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小さな村に移り住んだ36歳の元高校教師「協力隊の課題は…2~3年でいなくなる」伸び悩む定住率に村の新たな一手とは?【地域おこし協力隊】北海道島牧村

2025年06月21日(土) 09時00分 更新

 全国各地で活躍する「地域おこし協力隊」ですが、任期を終えると、地元を去ってしまうケースが少なくありません。広島県の元高校教師を迎え入れた、日本海に面した北海道の小さな村が取った、新たな“一手”です。

◆《約1200人が暮らす小さな村に移り住んだ元高校教師(36)》

 今年4月から北海道で暮らし始めた藤原将智(まさとも)さん、36歳。広島県の元高校教師です。

藤原将智さん(36)
「海があって、すぐ崖があって…海岸段丘といって波によって削られた崖なんです。そんなことを高校で教えていた」



藤原さんが暮らすのは、日本海に面した北海道の島牧村。人口は1200人あまり、過疎化が止まりません。そんな小さな村に移り住み、藤原さんは「地域おこし協力隊」としての活動を始めました。

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「山はきれいだし、自然は豊かだけれど、人がいないですよね」



◆《任期終了後に定住した協力隊は10年で1人》

 “村を素通りしないでほしい…”そうした願いが名前にこめられた、道の駅『寄ってけ!島牧』。

村が迎え入れた今年度の協力隊は、藤原さんを含め3人です。外資系の医薬品メーカーで支店長だった59歳の男性に。



小学校の元校長だった、上富良野町出身の60歳の女性と、経歴はさまざまです。



道の駅の客足が収まった午後、藤原さんは、ある場所へ向かいました。

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「こんにちは…閉まっている」「ここは可能性がありますね。電気もたぶん来てますよね」

周辺は人の営みが消え、空き家が並んでいます。藤原さんは、自分に続く『地域おこし協力隊』の、生活の拠点を探しています。



地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「空き家をリフォームして、リノベーションして、住めるような状態にしないと、次に協力隊が入ってこない…住処がないので」

『地域おこし協力隊』の任期は3年。その後の定住も見据えた制度です。ただ島牧村では、10年で6人を迎え入れましたが、定住したのは1人に留まります。

◆《低調な定住率…村の新たな一手は大学との連携》

 経済的に自立できる仕事があれば、定住が進むのではないか。そんな狙いから島牧村は去年の冬、東京に本部を置く事業構想大学院大学との連携を決めました。

4月に島牧村にやってきた3人。大学などを通じて『地域おこし協力隊』の募集を知り、応募しました。



藤原さんは夕方、島牧村の保育所まで、息子の地大(ちひろ)くん5歳を迎えに行きます。シングルファーザーの藤原さん。元は民宿で、空き家になっていた建物で、2人は暮らしています。



夜、藤原さんは、自宅の居間に置いたパソコンに向かっていました。

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「いま、お父さんお話してるので、ちょっとだけ静かにしてて」

オンラインで向き合う相手は、島牧村が連携を決めた事業構想大学院大学の講師。藤原さんは去年、この講師がいる大学に入学しました。

『地域おこし協力隊』の活動を通して“地域おこしの芽”を探し、新たなビジネスにつなげる。それが藤原さんに課せられた大きな宿題です。

事業構想大学院大学(福岡校)講師
「地域資源って、地元の自分たちで気が付かないケースが多々あるんですよ」

大学の講師は、ビジネスのヒントは、日常の“ひらめき”にあると、藤原さんに伝えました。

◆《定住には経済的な自立が…協力隊の伴走者》

 ある晩、地元の居酒屋を訪ねた、藤原さんと、もう一人の協力隊のメンバー。ここでも“ひらめき”がありました。

居酒屋の女将
「はわさびのしょうゆ漬け、はいどうぞ!ずっと前から思っていました、島牧村に協力隊が来てくれてうれしいって。人口が3人増えたって!」 

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「ん~うまい!めっちゃうまい!」

協力隊(島牧村)メンバー
「これこそさ、道の駅で出したいよね」

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「道の駅で出したい。道の駅で、夜の部もやって出したいですう」

