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高齢者を見守る配食サービス 対面で弁当手渡しの安心…物価高と見守り厳格化で業者の負担重く 専門家「自治体は事業者が衰退しないような対応すべき」

2025年06月27日(金) 23時51分 更新

高齢者の自宅に弁当を届ける「配食サービス」。安否確認を兼ねた生活と健康を支える現場を取材しました。

■99歳の現場に優しいサプライズ



丁寧に盛り付けられていくあえ物や魚。品数豊富で、見るからに栄養満点です。

弁当の上には、「刻み」や「大盛り」の文字。

さらに、紙には「不在時連絡すること」と書かれています。

大量の弁当が向かう先は…

「お弁当です」

高齢者の住宅です。

高齢者用の弁当配達を行う『ライフデリ手稲店』のオーナー、清野秀明さん49歳です。

札幌市手稲区と南区の高齢者に弁当を届けるとともに、手渡しすることで安否確認も行います。

この店では、昼食と夕食の1日2回。下は52歳から上は101歳まで、のべ160人ほどに弁当を届けます。



・清野秀明さん
「ただ弁当届けるだけじゃなくて、お客さんと一言二言しゃべるだけで、何となくきょう調子良さそうだなとか毎日見てればわかる人もいるので、気を付けながらコミュニケーション取る」



札幌のこちらの男性も弁当を楽しみに待つ1人。

最近、自宅で転倒することも多くなり、日常生活に不安を感じています。

・配食サービスを利用する男性(99)
「(負担を)減らすためにお願いしたのさ。自分でやってたんだよね、だけどとってもかなわないから」

午後4時すぎ、弁当が到着します。弁当が到着します。

・清野さん
「お誕生日おめでとうございます」
「よかった、きょうも元気で」

配食サービスを使い始めて1年ほど、夕食の時間は毎日決まっています。

午後6時のこの鐘が夕食の合図。取り出した弁当にはこの日が誕生日の男性に小さなサプライズがありました。



「男性99歳お誕生日おめでとう」

・男性(99)
「あぁ、どうもありがとう」

同居する娘が炊いたごはんを茶碗に盛りつけて…

・男性(99)
「いただきます。(お味はいかがです?)いいよ~」
「運んでもらうんだからありがたい話だよ」

栄養のバランスがとれた弁当は1食およそ600円。

高齢者の生活と健康を支える「配食サービス」は高齢化の時代に必要不可欠となっています。

■高齢化社会に必需の見守り 対面で弁当手渡しの安心

この配食サービス、札幌市が業者に委託する事業もあります。

しかし去年6月、札幌の中央区の業者では、安否確認を怠り、利用者が死亡状態で発見されたことがありました。

配達員が80代の女性の家を訪れたのですが、応答がありませんでした。

本来は緊急連絡先に連絡することになっていたのですが、配達員は連絡せず弁当をドアノブにかけて去りました。

翌日、別の配達員も弁当をドアノブにかけたまま去り、その日の夜に女性の家族が倒れているのを見つけて、病院に運ばれましたが死亡が確認されました。

この問題が起きて以来、安否確認などを徹底されていますが、いま別の問題で業者の負担が増えてきています。

■物価高と見守り厳格化で変わる配食サービスの現場



・『ライフデリ手稲店』のオーナー、清野秀明さん
「今はお米だとかガソリン、人件費などの方が上がっているので、お客様が増えてもそういうところはちょっと大変だなと思うところ」

ライフデリ手稲店は、札幌市からの事業委託も受けていて、市からの委託料は1食424円。

事業者は、利用者が支払う500円と合わせて924円で食材の調達から調理、配達、そして安否確認まで行います。

これは過去5年間、札幌市の高齢者配食サービスを利用した人の月平均の推移です。



高齢化の進行とともに、利用者は年々増え、去年はひと月で2400人が利用しています。

一方、配食の委託事業者は年々減少しています。

しかし、市から払われる『ライフデリ手稲店』への委託料は物価高騰が続く中、去年から6円しか上がっていません。

・『ライフデリ手稲店』のオーナー、清野秀明さん
「私の店はまだそんなに規模が大きいわけじゃないので、それでも1週間で50~60キロの米を使ってる。月にすると200~300キロぐらい使ってますけど(値段が)倍になっちゃってますので…」

年金で暮らす高齢者のことを考えると、急に値段を上げられないのが現実です。

・『ライフデリ手稲店』のオーナー、清野秀明さん
「この事業を疲弊するからやめたとかっていう風にはならないですよね、これだけ需要があると」

多くの利用者に少ないスタッフで配達するため、会話の時間を減らすなど効率化が余儀なくされています。



物価高と人手不足。

さらに利用者の増加が見込まれる状況で、事業者の負担がさらに増えるのは確実です。

■専門家「委託事業者が衰退しないような対応をすべき」



社会福祉が専門の淑徳大学・結城康博教授は、「自治体は物価高騰に合わせて補助金を引き上げ、委託事業者が衰退しないような対応をすべき。

他の施策との優先度を考えて対応してほしい」と話しています。

委託事業者が減少しているのが事実です。しわ寄せにならない構造を考え直さなければなりません。

北海道ニュース24