広がる高病原性鳥インフル…アザラシ、ラッコにも拡大、海鳥との生息地が重なり感染か ばんえい競馬では馬インフルでレース中止に、ワクチン接種で重症ならず
2025年05月13日(火) 20時56分 更新
今日ドキッ!で放送
砂浜で身をよじらせるゼニガタアザラシ。4月、北海道・根室市で撮影された映像です。
このアザラシはその後死に、検査の結果、「高病原性鳥インフルエンザ」に感染していたことがわかりました。
アザラシの感染が確認されたのは、国内で初めてです。
いま動物の間で何が起きているのか。拡大する動物のインフルエンザを「もうひとホリ」します。
「根室市歴史と自然の資料館」の学芸員、外山雅大(とやままさひろ)さんは有志で海岸を調査していて、このアザラシを見つけました。
根室市歴史と自然の資料館 外山雅大さん
「目が充血していて苦しそうな感じだったんですよね」
この海岸では、少なくとも4頭のアザラシが死んでいて、このうち2頭から「高病原性鳥インフルエンザ」のウイルスが検出されました。
根室市歴史と自然の資料館 外山雅大学芸員
「アザラシにも感染が拡大したんだなと印象としては思った。海外ではそういう報告が既にいくつかあったので北海道で起きてもおかしくないかなと考えていた」
アザラシが見つかった海岸では。
ナギーブ モスタファ 記者
「根室の花崎灯台すぐ近くの海岸です。ゼニガタアザラシでしょうか。カモメが死骸を食べているのが確認できます」
鳥インフルの感染が判明したのは、アザラシだけではありません。
ナギーブ モスタファ 記者
「こちらの海岸では今月に入り2頭のラッコが打ちあがったということです」
絶滅危惧種のラッコでも、鳥インフルエンザの感染を確認。
隣の浜中町では、4月下旬、高病原性鳥インフルエンザに感染したラッコが国内で初めて見つかっています。
今シーズン、北海道内で確認された野鳥の高病原性鳥インフルエンザは104例で、過去最多となっています。
このうち、北海道東部がおよそ6割を占めています。
地元漁師
「(今年鳥の死骸は多いと思い?)多いって、こんなの初めて。人にうつらなければいいなと心配だけど」
動物の感染症に詳しい北海道大学の迫田義博(さこだ・よしひろ)教授は、ウイルスが変化して海鳥の間で感染が広がりやすくなったため、生息地が重なるアザラシやラッコにも拡大したとみています。
北海道大学大学院獣医学研究院(獣医学専攻)迫田義博教授
「鳥インフルエンザウイルスを持っている鳥の数、そして種類が多い。ウイルスとしては(その種感染してる動物を殺さずにとにかく移りやすいウイルスに変異していくわけですよね。ウイルスまみれの岩場とかをアザラシだとかラッコが共有することによって、偶発的な感染が起きていると。犬や猫への感染ってのはこれ諸外国で既に報告されてるんですね。ワンちゃんがそういう死体とかを直接触ったりかむことがないよう、注意が必要」
また、インフルエンザはこんな場所でも。
大内孝哉カメラマン
「帯広のばんえい競馬では、競走馬の間で馬インフルエンザの感染が広がりました」
北海道帯広市のばんえい競馬では、4月25日に3頭の競走馬が「馬インフルエンザ」に感染したことが確認され、レースが中止に。
その後、およそ800頭いる競走馬のうち、半数にあたる420頭ほどに発熱や鼻水などの症状が出ていましたが、減少傾向になり、17日からようやくレースを再開できることになりました。
ほかにも、帯広や清水町の牧場などで合わせて13頭の感染が確認されています。
北海道大学大学院獣医学研究院(獣医学専攻)迫田義博教授
「手洗いやアルコール消毒をせずに別のところで馬を触るっていうことになれば、大量のウイルスがくっついていることになるので、人が人為的にウイルスを運ぶということはある」
北海道苫小牧市にあるこちらの観光牧場では、およそ80頭の馬を飼育しています。
ウイルスが持ち込まれないよう、対策を強化しました。
ノーザンホースパーク乗馬運営課マネージャー 米谷みさとさん
「ゲストの皆様へ手指消毒をお願いしております。17年前に流行った際に感染の拡大がみられた。(当時は)パークのウマたちももれなくかかりましたので、厩舎の消毒ですとか馬具を共有しないですとかそういった消毒を徹底」
また、客に馬から1メートル以上離れてもらうなどの措置を取っています。
神戸から来た観光客
「全然知らなかった。牧場から牧場へ(馬インフルエンザは)うつるんですね。気を付けたいと思います」
馬産地の日高地方では見学を中止する牧場も出ていて、馬インフルエンザによる影響が続いています。
堀啓知キャスター)
馬インフルエンザ、馬関係者の方の中では有名な話だとは思うのですけれど、亜樹さん、そんなに知られていないでしょうかね。
小橋亜樹さん)自然の宝庫の北海道で、共存していく場面が多いからこそ…でも、変異していったりなど変わるっていうことを、情報が昔のまま止まっていたらわからないですよね。
堀啓知キャスター)
ウイルスですから、どんどん変異していく可能性はありますよね。
堀内大輝キャスター)
新型コロナウイルスのときと一緒だと、先生は言っていました。
堀啓知キャスター)
鳥インフル、馬インフル、それぞれどういう特徴があるのでしょう。
堀内大輝キャスター)
迫田教授に聞きました。参考としてまずヒトのインフルエンザは、ヒトからヒトへと感染しますが、犬や猫に感染することは、まずないということです。
これに対して、鳥インフルは、海外ではヒトへの感染事例があり、死者も出ています。
そして、犬や猫への感染も海外では確認されています。このため、衰弱した野鳥や死骸を見つけた時は、決して触らず、道などに連絡しましょう。
ペットも散歩の時などに鳥の死骸や衰弱した鳥に触らせないでください。
「馬インフル」ですが、馬から馬には感染しますが、ヒトへの感染事例は確認されていません。
犬や猫への感染は、海外で確認されています。
競走馬はワクチンを打っていることもあって感染したとしても、重症になることはほとんどなく、1週間ほどで治るということです。
4月上旬に熊本県の飼育農場で確認されたウイルスと帯広のウイルスが一致したことから、何らかの経路で熊本から道内に持ち込まれたとみられています。
堀啓知キャスター)
ばんえい競馬が一時中止になるなど経済への影響も出ています。
鈴木徹さん)
鳥インフルエンザは今のところ、人に感染はするけれども、人から人に感染するまではいかない。ただ、インフルエンザウイルスがどんどん変異を繰り返して、万が一人から人へ感染するようなインフルエンザに変異してしまうと、それが凄い感染拡大に繋がる恐れもあります。今はその心配はないとしてもそういったことが起きないように、可哀想でついつい触りたくなっても弱っている動物に触るのをぐっとこらえて、保健所や行政機関に連絡しなければならないですね。
堀啓知キャスター)
私たち、数年前に新型コロナのパンデミックを経験しているので…みんなでしっかりと衛生レベルを高めていくと、そこで止めることができるということで、動物と人との交流もルールを守れば広がって行かないと思われます。
そのため、基本的には弱っている動物には絶対に近寄らない、触らない。ペットも含めて、徹底していきましょう。