
「社会党のプリンス」「勝手連」「革新道政」。横路孝弘さんのプロフィールから浮かぶこれらのキーワードを懐かしむ方も多いでしょう。横路さんは今、衆議院の議場の一番高い所から国政の今と未来をどのように俯瞰されているのか。お話をうかがいました。
まず、長い議員経験から横路さんが感じ取っていることは、この国の質的な変化です。もっとも大事にしたいものは「時代も国も超えた平和」。しかし、平和に思えていた間、この20年に何が起きていたか。拝金主義と行きすぎた市場主義が雇用を劣化させ、世の中はすっかり不平等になってしまったと憂います。
こうした状況を打開するためには社会保障など基本的なところを直していく。強い人や持てる人が多くを負担する社会にする。政治家はこの問題を避けずに国民を説得しなければならない。しかし、今の政治家は難問に向き合おうとしない。横路さんは今こそ「ポピュリズム」に傾倒しない率直な議論が国会に求められていると指摘します。
民主党を作ったときの一番大きな目標は、議員立法を作ることでした。日本をどのような社会にしていくのか。公的なセクターばかりでは大きな政府になってしまう。そこに民間セクターの役割とともに市民によるセクターも加わったほうがよいとして、横路さんは議員とNGOやNPOなどをつなぐことに汗を流してきました。
ところが、先の総選挙で一年生議員を中心に若い世代の議員がたくさん入ってくると、過去の議論の経緯や国の政策の経緯経過を知らずに発言行動する動きが目立つようになったといいます。横路さんは「若い人たちがあまり勉強していないような気がする」と苦言を呈した上で、さらに厳しく次のように指弾します。
「政治家を志すには何か目的が合ったと思う。ただ政治家になりたいだけでなっているんじゃ困ります」。
政治家になるには何をやりたいかという目標をもって国会に出るはず。一年間どこかの委員会に所属してまじめにやれば、外交でも安全保障でも社会保障や年金でも自分の専門分野を持つことができる。しかし、それがない、あるいは、十分でない人がいる。
「議員の中に“政策人間”と“政局人間”がいるといわれます。政策は横において、派閥活動なんかに熱心になる。当選してすぐ政権をとったからといって、政策の勉強を怠って政局人間になるっていうのは絶対に避けて欲しいと思います」。
インタビューの後日、民主党から離党者が相次ぎました。離党した一年生議員は横路さんから見てはたして政策人間だったのでしょうか、それとも政局人間だったのでしょうか。
東日本大震災から得た教訓について、横路さんは『幸せがどこにあったか思い知る』という投句をあげ、何が幸福なのかをじっくり考えさせられたと述懐します。そして、経済に過度に依存しない自然と共生する社会へ向けて、生活の仕方やものの考え方、日本の行く末と学ぶべきことがたくさんあると語っています。さらには、原子力発電所が無ければ世の中が動かないようにと思い込まされていたことへの率直な思いも吐露しています。
また、TPP交渉の難しさやアメリカの要求への警戒感など、政治家・横路孝弘の舌鋒は鈍ることを知りません。
立法府の長として、また、政界を代表する論客の一人として、もっとも強く懸念しているのは、現在の国会のありようです。合意形成の場である議会に野次が飛び交い、激しい言葉で悪口を言い合う。「誹謗中傷するのが議会だと心得ている」議員に対して、自覚を持って政策的な論争をしてほしいと厳しく注文をつけます。
三権の長である衆議院議長の役目の一つに、国を代表して外国の来賓たちを迎える行事があります。今年はとくに、東日本大震災の被災地に向けられた各国からの支援への謝辞をはじめ、大震災から立ち直ろうとしている日本の姿や日本の行う海外援助などへの理解を求め、国と国の信頼やさまざまなつながりを担う重要な職務です。こうした海外との交流を通じて思いを強くしていることの一つに教育と人材育成の重要性があります。
今は20年間の「負の遺産」の処理をしている時期としたうえで、なかなか進まない税と社会保障の問題に対しても社会の基本部分としての教育を例にあげます。「高校生の授業料を無償にするというのは、反対する人もいますが、教育は家庭でやると同時にやっぱり社会がやらなければ日本の国の将来がだめになります。」「人材を育ててこれからの国を動かしていこう。そういう基本のところをもっと政治家も問題提起しなければいけません。国民の皆さんもそれに向き合ってほしいんです。」
原発災害という国難をはじめいくつもの難題を抱えるこの国の議会の長として、政治が混迷する様を捨て置けない気概が強くにじむインタビューでした。
■ 第1回 1月 8日放送
■ 第2回 1月15日放送
■ 第3回 1月22日放送
2月のゲストは、釧路市丹頂鶴自然公園名誉園長の高橋良治さんです。
放送は、2月5日、12日、19日の3回の予定です。
(プロデューサー 五十嵐浩二) |