これも“地域おこし”のビジネスにならないか…。何気ない日常に“ひらめき”を探す毎日です。

島牧村に、初夏を告げる甘えび漁が始まった6月。道の駅『寄ってけ!島牧』の一角にできた、事業構想大学院大学のサテライトキャンパス。

地域おこし協力隊のメンバー3人が集まり、大学から指導教官を迎えて、対面で授業です。3人は宿題として課せられていた「空き家探し」の結果を報告します。



事業構想大学院大学の客員教授、若林伸一さん。沖縄や新潟の離島などで、新たな観光事業の基盤作りに関わり、地域の活性化を手掛けています。

事業構想大学院大学 若林伸一客員教授
「地域おこしの課題は、全国各地でいま、上手くいってないんです。起業するっていっても、カフェかゲストハウスで、2、3年経ったらいなくなるパターンで。私が毎月、来て“伴走する”というのが、今までの『地域おこし協力隊』にはなかったこと」

この日は、かつて島牧村の人気スポットだった温泉施設にも…。閉鎖されて、すでに20年が経っている施設です。村の職員がカギを開け、地域おこし協力隊の3人と若林さんは中へ進みます。

地域おこし協力隊の3人
「これは、いいですねー」「もったいないな…」「ロケーションはいいですね」

日本海が一望できます。毎月、こうして”指導役の伴走”を受けながら、経済的に自立できる、新たなビジネスの立ち上げを目指します。

事業構想大学院大学 若林伸一客員教授
「遊休施設が山ほどあるので…活用方法とか…まずは観光客1万人ですよ。1万人の観光客があれば、1億円が入るので。この地域には課題がたくさんあるので、これが裏返せば「可能性」になるので」

地域おこし協力隊(島牧村)藤原将智さん(36)
「島牧の方もよくしてくれる。その分、何か貢献したいという気持ちになる。なんとか、よくできないかなーと思う」

地域おこし協力隊の活動を始めて2カ月あまり。3年の任期を終えた後、島牧村に根をおろしてくれるかどうか。村の期待を背負いながら、3人の活動は続きます。

◆「任期のあと、どういう形で定住するか」

堀啓知キャスター)
 地域のチカラとなってくれる『地域おこし協力隊』ですが、島牧村では任期後の定住者は、10年で1人という厳しい現実があります。

鶴岡慎也さん)
 島牧村は、自然もあっていいとところだと思うんですけど、やはりこれだけ定住率が低いということは、もしかすると、何かしらの原因があるのかもしれませんし、残ることを選択しない理由はどこにあるのか、自治体側のサポートなのか、どういう体制なのかっていう、しっかり把握する、分析する必要がありますよね。

世永聖奈キャスター)
 『地域おこし協力隊』の任期を終えた後、唯一、島牧村に定住して、現在、農業を営んでいる丸山倫徳(とものり)さんに、自身の体験として話を伺いましたところ「3年の任期後、1人でどうにかすることには限界がある」「地域おこしで結果を出すより、任期のあと、どういう形で定住するか考えた方がいい」…とのことでした。

堀啓知キャスター)
 全国初の大学との連携で“伴走役”が付くという、この取り組みは新しいですよね。

鈴井貴之さん)
 そうですね、すばらしい取り組みだと思います。そもそも何をしてもらいたいのか、そして協力隊は何をしたいのか。そこにまずズレが生じていると思うんですよね。

 そういうのは、今までは手探りだった状態に、伴走役の方がつくことで、いろいろなアドバイスにもつながっていくので、それは、とても素晴らしい取り組みだと思います。

世永聖奈キャスター)
 島牧村の地域おこし協力隊で、大学院の2年生でもある藤原さんですが、こんなことを6月14日に企画していました。初めて企画したというのが「魚の詰め放題」です。

 発泡スチロールにホッケやヤナギノマイなど約15匹を詰めることができて、価格は1500円。こちらも、課題として取り組んだ試みでしたが、地元の人たちで大賑わいだったそうです。

堀啓知キャスター)
 市場には出てこないようなお魚、いわゆる未利用魚。でもまだまだ使える魚、これを活用してまさに資源保護にも繋がると思います。藤原さんは2026年の3月までに、指導教官の指導を受けながら村に定住するため、村の観光資源を活用した事業計画をまとめることになります。大変だと思いますが、結果を出してほしいなと思います。

北海道ニュース24