コメ高騰に耐え切れず札幌の「卸売業者」が破産 小売店側からのプレッシャー「安いところを探しますで、取引終了」代理人弁護士が指摘する“立場の弱さ”
2025年05月27日(火) 16時37分 更新
高止まりを続けるコメ価格。高騰に耐え切れず1つの会社がなくなりました。
私たち消費者だけでなく、流通業者にも影響が広がっています。
異変は、札幌で起きていました。
◆4月、札幌市内のコメ卸売会社が破産
・髙橋智也記者
「こちらのコメの卸売り会社は、高騰する仕入れ価格を販売価格に転嫁できず、破産しました」
今年4月、このコメの卸売会社が破産していたことが、HBCの取材でわかりました。
2018年設立のこの会社は、飲食店や病院のほか、カタログギフト用の米を卸し、2023年には約1億1500万円を売り上げていました。
しかし、価格高騰で仕入れ価格も上昇、経営が傾き始めます。
なぜ、窮地に陥ったのか、会社の破産手続きの申し立て代理人である弁護士が取材に応じ、中小業者の「立場の弱さ」を指摘しました。
・卸売会社の破産申立代理人 大沼邦匡弁護士
「やっぱりかなり小さいところだと『あなたのところはいい(断る)です』と、『もっと安いところを探します』と言われちゃうと、もうそこで取引終了になってしまいますから」
◆カタログギフト向けの商品も裏目に
コメは農家からJAなどの集荷業者、そして卸売業者をへて小売店に並び、私たちに届きます。
今回の会社は、小売店からのプレッシャーを受け仕入れた価格に自分たちの利益を上乗せして販売することができませんでした。
また、この会社がカタログギフト向けの商品を多く扱っていたことも裏目に出ました。
・卸売会社の破産申立代理人 大沼邦匡弁護士
「カタログを印刷して値段を決めてしまっていますので、急に(コメの)価格を上がるとそもそも価格変更ができない。(仕入れが高騰した分)売れば売るほど赤字になってしまうっていうところが、一番大きな破産の原因になった所だと思います」
価格高騰のなか赤字だけが増え、約6500万円の負債を抱えて破産したのです。
大沼弁護士によりますと、会社の代表は「取引先にご迷惑をおかけしてしまった」と事業を継続できなかったことを悔やんでいるそうです。
この弁護士は、過去にもコメの卸売業者の破産手続きを手がけたこともあり、随意契約による備蓄米の放出について、「大手小売りやネットスーパーで安いコメが手に入れば、消費者に恩恵はある一方で、中小の卸売業者はさらに経営が厳しくなるのでは」とみています。
◆米の販売や販売を手掛ける企業の休廃業、全国で88件
帝国データバンクによりますと、2024年度、米の卸売や販売を手がける企業の休廃業などは全国で88件と、コロナ禍以降の過去5年間で最も多くなりました。
・帝国データバンク札幌支店 松田尚也副係長
「赤字減益を合わせた業績悪化の割合っていうのは(全国で)47.6%に上っているので、やっぱり約半数弱の企業、お米屋さんが業績悪化を余儀なくされている。仕入れコストを抑えないと、その販売する側としては大変な状況になってくるかなと思います」
先行きの見通せないコメの価格。
高騰が続けば、流通システム自体にさらなる影響が出かねない状況です。