出書を提出し、工事前には、生物調査の結果を釧路市立博物館に提出する必要があるといいます。

しかし、ガイドラインのため、法的な拘束力はありません。

日本エコロジーは、専門業者に希少生物の事前調査を依頼。

オジロワシやタンチョウなどの営巣地はないと結論づけたものの、工事現場の近くには、タンチョウの親子の姿がありました。

これは、どういうことなのでしょうか?

今回の工事に関連して、現場でタンチョウが営巣しているかについて、日本エコロジーに見解を示したのは、タンチョウ保護研究グループの百瀬理事長です。

・タンチョウ保護研究グループ 百瀬邦和理事長
「タンチョウの保護研究を20年以上やっているが、馬の放牧地で親子が子育てしているのは、過年度には何度も目撃している。当該地域が営巣地になっていた可能性はない。ただ周辺にはタンチョウはいるので、餌場として利用している可能性はあるとヒアリングの内容にサインした」

百瀬理事長は、日本エコロジーから聞いた現場の状況と、過去の調査結果をもとに、タンチョウは営巣していないと判断しました。

一方で、猛禽類医学研究所の齊藤代表は、現場での調査の必要性を主張します。



・猛禽類医学研究所 齊藤慶輔代表
「事前の現地調査をやっていないので、誰もどこに巣があったのかわからない」

・日本エコロジー 大井明雄営業部長
「我々としては、電力の強化と再エネ、二酸化炭素を減らすためのお手伝い。ビジネスもあるけど、社会的な責任も担っている」

さらに、双方の食い違いは続きます。

日本エコロジーは、釧路市のガイドラインに基づき、2024年12月と2025年3月に、調査結果を博物館に提出したということです。

一向に博物館からの返答がなかったため、工事に着手すると、突然、博物館から「ガイドラインに基づいて専門家の意見を聞くよう」連絡があったといいます。



・釧路市立博物館 秋葉薫館長
「調査報告書を12月に受け取りましたが、『予備調査』と書いてあったので、正式な調査報告書が提出されるものと認識していた。調査が完了したとは考えておらず、必要な書類の提出を要請している」

釧路市は、計画届出書が提出されたので受理したものの、2024年12月、博物館に提出された調査報告書が「予備調査」と記載されていたため、本調査の報告書を待っていたということです。

お互いに、お見合いの状態が続いていたわけです。

しびれを切らした日本エコロジーは、6月に工事を開始。

ただ、5月にタンチョウの親子を市民が確認したため、博物館は専門家に意見を聞くように依頼したのです。

・釧路市立博物館秋葉薫館長
「これについても、まだ協議中のため、これから事業者と協議を重ねていく予定です」

自然保護か再生可能エネルギーか。2つの価値観が対立する中で、工事は今も続いています。

【調査結果】



・博物館は調査報告書に「予備」と書かれていたので、本調査があると思い報告書を待っていた。
・事業者は返信がなかったので、手続きが完了したと思い工事に着手した。

自然保護と再生可能エネルギー、釧路市の動向に目が離せません。

北海道ニュース24