【メディア初取材】政府専用機の訓練に密着 特別航空輸送隊に配属された新人による緊迫の瞬間
2025年04月17日(木) 16時26分 更新
総理大臣など要人たちが乗る“政府専用機”。配属された6人の新人の訓練に密着、メディア初取材です。
新人
「ツカダさまの反応がありません。東さんは機長とSICに報告してください」
緊急事態の訓練です。 ホールを飛行機の機内に見立てて、CA業務をするのは航空自衛隊千歳基地・ロードマスターと呼ばれる空中輸送員の新人たちです。
特別航空輸送隊 竹村正哉 さん(43)
「6人は令和7年3月1日付をもって“特別航空輸送隊”勤務を命じられました」
“特別航空輸送隊”とは、政府専用機を管理する部隊です。
6人は日本各地の航空隊から選抜されてきました。
階級も出身も年齢もバラバラ。憧れを抱いて入隊を希望した精鋭たちです。
政府専用機は、1987年に導入された特別輸送機です。
最大航続距離 約1万4000キロメートル。
現在の機体は2代目で2019年4月から運用され、首相や要人の外国訪問や国際会議出席など、いつでも飛び立つことができるよう 千歳基地に2機が待機しています。
整備もパイロットも、すべて特別輸送隊が担当しています。
馬渕亮文 1等空曹
「緊急に入ったミッションに対して、最近ではトルコで大地震(2023年)が起きた。物品、テントなど運ぶ作業をした」
給油無しでフランスまで飛ぶことができる政府専用機は、国際緊急活動や国際平和協力など様々なミッションを担っています。
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「おすすめはありますか?本日は…」
訓練も笑顔を絶やさない水口碧さん(26)。
普段は普通の20代の女性ですが、訓練となると表情は一転。
政府専用機の訓練は、メディア初公開。
ロードマスターは荷物の管理、重量計算、そしてCA業務もこなします。
6人の新人たちにそれぞれ教官役が付き、教官は乗客役もします。
乗客役の教官
「ビールいただけますか?」
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「ビールですか?かしこまりました…」
突然の声掛けに戸惑う水口さん。ビールをぎこちなく提供します。
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「めっちゃ震えました…」
教官
「注文は必ず復唱する。大きな声で」
実際の空の上で行われるため、揺れなど地上の訓練とは違います。
自衛隊に入り、初めての接客に苦戦の様子。そこに…。
操縦室からのアナウンス
「シートベルトサインが点灯しました。カートを出しておくには厳しい揺れです」
特別航空輸送隊 東美羽さん(22)
「乗客の皆さま、ベルトをお締めください!」
料理のサービス中に、突然の大きな揺れが発生。
作業を中断して自分も座席につかないといけません。
特別航空輸送隊 東美羽さん(22)
「ものすごいスピードでやっているんですけど…いや難しいです本当に!」
操縦室からのアナウンス
「操縦室よりお知らせします。当機は与圧系統の不具合が発生したため、緊急降下を実施しました」
機体に異常が発生というシチュエーションに、現場の緊張感が一気に高まります。
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「ただいま、機体内外に異常がないか確認しております」
特別航空輸送隊 東美羽さん(22)
「機体内外に損傷を発見された人はお知らせください」
状況を確認する新人隊員たち。
ここで窓に10センチの亀裂があることを発見。
特別航空輸送隊 東美羽さん(22)
「風の音は聞こえないです」
教官
「この方の席移動を。ここに空いている席はないので、アフター(後方)エリアにて調整します」
安全のため乗客を移動させる東さん。後方エリア担当の水口さんに乗客を託します。
冷静に対処する新人たちですが、試練は続きます。
操縦室からのアナウンス
「当機は、先ほど発生した機体の異常により、これ以上の飛行の継続は困難と判断しました。最寄りの●●国際空港に着陸します」
緊急着陸のアナウンス。笑顔が自慢の水口さんの表情も険しくなります。
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「ただいまから、着陸衝撃から身を守るための衝撃防止姿勢について説明します。この姿勢は私たちが『頭を下げて!』と言った時から『シートベルトを外して!』と言うまでとり続けて!」
操縦室からのアナウンス
「こちら機長。着陸30秒前。衝撃姿勢をとれ」
新人
「頭を下げて!」
機体は緊急着陸へ。新人たちは乗客に向かい、叫び続けます。
操縦室からのアナウンス
「当機は滑走路に接地。大きな音響とともに衝撃を伴って滑走中。航空機止まらない」
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「頭を下げて!」
操縦室からのアナウンス
「滑走路を逸脱して、洋上にて機体完全停止」
特別航空輸送隊 水口碧さん
「機体停止…。大丈夫落ち着いて!着水!着水!シートベルトを外して!」
海の上に停止した航空機。救命胴衣を着させ、急いで脱出させないといけません。
東さんがいるエリアでは…。
乗客役の教官
「このドアダメ!このドア使えない。前を確認して!」
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「L4(ドア)OK!脱出!脱出!」
ここで訓練終了。水口さん、少し放心状態です。
特別航空輸送隊 水口碧さん(26)
「自分だけの命ではなくて、乗客の命も預かっているので、この職に就くと決めたときからしっかりと(気持ちを)切り替えていこうと」
新人たちの訓練は、きょうも続きます。