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道産子初の女性戦闘機パイロット タックネームは出身地函館にちなんだ『五稜』最大9Gに耐えるも「ジェットコースターは嫌い」28歳が描く夢と希望

2025年09月03日(水) 19時01分 更新

大人も子どもあこがれるのが戦闘機パイロットです。その中に道産子初の女性戦闘機パイロットがいました。



・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「こちらがF15戦闘機」

千歳基地第2航空団の小林夏帆(こばやしかほ)さん、28歳。

全国で数人しかいない女性戦闘機パイロットです。

しかも道産子では初!

・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「私のタックネームは五稜。函館市出身なので五稜郭がなじみのある場所で、”五稜”を希望したら希望通り『五稜』に」

任務中は名前ではなく愛称で呼ばれる戦闘機パイロット。

新人の小林さんは「五稜」に決まりました。

・航空自衛隊第2航空団 小林夏帆さん
「最大マッハ2.5まで。千歳~東京間を約17分で行ける計算」

全国で約200機配備されている、F15Jイーグル。



領空侵犯のおそれのある航空機が現れた場合、スクランブル発進し、航空機に接近して状況を確認し、退去の警告などを発します。

2024年度のスクランブルの回数は704回、中国やロシアの軍用機、さらには北朝鮮のミサイル発射の動きを注視しつつ、日々訓練しています。



航空自衛隊 第2航空団 奥村昌弘飛行群司令
「加速度ですね。Gは最大9Gまで。Gというのは重力加速度で、地上で生活しているのが1Gなのでその9倍かかる」



これはF15のコックピット内の映像。非常に狭い空間ですが、視界は広いです。

マッハで飛行し、急旋回、急上昇など厳しいトレーニングをこなします。

最大9G、50キロの人だと9Gは450キロの負荷が体にかかる計算です。

そんな戦闘機に乗る小林さんですが…

・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「実を言うと、ジェットコースターとか嫌いなんですけど、F15はあんまり怖くない」

1957年、第2航空団は千歳基地で業務を開始しました。

F15が配備されたのは1983年、改良を重ねながら今も千歳基地の主力戦闘機です。

航空自衛隊にはたくさんの女性隊員がいます。入隊したきっかけを聞いてみました。

・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「私は千歳基地航空祭を見て、F15のフライトを見て。これに乗ろうと憧れて入りました」

・北部航空施設隊 田中唯月さん
「公務員を目指していて、自衛官にお勧めされて」

航空自衛隊といっても様々な職種があります。



・特別航空輸送隊 古賀朱音さん
「私はもともと地元の金融機関で働いていて(そうなんですか?)それでその時に(2016年)熊本地震にあって車中泊を1か月くらいしていたんですけど、その時全国から自衛隊の物資の支援を受けて。私も全国の人々のためになれる仕事ができたらというのがきっかけ」

古賀さんは要人を運ぶ政府専用機のロードマスターとして活躍しています。

・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「(大変だったのは)この前千歳川に入った訓練が一番きつかった。恐怖というよりは死ぬかもしれないと」

毎年冬に行われる「水上保命訓練」。40年以上行われていてすべてのパイロットが参加します。

真冬に救命ボートで救助を待つという想定で、この日の気温は2度です。

この訓練に小林さんは初めて参加します。

「訓練開始!」

男性も女性も容赦なく冷たい水を浴びせられます。

航空自衛隊のOBたち
「頑張れ!」

航空自衛隊のOBたちが応援する中、ここで教官が指摘します。

防水の頭巾をかぶるのを小林さん、忘れていたのです。



ヘルメットはボートに入って来た水をかき出す道具となるため、代わりに頭巾をかぶる手順でした。

開始から20分訓練終了、小林さん耳が真っ赤です。



・航空自衛隊第2航空団 奥村昌弘飛行群司令
「今女性の操縦者がどんどん増えてきている。女性が入ることによって多様性が高まることを考えておりますので、組織の活性化につながってくれればいい」



・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「生まれ育った故郷をあらためて空から見るとすごい美しくて。その美しい自然とそこにいる人たちを自分たちが守っていかなきゃいけないなと」

道産子初の女性戦闘機パイロット。最後に夢を聞きました。

・航空自衛隊 第2航空団 小林夏帆さん
「部隊で様々な経験を積んで、ブルーインパルスの一員となって皆さんに国民の皆さんに夢と希望を与えられるようなパイロットになりたい」


堀啓知キャスター
ジェットコースターが嫌いな小林さんが、戦闘機のパイロットになるんですね。

森田絹子キャスター
そこが不思議ですね。

堀キャスター
でも、その陰には相当な努力があったのかなと思います。

鈴木徹さん
素直に応援したいと思います。元々自衛隊は人手不足でなり手が少ないですよね。そういう中で小林さんの後に続く方が増えてくれれば良いなと防衛相は思っていると思います。ただ、自衛隊は究極の男社会と言われてきたところもあり、過去には色んな不祥事もありましたから、それが改善して変化してきているということであればいいなと思います。

森田キャスター
今回座談会をしたんですけれど、私はイメージで厳しいだろうと思って「辛いですよね、大変ですよね」とつい聞いてしまったのですが、皆さん「いやいや、そんなことは意外とないんですよ」とおっしゃるんですね。

「職場の雰囲気も和やかで優しい方も多いし、休みの日は推し活なんかをして楽しく仕事ができています」というようにおっしゃっていました。

堀キャスター
航空自衛隊も今、女性が活躍していますけれど、きっかけは「災害」というところがあります。

救助や災害現場では男性も女性も両方必要なケースが多いので、組織として女性が不可欠になっていると。

野宮範子さん
自衛隊の中でも戦闘機パイロットは、女性になかなか門戸が開かれなくて。体力的なことなどが理由だったみたいですが、実は女性の方がG(重力加速度)に耐えられるという研究も最近あるらしく…。自衛隊に限らず色んな組織で「女性だから無理」「男性だからできない」のような思い込みで、能力を使い切れていないということがあるように思います。五稜さんの活躍を見ていたら、みんな活躍できると思いますね。

堀キャスター
昨年度の数字ですが、女性の自衛官の割合が全体の9.1%で、年々増えていると。多様な人材が集まりやすくするためにもより働きやすい環境や組織に代わっていくことが必要だと思います。

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