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札幌市豊平区の水車町は「まち」か「ちょう」か 地元住民「ある日突然、ちょうに」札幌市には決めた経緯の記録なし…専門家「ほかの町名に引きずられた」と推察、真相は?

2025年05月16日(金) 22時00分 更新

ニュースでは報じられなかった真相に迫ります。

■依頼人(たぬきさん・40代・札幌市在住)



札幌の水車町(まち)は、なぜ水車町(ちょう)になったのか?調べてください

■水車町は「まち」か「ちょう」か

札幌市の中心部からほど近い場所にある豊平区の水車町(ちょう)。

この静かな地域に、今、小さな波紋が広がっている。

長年「水車まち」として住民に愛されてきた呼び名が、札幌市によって「水車ちょう」と決められたというのだ。

今年2月、地元住民は「水車まち」への変更を求め、札幌市に要望書を提出。

住民の動きは、全国ニュースでも注目を集めたが、そもそも、なぜ札幌市が「水車ちょう」に決めたのか、どのニュースでも詳しく報じられることはなかった。

そこで、もんすけ調査隊に調べて欲しいというのだ。



・調査員「ありました!ありました!信号機には水車町(ちょう)と書かれています」

しかし、調査は簡単ではなかった。



・調査員「見てください!こちらのマンションには水車町(まち)と書かれています」

郵便局は「水車まち」を名乗りながらも、地域名は「水車ちょう」となっているなど、1つの地に2つの名称が存在し、確かに混乱が生じているのだ。

なぜ、この様な事態になったのか?

■50年住む町内会長は「昔は水車まち、がある日突然…」

・旭水町内会 高橋恒夫会長「ここに住んで50年ちょっとになるけど、昔から水車町(まち)と。それがある日突然、1979(昭和54)年の区画整理の時に、ルビを振ったのが水車町(ちょう)と」

1950(昭和25)年に誕生したこの地名は、明治時代から水車が多かったことに由来する。



当時、漢字にルビはなく、住民は「水車のある町」ということで「水車まち」と呼んだ。

しかし、それから29年後、札幌市が区画整理を行った際に、住民への相談もなく「すいしゃちょう」とルビが振られ、地名が決定されたというのだ。



・旭水町内会 高橋恒夫会長「信号機の看板にも、我々からココは”水車まち”ですよね?という話をして、その後、急遽札幌市も慌ててテープで貼ったという。なぜ”水車ちょう”になったのか、私たちも全くわからない」

2017(平成29)年、信号機の名称が「水車まち」となっていることを住民が指摘したところ、札幌市はすぐに「水車ちょう」に修正したという。

■札幌市が「ちょう」とした理由は?

では、なぜ札幌市は、住民の呼び方とは異なる「水車ちょう」に決めたのか?



・調査員「なぜ水車町(ちょう)に決めた?」

・札幌市住民情報課 下澗聡課長「それは何も記録が残っていない。どうして水車町(ちょう)にしたのか?とか、なぜ水車町(まち)じゃないんだ?というのは札幌市としても記録が残っていない。当時どういう呼び方をしていたのかもわからない」

地名決定から46年。

札幌市にも詳しい資料はなく、読み方を決めた経緯は不明だという。

ここで調査は暗礁に乗り上げたかに思われた。

しかし、地元の郷土史研究家が、一つの可能性を示唆してくれた。

■郷土史研究家の推察…ある書籍に合わせて「ちょう」にしたのでは

・郷土史研究家 有馬尚経さん「調べたところ、札幌市教育委員会が書いた札幌地名考には、まだルビを振る前から『すいしゃちょう』と書いてあるので、これを参考にして水車町(ちょう)にしたのではないかと」

地名が決定される2年前の1977年、札幌市の教育委員会は、地名を紹介する書籍「札幌地名考(さっぽろちめいこう)」を出版。

この書籍を見ると、なんと「水車ちょう」と記されているではないか。

有馬さんは、この書籍に合わせて「水車ちょう」と、名前を決めたのではないかと推測する。

・郷土史研究家 有馬尚経さん「もう既に書いたものがあるので、じゃあ水車町(ちょう)ですね、という判断なのかなと」

では、その書籍は、なぜ「すいしゃちょう」と記したのか?

・札幌建築鑑賞会 杉浦正人代表「札幌市として新しく呼び方を付ける時は、『ちょう』と読ませることが比較的一般的だった」

これまで「東区に北29条がない理由」や「北18条には西1丁目がない!」などを解説。

札幌の地理と歴史に詳しい、杉浦代表は、こう推察する。

■札幌の地理と歴史に詳しい専門家「ほかの町名に引きずられた可能性」



・札幌建築鑑賞会 杉浦正人代表「明確に裏付ける物を持っているわけではないが、札幌市の中の町名で、多いのは『ちょう』と読ませる地名・町名が多い。そういう面で、水車町(ちょう)と決められた時に、ほかの町名に引きずられた可能性がある」

実際に、札幌市の地名では、「ちょう」と読む例が多い。

例えば栄町や旭町など、「まち」と読む地名が14か所なのに対し、麻生町や屯田町など、「ちょう」と読む地名は24か所にも及ぶ。

北海道の自治体の「町」を見ても、128が「ちょう」と読み、森町だけが「まち」と読む。

・札幌建築鑑賞会 杉浦正人代表「これは私の想像なんですけど、北海道は明治になる前から幕府が主導で町作りや政治が進められていた色合いが強い。その時に、幕府からのお達しで『町(ちょう)』と付けるという素地があったのでは」

では、この混乱を札幌市はどうするつもりなのか?

・調査員「今後の展開は?」

・札幌市住民情報課 下澗聡課長「具体的には現地で、マンション名がどういった表記になっているか?など調査を行い、有識者や学識経験者からの意見をもらい、秋くらいの議会への提出を予定したいと考えている」

■調査結果



北海道では町の名前を付ける時「ちょう」と付ける傾向が強かったようです。

■北海道や西日本は「ちょう」、東日本は「まち」の傾向

大きく分類すると、主に、北海道や西日本で「ちょう」が多くて、東日本では「まち」と読む傾向があるようです。

諸説ありますが、明治時代に新しく市町村の制度を作る時に、江戸時代に多く使われていた「まち」と区別するために、「ちょう」が多く使われたという説があります。

客観的に見ると「まち」でも「ちょう」でも些細なことなんですが、住む人たちにとっては、大切な思いが詰まっているので行政としては大事にして欲しいものです。

北海道ニュース24