ニトリHD会長が惚れ込んだ景色 小樽の「オタモイ」再開発計画が事実上“凍結”へ 事業費確保のメド立たず、早期実現は困難
2025年06月13日(金) 16時19分 更新
小樽市のオタモイ地区にあった「リゾート地」ですが、再開発の動きに高い壁が立ちはだかりました。
龍宮クルーズ ガイド
「こちらがオタモイ海岸になります。ここには昔このような建物があった。高級料『龍宮閣』ですね。信じられませんね」
地上40メートルの断崖絶壁に、ポツンと見える祠のような建物。昭和の初めにあった遊園地の跡です。
雄大な景色が広がるこの場所で、2021年、ある「プロジェクト」が動き始めました。
ニトリホールディングス 似鳥昭雄会長(2022年)
「雄大ですよね。北海道らしい。本州から来た人は感動するのでは」
ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長が「ここを新たな観光スポットとして再開発したい」と、地元の経済団体に提案したのです。
しかし、4年経ったいま…。
木下純一郎 記者
「小樽のオタモイ海岸の駐車場です。こちらにはかつて夢乃里と呼ばれたオタモイ遊園地の入口が、いまも残っています。土砂崩れのため近づかないで下さいという看板もあり、現在入ることができません」
「夢のプロジェクト」のその後を取材しました。
昭和の初め、小樽市の北西に道内屈指のレジャー施設がありました。
「夢乃里オタモイ遊園地」です。
演芸場や海水浴場があり、夏場は1日数千人の人で賑わったといいます。
目玉施設は、高級料亭の「龍宮閣」。
海へせり出し、天空に浮かんでいるような「夢の城」は、当時の経済人や文化人に愛されました。
しかし1952年、「龍宮閣」は火事で廃業に。
遊歩道も崩落が相次いで、立ち入り禁止になり、「オタモイ遊園地」はいつしか忘れ去られた“夢の地”になっていきました。
そんな中…
ニトリホールディングス 似鳥昭雄会長(2021年)
「ハラハラドキドキするような絶景が北海道にあったんだなと感動した」
2021年、ニトリの似鳥昭雄会長が、再開発の調査費として5000万円を小樽商工会議所に寄付しました。
ニトリホールディングス 似鳥昭雄会長(2022年)
「観光協会や国や地元の人も参加して運営していければいい。(実現は)3年以内、長くても5年以内に」
かつての「龍宮閣」を彷彿とさせる展望テラスや、断崖を結ぶジップラインの導入などが構想されていましたが…。
小樽商工会議所
「計画は先送りします」
商工会議所や観光協会からなる協議会は、計画を事実上凍結する方針を固めました。
協議会によりますと、小樽市がこの地区の安全性を懸念しているほか、他の行政課題を優先させる考えであることから、民間主導で15億円以上と見込まれる事業費の確保は困難と判断しました。
小樽市民
「残念だなと思う。小樽を再度、発展させるというかにぎわいを見たい」
「整備することを考えると、かなりお金がかかるのかな」
小樽でクルーズ船を運航する、北欧産業の海老名敏男社長もプロジェクトに期待を寄せていたひとりでした。
北欧産業 海老名敏男社長
「小樽は海・山・観光がつながっているので、絶対にいい条件をもたらしている。これ(プロジェクト)が進まないと、小樽の観光は大きな『空き』ができる」
■再開発が「事実上凍結」の方針となった経緯
オタモイ開発協議会によりますと…
まず、15億円以上と見込まれる事業費をどう確保するかが課題でした。
この金額は施設の整備にかかる額で、実際には道路や水道などのインフラの整備もしなければいけないため、さらに費用がかかります。
協議会は国の交付金活用を見据えていましたが、事業の主体になるとみられていた小樽市が懸念を示しました。
・地滑りが起きやすい地形で安全性にリスクがある
・すでにある観光地の整備など、ほかに抱えている行政課題を優先したい
・この地区は国定公園なので、民間だけでは実施が難しい
こうしたことから、事業費確保のめども立たず、協議会は早期の実現は困難と判断したということです。
協議会は「オタモイを観光資源として活用するために、今後も引き続き、課題や計画を整理しながら協議していきたい」としています。
5000万円の調査費を寄付していたニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は、「オタモイから見た夕日がすばらしい。この景色を生かしたいという想いは現在も変わっていません」と、HBCの取材にコメントしています。
協議会は15日に総会を開き、今後の方針を確認することにしています。