4月19日放送

 歳を重ねたことで気づく喜び、使命感・・・「ほっかいどう元気びと」のゲストの方々と話していて、それについてとても深く共感出来る瞬間がある。
 いわゆる「世間」というものが「歳をとることはマイナス」という空気を撒き散らしている中で、自分の過去も現在もそして未来も否定せずに淡々と今やるべきことを続けている人に出会うと、この世界はやっぱり素敵だなと思ってしまう。

すずきももさん 今回の「ほっかいどう元気びと」のゲストは、イラストレーターのすずきももさん 53歳。収録前のアイスブレイクで、同年代として思わず訊いてみたくなり問いかけてみた。 
 「半世紀生きてきて、人生これからだ・・・って思いませんか?」
 言ってみてから、初対面の人に唐突な質問だったかなと一瞬思ったが、すずきさん、満面の笑顔で、「思います!これからだと思ってます!」
 同志発見!との意を強くし、なぜそう思えるのかを楽しみにインタビューをスタートさせた。

 すずきももさんは、札幌在住のイラストレーターで、「さっぽろおさんぽ日和」などの著作を通して、身近にある美味しいものやセンスある手仕事のお店、素敵な店主をイラスト満載のエッセイで紹介している。
 ほのぼのとした、いわゆる癒される画風は、目にした人にホッとして貰いたいとの思いがあるという。一息入れようかなとか、外へ出て美味しいものを探しに散策してこようかなと思って貰いたいと。
 そして、取り上げているのは札幌界隈のこだわりのパン屋さんやおやつ、カフェと、今すぐにでも行けそうな気軽なお店ばかり。その一軒一軒を自分の足で取材してびっしりと絵と文を書き込んでいるのは、その「食」の背景にあるものを伝えたいからだと言う。
 例えば美味しいパンの背景には、地元北海道の小麦を使う店主の心意気があり、それを栽培する農家の頑張りがあり、その間には加工に工夫を凝らす製粉の業者さんがいる。
 そんなふうにあなたの周りには、ちょっと目を凝らすと誇れる食があり、それを大事に担っている人達がいる。気づいて、選ぶことによって、地域ならではの食は次の世代にも繋がっていくということを伝えたいのだと。
 すずきさんは、「スローフード・フレンズ北海道」の事務局長でもあり、「だい好きパンの会」の会員でもある。口に入る食は、人の命を作る。今の時代は、食べるものを選択できる時代だからこそ、何を選択していくかという視点は欠かせない。そのために大事なのは、正しく知ることと多くの人達と共有していくことだと思うと、スローフードへの思いが溢れていた。

すずきももさん これからのさらなる役割はどう感じていますか?
 50代以降にどんな思いを込めているのかを訊いてみると、すずきさんは迷うことなくこう答える。
 「これまで取材したり人と話したりしたことが自分の中で沢山ストックされているので、それを絵と文で少しずつ伝えていくことです」
 食の大切さ、知っていてほしい情報、食を通して地域を守っていく必要性・・・分かち合いたいことは山ほどあるので、好きな絵を通して伝えられることは益々楽しみになっていく、と明快に話す。
 人は歳を重ねる中で普遍的な大切さに深く気づいていくと、それを伝えたくなる。受け渡したくなる。その手段は、それぞれがそれまでに培った技や経験則だ。半世紀の中で準備はすでに出来ている。そうやって役割が見えてくると、やるべきことがどんどん見えてくる。
 試行錯誤しながら積み重ねて来たストックを世の中に還元していくというのはなんと幸せな人生の折り返しだろうかと思う。

 今回のすずきももさんの表現の中で、後々まで心に響いていたのは、「大事にする」というシンプルで力強い言葉だ。
 「自分の体を作ってくれる食べ物がどこから来るかという食の背景を知ることで、食べることを大事に出来る。自分の体を大事にし、家族を大事にすることが出来る。そして、さらに、作っている人や売っている人を大事にすることが出来ると思う」
 “大事の連鎖”の気づきに深く共感しながらふと思い出したのが、宮尾節子さんの『明日戦争が始まる』というアンソロジー集。その中の「わたしはだいじにする」という詩だ。
 「わたしはだいじにする わたしをだいじにする わたしのおもいをだいじにする」から始まって、「わたしのかぞくをだいじにする わたしのかぞくのおもいをだいじにする」と続く。さらに、「わたしのともだち」、まち、くに、ほし、そこにすんでるひと、ものたち、そのおもい・・・とバトンが繋がるように“だいじにする”を連鎖させていき、最後の一文に大きく揺さぶられる。
 「わたしのほしにすんでるものたちのおもいをだいじにすると、
 どこがいけなくてだれとせんそうになるの?」

 すべては繋がっているのだなと、改めて思う。すずきさんの言う「食」も「命」も、そして「平和」も。
 まずは、一番基本の“わたしをだいじにする”ことからひとりひとり始めてみよう。
 自分自身をちゃんと大事にするということ。重ねた年齢を喜び、それぞれに持てる力をちゃんと使うことだって、そういうことだ。 

(インタビュー後記 村井裕子)

※『明日戦争がはじまる』宮尾節子(集英社インターナショナル)

HBC TOPRadio TOP▲UP