「生まれ変わっても」トータス松本（2012年）
2012年リリースの3rdアルバム『NEW FACE』（2枚組）に収録。Disc1が「TORTOISE SIDE」でDisc2が「ATSUSHI SIDE」と名付けられています。より自身の内面的な部分を表現したのが「ATSUSHIサイド」なのかな？と思いますが、この「生まれ変わっても」は「TORTOISE SIDE」のラストを飾る曲で、トータス松本さんらしさもありながら、松本敦さんにも繋がっていくような繊細さも感じる曲です。
実はこのアルバムがリリースされた時に、トータスさんがライブで札幌に来ていて、HBCテレビ『今日ドキッ！』の「卓アキぶらりサーチ」のロケに付き合って下さいました。翌日のライブも観に行き、特に良い曲だなぁと思ったのがこの曲「生まれ変わっても」。アカペラから入るゴスペル調の曲で、強さとナイーブさを併せ持つトータスさんの魅力が存分に出ていて生で聴いてさらに好きになったナンバーです。
「春雨」村下孝蔵（1981年）
村下孝蔵さんは好きなアーティストの一人。「春雨」は私が初めて聴いた村下さんの曲で、当時ラジオの深夜放送でよくかかっていました。この曲がリリースされた1981年は、寺尾聰さんの曲が一世を風靡した頃で、時代は洗練されたシティポップへと向かっていました。ですから、正直村下さんの曲をラジオで聴いた時は「ちょっと古くさいな」という印象を持ったのを覚えています。ところが何回か聴いているうちに、歌詞とメロディの美しさだったり、村下さんのボーカルの誠実さ、切なさみたいな魅力に引き込まれていきました。この曲の主人公は女性で、恋人が都会に出ていき遠距離恋愛の末別れてしまったという失恋ソング。編んだセーターを渡すことなく糸を解いたとか、彼氏が好きだった歌を一人で聴いていたけど、失恋したためそのレコードに傷をつけたり、かなり湿っぽい歌詞ではあるんですが不思議と重々しさは感じられず、かと言って無理してポジティブになっているわけでもない。純粋に寂しさ、悲しさに浸っていて、どこか品があるというか日本人らしい情緒を感じます。当時としては少し時代遅れ感があった曲なんですが、どんな時代の音楽もサブスクなどで気軽に聴ける今、逆にこの純粋さがエモいというか、時代を超えて人々の心を捉える普遍性があるのではないでしょうか？
「遠くで汽笛を聞きながら」アリス（1976年）
この曲は「チャンピオン」などと並ぶアリスの代表曲のひとつ。コンサートでも必ず演奏されるナンバーですが、リリース当時はアルバムからのシングルカットということもあってオリコン最高位51位と全くヒットしませんでした。作詞・谷村新司さん、作曲・堀内孝雄さんで、メインボーカルは堀内孝雄さんが担当しています。 私は最初この曲を聴いた時に、ベーヤンの歌とかメロディは気に入ったのですが、歌詞の「何もいいことが無かったこの町で」というフレーズがどうもよく理解出来なくて、当時まだ私は小学5年生でしたが、ただただ地元をディスってボヤいている風に思っていました。ところが、後のチンペイさんのインタビュー記事を見てまだ売れていない時に地方巡業のツアー中に「今まで何もいいことがなかったけど、辞めずに地道に頑張って いこう」という決意を歌にした前向きな曲だということを知り、この曲が好きになりました。下積み時代には年間300回を超えるライブをこなし、時には1000人のホールに20人しか入らず、ステージ上に観客を上げて車座になって歌ったりと苦労もたくさんあった彼らならではの、ある意味達観した歌詞だと感じます。
「JOANNA」杉山清貴＆オメガトライブ（1984年）
4月21日にデビュー40周年を迎える杉山清貴&オメガトライブの隠れた名曲。1984年10月21日にリリースされた「RIVERSIDE HOTEL」のB面に収録されています。作詞は秋元康さん、作曲は林哲司さん。いわゆる「メロウなミディアムバラード」という林哲司さんお得意のパターンで、杉山清貴さんのハスキーで洗練されたボーカルが、より切なさを盛り上げています。でも、よくよく歌詞を聴いてみると、浮気を薄々勘付かれたのを抱きしめて誤魔化して「もっと上手く嘘ついときゃ良かった」と後悔しているという、考えようによっては相当カッコ悪い男の話。それをこれだけスタイリッシュに聴かせるというのは、まさにAORマジックです。VAPレコードでは杉山清貴＆オメガトライブ40周年スペシャルサイトも開設。一昨年9月からは過去にリリースしたオリジナルアルバムのリミックス版を半年に1枚のペースでリリース。3月29日には4枚目のアルバム「ANOTHER SUMMER」のリミックス盤がリリースされる予定です。
