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「協力井戸」を知っていますか?災害時に生活用水を確保へ 能登半島地震で有効活用、札幌市内473か所も認知度低く周知に課題

2025年08月14日(木) 20時42分 更新

大規模災害が起きたとき、避難生活を生き抜くために欠かせないのが「水」です。断水で水道が使えないときに重要な役割を担う「協力井戸」をご存知でしょうか。札幌市民に聞きました。



これ何か知っていますか?

大学生
「まじ知らないです。ジブリでありますよね。トトロ!」

高校生
「水出すやつ。となりのトトロにあるやつ!」

正解は「井戸」。

水道とは違い、地下深くを流れる水脈に管を通して地下水を汲み上げる構造です。

水道が当たり前の時代、手押しポンプの井戸はあまり見かけなくなりましたが、災害で断水したときに、水道に代わる水源として注目されています。

大阪公立大学 遠藤崇浩教授
「井戸の利点は早い、安い、広いだと思っています」

涼しげな水が、命を救う水に。奥深い「井戸」の世界をもうひとホリします。

札幌市白石区の豆腐店です。社長の伊丹一貴さんが、豆腐づくりで、原料の大豆とともに、こだわっているのが…



伊丹食品 伊丹一貴社長
「地下水が軟らかい水なので、豆腐としてもおいしく仕上がる」

「水」です。支笏湖を水源とする、深さ100メートルの水脈に井戸を引き、ポンプで汲み上げた地下水を使っています。

伊丹食品 伊丹一貴社長
「ここから水が出るということで井戸を掘って豆腐屋を始めた。(客が)お米炊いたりコーヒー飲んだりするのに水を汲んで行く方はいますね」

豆腐作りに欠かせない井戸には、もうひとつ大切な役割が…札幌市の災害応急用「協力井戸」です。



「協力井戸」は、大地震などの災害で水道が断水したときに、民間が使っている井戸を住民に開放してもらうボランティア制度です。

2024年の能登半島地震の被災地では、水道の復旧に時間がかかり、トイレや風呂、洗濯に使う「生活用水」の不足が問題になりました。

一方で、住宅や企業で使われていた井戸は損傷が少なく、水が出たため、多くの持ち主が井戸を開放し、避難する住民らの生活用水の確保に役立ちました。

いざというときこそ、地元の人に水の恵みを。

伊丹社長は、20年前から「協力井戸」に登録しています。

伊丹食品 伊丹一貴社長
「普段から汲めるものなので、災害があったときとか困っている人が、こちらで給水してもらえたらいいかなと」

札幌市内にある井戸は、約700か所。そのうち「協力井戸」は、約7割の473か所が登録されていますが、その存在は、市民にほとんど知られていません。

札幌市民70代
「(このプレート見たことあります?)まったくないです」

札幌市民30代
「これは見たことがないですね。制度としてあるんだな、というぐらいの認識しかないので」



札幌市民10代
「知らない人多いんじゃないですか?初めて聞きました」



災害時の水環境を研究する、大阪公立大学の遠藤崇浩(たかひろ)教授が、過去に大規模な地震を経験した、札幌市、仙台市、熊本市の市民、それぞれ500人に聞き取り調査した結果「協力井戸を知っている」と答えた市民の割合は、札幌でわずか7%に留まりました。

大阪公立大学 遠藤崇浩教授
「札幌市の場合、飲み水のほとんどが川の水を利用している。地下水に身近に触れる機会があるかどうか。これが要因になったのではないか」

大規模地震が切迫している北海道こそ、命を守る大切な水源として「井戸」を再認識する必要性を指摘します。



大阪公立大学 遠藤崇浩教授
「生活用水が手に入らないと生活の質が非常に落ちますし、そこから健康被害とか二次被害が発生する可能性が高い。すぐ隣に出る井戸水があればそこで水を補充できる。こういった点も井戸の利点のひとつ」

■能登半島地震の被災地でも活用された井戸

堀啓知キャスター)
「協力井戸」この言葉を知っている人がどれだけいるか…あと、いざという時にどこにあるのか…知っている人は多くないですよね。

堀内大輝キャスター)
7%ということでしたからね。水道が当たり前の時代で、井戸や地下水にはなじみが薄いですが、再び注目されるようになったきっかけが能登半島地震です。

2024年の能登半島地震では、断水が長引きました。トイレを流す水がなくなり、トイレに行くことをためらって体調を崩す住民も出て、災害関連死のリスクが指摘されました。

そこで活躍したのが「井戸」だったんです。



石川県内には、井戸を持っている民家や企業が多く、多くの持ち主が善意、ボランティアで、誰でも自由に水を汲めるように開放して、被災地の衛生の向上に役立ちました。

アンヌ遙香さん)
私は、協力井戸はたまたま知っていました。近所を散歩する時に、協力井戸のプレートを出されているご家庭を見つけまして。いざという時はこちらのお宅にお世話になるのかなと思っていました。

ただ、いざという時にもちろんボランティアとして開放してくださるんでしょうけれど、そういう時だけ「使わせてください」というのは、なんか気まずい部分もあったりして。ご近所づきあいはそういう時に生かされてくるんだなと思いました。

堀啓知キャスター)
過去の災害でも、ご近所づきあいや地域の結びつきが強いところの方が、生存率が高いとデータで出ているんですよね。地域の避難訓練とかで使うなど、普段から使うことも大事ですね。

堀内大輝キャスター)
井戸は使わないとサビてしまったりするので、なるべく普段から使う環境にしている地域もあるようです。



札幌市の「協力井戸」の制度は、阪神・淡路大震災の2年後、1997年度に始まり、当初は1000を超える井戸が登録されていたのですが、認知度の低さもあって、現在473か所まで減りました。

豆腐店や銭湯、病院、工場が多いのですが、井戸の場所は市のホームページでリストが公開されています。

秋元市長も市民への認知度の向上や登録する井戸の数を増やしたい意向を示しています。

堀啓知キャスター)
銭湯、工場、豆腐店、病院など、身近なところにあるんですね。

YASUさん)
僕は「協力井戸」のことを知りませんでしたけど、近くにある可能性があるわけですよね。知っておかないといけないですよね。

堀内大輝キャスター)
ブラックアウトなどで電源がなくなったときなどのために、あえて電気ではなく、手押しのポンプの井戸も造っている町もあるようです。

そして、あくまでも「ボランティア」のため、貸してくれる場所の方が被災した際には使えないこともあります。必ず使えるわけではないということも頭に入れておきたいですね。

堀啓知キャスター)
災害時の井戸の活用は、札幌市以外にも取り組んでいる市町村があります。家族や親族が集まるお盆の今こそ、避難経路とともに、協力井戸の場所など防災を話し合う機会にして下さい。

北海道ニュース24