無条件降伏後に集団自決…樺太・真岡郵便局 九人の乙女の悲劇を高校生が舞台で再現 語り継ぐ戦後80年 #戦争の記憶
2025年08月18日(月) 20時07分 更新
日本領だった樺太、いまのロシア・サハリン州で郵便局の女性電話交換手が集団自決した事件。「玉音放送」後に起きた悲劇を高校生たちが演じました。
(舞台)高石班長
「ソ連の軍艦が急に進路を変えて、こちらに…真岡港に向かっています」
17日、札幌市の劇場で上演された舞台「九人の乙女~氷雪の門」。
太平洋戦争で日本が無条件降伏したあとの1945年8月20日、ソビエト軍が迫る樺太・真岡の郵便局で10代後半から20代の女性電話交換手9人が自ら命を絶った本当にあった出来事です。
電話交換手のうち3人は実際に亡くなった女性と同じ年頃の高校生が演じます。
電話交換手 志賀晴代役 福間天乃さん(16)
「死んだタイミングがわからないからどうやって泣くんだろうって」
電話交換手 松橋みどり役 三浦椿さん(16)
「ずっと最初から泣くとか」
電話交換手 志賀晴代役 福間天乃さん(16)
「泣いていていいのかなあ」
舞台デビューに向けて稽古を重ねてきました。
電話交換手伊藤千枝役 川西紗也夏さん(18)
「こんなに悲しくて残酷な事件があったと知って、風化させてはいけないと思い(舞台に)参加した」
脚本と演出を手がけたのは札幌市で劇団を主宰する中間真永さん。
中間さんの母・金川一枝さん(2013年に死去)も真岡郵便局の電話交換手でしたが、その日は非番だったため生き延びました。
脚本・演出 中間真永さん
「(母から)『自分がそのときに出番だったら、私も一緒に青酸カリを飲んで自決していたと思う』と聞いた。一つ一つの命のドラマを考えると、どうすれば平和が訪れるのか、何か動かすことができるのかといつも考えていた」
上演の日がやって来ました。舞台「九人の乙女~氷雪の門」の幕があがりました。
「はい、真岡です、町役場ですね、少々お待ちください」
戦時中の通信を担う電話交換手は当時の女性にとって花形の職業でした。
局長
「いまの樺太の状況は非常に危険です」
高石班長
「途中で投げ出すなんて、そんな身勝手なことはできません!」
電話交換手 渡辺照
「最後まで交換台を離れるなって、そう教えられてきました!」
職責を果たすと決めた彼女たちにソビエト軍が迫ります。
高石班長
「(青酸カリを手渡し)ソ連兵が攻めてきたとき、皆さんの命の尊厳と純潔を守るためのお守りとして預かっていたものです」
電話交換手 松橋みどり
「もうできることはありません。皆さん今までお世話になりました、御達者で」
電話交換手 可香谷シゲ
「これが最後です、さようなら、さようなら」
観客
「すばらしかった」
観客
「涙が止まらなくて。当時の状況を見たことはないが、思い描けるというか」
電話交換手志賀晴代役 福間天乃さん(16)
「(自決のシーンで)回線が切れて『だめだ』ってなって、みんなとも別れるのかなと思って…」
電話交換手松橋みどり役 三浦椿さん(16)
「舞台に立って『死にたくなかった』って共感できるようになった。どこかで生きていたらよかったなって」
この夏、「命」と「戦争」に向き合った高校生たち。
脚本・演出 中間真永さん
「それぞれの世代がこの象徴的な演劇を見て何か心に残ることがあって、それが未来や平和につながれば幸せなこと」
堀啓知キャスター:
脚本と演出を手がけた中間さんは高校生たちに戦争の「知識」を教えるのではなく、演じてもらうことで「戦争と平和」について感じてもらえれば、と話していました。
コメンテーター 鈴井貴之さん:
戦後80年、実際に戦争を知っている人は少ないわけで、どんどん風化して行っているのが現状かなと。演じることによって、いろいろ知ることもあるが、そういう演劇を観ることによって、学んだり知ることは大切。終戦記念日が近くなると、こういう特集が組まれ、考えるが、それでもいいと思います。きっかけがあることが大切。
コメンテーター 鶴岡慎也さん:
具体的な出来事を知ることで、戦争の愚かさや、平和の大切さを知ることができる。高校生が自分から演じようと思って、それを伝えてくれるのは、頭が下がる思いです。
堀啓知キャスター:
サハリンを望む稚内市では、集団自決があったあさって8月20日に、今年も平和祈念祭が開かれます。