5軒に1軒が“空き家”の函館市 歴史的建造物も4分の1が空き家という現実…負の遺産をプラスに 仕掛ける奇跡の再生術
2025年07月11日(金) 17時22分 更新
今、北海道函館市の歴史的建造物に危機が迫っています。
2024年、もんすけ調査隊では釧路市の廃墟ビルを調査。
今度は、函館市にも多くの廃墟が存在しているといいます。
一体、どんな現場なのでしょうか?
調査員 中尾大輔
「あちらの古びた建物は、壊れてしまっています」
函館駅前には、6年前に閉店した大型商業施設のビルがあります。
繁華街として知られた松風町は、かつてのにぎわいが消え、古びた家屋が取り残されていました。
函館市都市整備課 久保田聡嗣課長
「函館市は19.3%が空き家となっており、全国平均の13.8%、全道平均の15.6%を上回る」
函館市の空き家率は、過去20年で増加傾向で、今や全国・全道の平均を上回り、5軒に1軒が空き家という状況です。
そんな函館に今、新しい風が吹き始めました。
函館空き家再生賃貸 北山拓代表
「函館空き家再生賃貸株式会社。何やっているかわかりやすい会社だと思うんですけど」
空き家を買い取り、リノベーションして貸し出す。
函館市の第3セクターと民間企業が手を組んだ、日本初の空き家対策です。
タッグを組むこの民間企業は数多くの実績を持ちます。
さらに、函館には、長い歴史があるがゆえの悩ましい問題がありました。
函館市景観政策担当 種崎俊課長
「歴史的建造物の所有者は、さまざまな事情を抱えている。後継者がいないとか、体調が悪く、住むことができないとか」
洋風建築が建ち並ぶ西部地区です。
ここは北海道で唯一、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
そのため、建物の保存や外観維持が厳しく求められていますが、今、危機に瀕しているのです。
西部地区にある約130軒の歴史的建造物のうち、4 分の1が空き家です。
人口減少と共に、維持管理する担い手が減り続けているのです。
そこで…。
函館市景観政策担当 種崎俊課長
「第三セクターの『まちづくり会社』が歴史的建造物を活用したことで、周囲の民間事業者にも効果を与えており、最近では歴史的建造物をリノベーションして活用されている」
1909(明治42)年に建てられた北海道指定有形文化財「旧北海道庁函館支庁庁舎」。
今は、函館のソウルフード「ステーキピラフ」で知られる洋食店「ジョリージェリーフィッシュ」が営業しています。
建物の所有権は函館市が持っていて、店は建物を借りる形です。
客
「レトロでいい」
「このまま残して欲しい」
ジョリージェリーフィッシュ 中郷羽衣統括店長
「古いものではあるけれど、しっかり残されていて、外と中に入ってからの雰囲気が違うことで、客は喜んでいる」
140年前に建てられた廻船問屋「遠藤吉平商店」は、一日一組限定の贅沢な宿泊施設「ポートサイドインハコダテ」として生まれ変わりました。
ホテルを運営するStaple 早野拓真さん
「外観も素敵な建物だし、やはり新築では出せない色味や重厚感があるので、そういうのに惹かれてホテルに活用」
ピーク時は、一泊7万円という高級な宿ですが、予約が絶えません。
こちらは、ホテルを運営するStaple(ステイプル)が所有権を持っています。
さらにまたひとつ、新たな命が吹き込まれようとしています。
国の重要文化財「旧相馬家住宅」です。
1908(明治41)年の建築です。
バリューマネジメント 他力野淳代表
「今回の旧相馬家住宅も母家や重要文化財はすべて保存します」
LEVECHY 高将司代表
「重要文化財としての価値を守りながら宿泊施設として改修し、ホテルとして利活用・保存するプロジェクト」
海運業を始め金融業や不動産業を手掛けた函館の豪商、相馬哲平の邸宅。
和洋折衷の建築様式が特徴で、和風の縁側と洋風の客間が見事に調和した豪華な造りです。
2009年には、解体の危機に瀕しましたが、当時のオーナーが1億円で購入。その後も1億数千万円をかけて補修・維持してきました。
そして2018年、国の重要文化財に指定されたのですが…。
バリューマネジメント 他力野淳代表
「ご自身が高齢になられ、次の世代へ渡すタイミングが来ていると」
前のオーナーは、自身の高齢化により、今後の維持が困難と判断しました。
そこで民間業者に売却され、年内には1泊15万円から25万円ほどの宿泊施設に生まれ変わる予定です。
建物はLEVECHY(レベチー)が所有し、バリューマネジメントが運営します。
バリューマネジメント 他力野淳代表
「函館は宝の山だと思っていて、一つ一つの建物が街の中での役割を持って価値を生むことで、街が活性化されていく」
自治体を悩ませる”空き家問題”。
様々な取り組みが今、試されています。