3月29日放送

 何がなんだかわからないことばかりで仕事をスタートした新人も、失敗したり焦ったり、周りに迷惑をかけたりしながら、粘り強く自分で自分を引っ張っていくうちになんとか一人前になっていく。曲がりなりにもひとつことに打ち込んでいると、何というか「法則」のようなものが見えてくるからだ。
  「セオリー」というとちょっとカッコ良すぎるので、私は法則と呼んでいる。
 こうすればこうなるという仕事の進め方などは勿論だが、仕事というフィルターを通して、もっと大きな「この世の法則」「この宇宙の法則」にも気づいていくのが歳月を重ねて得られる最大の報酬だ。
 文字で書くとあまりにも単純なのだが、私なら例えば、「強い思いが夢を叶える」とか、「言葉にしていることが現実になる」とか、「自分が出したものは自分に返ってくる(言葉や思い、行動など)」、はたまた「すべてには、それに相応しい時がある」といった、目には見えないけれど自分自身が確信することで「大丈夫」と思えるお守りのようなもの。
 個々の法則を擦り合わせていったら、普遍的で揺るぎないものが浮かび上がってくるかもしれないと、時々「元気びと」達に問いかけてみる。あまりに大きな問いかけだから、一瞬「さて、どう答えようか」と戸惑いを見せつつも、言葉にし始めるとどんどん経験則からの気づきが言葉になるのが面白い。みんな、やはり、苦労の末に自分で掴み取った「法則を語る」ということはわくわくするものなのだ。

中村雄大さん 今回の「ほっかいどう元気びと」は、函館在住で照明のデザインや演出を手掛ける「enya Nakamuraya」代表の中村雄大さん 45歳。
 東京で経験を積み重ね、2013年に函館にUターン。母親の病気という大きな理由があって戻ってきたのだそうだが、その培ったノウハウで函館の役に立ちたいと、まずはひとつひとつ丁寧に仕事を請け負っていると言う。
 会社の名前の「enya」には、「縁を大切に=縁屋」との思いが込められ、名刺の肩書きは「照明デザイナー」ではなく、「照明師」。そんなところからも何を大切にその道に取り組んできたのかが伝わってくる。

 函館の工業高校時代を野球部の練習練習で過ごし、東京に出て大手の食品加工会社に勤めた後、「何か自分の技を身に付けたい」と一念発起。当時興味があった照明デザインを専門学校で学び、その頃、ゼロからスタートさせたという照明デザイナーの第一人者、藤本晴美さんの事務所に入社。沢山の教えを糧に責任ある仕事を任せられたという。
 パーティー、結婚式、あらゆるイベントの華やかなライティングデザイン、ホテルやレストラン、庭園の照明といったセンスを問われる演出など、東京という舞台での需要は限りなくある。
 故郷の函館に戻ると決めた時、少なからず言われたのは、「東京じゃなければ照明デザインという仕事は成り立たない」「地方に戻っても仕事として無理」という言葉。
 中村さんは、「初めから否定するばかりでは何も始まらない。やらないで地方の町をただ廃れさせるのは勿体ない。それぞれの分野がそれぞれの役割でやってみればいいと思っている」と内なる闘志を表現する。その言葉に気負いはなく、函館に戻ってからも照明師として活動し始めたのは、「自分が人より出来る仕事は、やはり照明しかないので」と、あくまでも謙虚だ。
 小さなきっかけを糸口にいろんな人が繋がっていき、けっして多くはないその堅実な繋がりが今自分にとってとても心地よいと言う。その言葉から、故郷で楽に呼吸している感じが伝わってくるようで、40代以降は、やはり人の縁が人を生かすのかもしれないと感じた。

中村雄大さん 長年の取り組みの中で気づいた法則のようなものはありますか?
 中村さんにも「法則」を問いかけてみると、こんな言葉が返って来た。
 「仕事は、実現が難しそうと不安に思ったとしても喜んで快く引き受ける。そうやって出来ることをひとつずつ見つけていく中で、チームのひとりひとりの力に助けられて着地が出来る」
 不安に思って無理だと断るのではなく、喜んで「やりましょう!」と発した途端に、見えない空気が気持ちのいいものに確実に変わっていくのだろう。そのいい空気が人を引き寄せ、「出来る」を引き出すに違いない。
 さらに、中村さんが気づいているかどうかわからないが、こんな普遍的な法則も感じられた。
 「人との縁が何より大切と言っている人に良い縁はやってくる」
 「人に否定されても、自分が自分を否定しない限り、道は拓ける」・・・

 この4月から社会に出る新入社員の皆さんやUターンで地元に戻って来た皆さんは、属する場でのハウツーを身に付けることから一歩ずつ歩んでいくのだと思うが、是非、粘り強くその道を進む中で気づくであろう法則を逃さないでほしい。
 辛いとき、大変なとき、自分自身で手にした法則にきっと助けられるから。

 「ほっかいどう元気びと」は、多くの方々に支えられて今年は5年目の春。
 共感の言葉が積み重なることで、世の中の幸せも増えていく・・・そう信じて進んでいきたいと気持ちを新たにしている。

(インタビュー後記 村井裕子)

HBC TOPRadio TOP▲UP