5月17日放送

 少子高齢化に限界集落、若者流出・・・などなど、ここのところ地方を表現する言葉は否定的なものばかり。さらに、去年は「地方消滅」などというセンセーショナルな言葉が将来の予言でもあるかのように一気に喧伝された。
 北海道に住む者としては、なんだかなぁ・・・という感じ。だからこそ今から手を打ちましょうという問題提起とは言え、実際に今、人が大切な営みを続けている土地に対して、負の影響力の大きい「消滅」という言葉は出来れば使って欲しくはないなという気持ちにもなる。
 言葉は「気」を支配する。地方が消滅するんだって・・・という言葉が一人歩きすると、だったらここにはいられない、何をやっても駄目じゃない?子供は育てられない・・・というなんとなく醸し出される「空気」がマイナスのスパイラルを生み、それによって現実が引っ張られる可能性だってあるのだ。
 では、地方はどう立ち向かうか?
 何よりも、そんな曖昧な負の「空気」に心を萎えさせてはならない。「統計、論評、風評どこ吹く風・・・」そんな気概で、自分達の風を吹かせなければならない。自分達が使う言葉を「どうせ田舎」など卑下するものではなく、「田舎だからこそ」の魔法の言葉を使って、したたかに地方の豊かさを見せていかねばならない。あくまでも楽しそうに、楽天的に・・・。
 今回の「ほっかいどう元気びと」のインタビューでそんなことを考えた。

佐藤勝彦さん ゲストは、石狩市厚田区地域協議会会長の佐藤勝彦さん 72歳。厚田村が石狩市に編入合併されたことを機に立ち上げられた「NPO法人あつたライフサポート」の仕組み作りにかかわり、現在は理事長として、安心して住み続けられる地域作りに尽力されている。
 佐藤さんは、「北海道教育大学付属中学校」をスタートに、「札幌大学女子短期大学部」「札幌大学」で教鞭をとってこられた教育者だが、現役中の2000年に厚田に移り住み、リタイア後は、少子高齢化の進む地域でどう住民をサポートしていくのかのまちづくりに力を注いでいる。
 教育者で、地域のために先頭に立つ人。なんとなく渋く厳しいイメージを想像していると、現れたのはとびきり「楽しいオーラ」に包まれた人。収録前から笑いのたえない会話でインタビューが始まった。

 佐藤さんの頭の中には、こうしたいという明確なビジョンがあり、それを表現するのがほんとうに楽しいというように言葉が溢れる。推し進めたい「地域作り」は、高齢化率50%を超える集落などに暮らすお年寄りの足をどうサポートするかというシステム作りが軸ではあるが、目指すのは、外へ出ることで元気になるお年寄りを増やし、その土地が誇りとする農業漁業の価値を繋げる役割も担い続けて貰うということ。そして、それを見る子供たちに、そんな地域が生み出すほんとうの価値や、みんなが助け合うことの価値を感じて貰うこと。つまりは、お年寄りから子供まで「より良い循環」を生み出すということ。
 お年寄りを皆で支えることや、農山漁村の産業の誇りを再確認することは、暮らしの中での教育であり、最も心を育むことなのだという長年の教育者としての思いが佐藤さんの根底から伝わってきた。
 そして、地域の取り組みで大事なのは、楽天的に夢を語ることだと言う。とはいえ、語りっぱなしでは何も変わらない。モデルケースなど無くても手探りでもひとつひとつきちんと実行に移していくことが大事なことなのだと、これから先、地方が誇りをもって生き残っていくためのヒントを沢山のエピソードを交えて話してくれた。

佐藤勝彦さん ノウハウを支えるのは「心」。地域を守り続けていくためには、その大切さをどう繋げていくかが欠かせない。だから、高齢者を支えるという視点と子供の成長を支えるということは繋がっている。地域を活性化させるということは、土地の風土を壊してでもモノを造ったり巨大なお金を落とす仕組みを誘致することではもはやない。時代の流れの中で忘れていた土地の良さを掘り起こし、この先の未来も何かを生み出していけると若い人達が思えること。
 佐藤さんは、よそから来て移り住む自分のような人を「風の人」、元々そこに住んで地場の仕事を守ってきた人を「土の人」と表現し、風の人は土の人が気づいていない「宝」に注目し、生かし、土の人の誇りを掘り起こす役目もあるのだと話す。新しい風が入り込み、混じり合うことでまたその土地の「風土」が作り上げられていくのだと。
 目に見えるモノの価値以上に、目に見えないものの価値を創造していくことが欠かせない成熟の時代、豊かさを測るモノサシを「地方仕様」で新たに作っていくことが今後益々求められていくのだと思った。

 「悲観主義は感情で、楽観主義は意志の力による」と言ったのはフランスのアラン。
 佐藤さんの「楽しいオーラ」も強い意志で身に付けられたものに違いない。
 地域作りも、不安感情に流されずにしっかりと意志の力で楽しさを醸し出していくことで、次なる芽が育っていくのかもしれない。

(インタビュー後記 村井裕子)

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