3月1日放送

 2011年3月11日の東日本大震災からまもなく4年が経とうとしている。
 この4年という時間。被災者の方々にとっては語り尽くせないほどの思いが積み重なった日々であっただろうし、災害地から離れたところにいる私達にとっても沢山のことを考えた歳月だった。想像を絶する当事者の痛みに思いを馳せながら、復興には程遠い現状に憤り、何か出来ることはないかと知恵を絞りつつも無力感にも苛まれ、同時に、もう一度立ち上がる姿や前を向いて進もうという「人の力」の強さも改めて感じさせて貰い、逆に励まされたことも沢山あった。
 あの時心に刻んだ「被災地を絶対に忘れてはいけない」という思い。しかし、2年3年と過ぎる日常の中で確実に記憶は薄れ、情報自体も毎日更新されるニュースに埋もれていく。
 さて、時の経過の中で今後どう被災地に関われるのだろうか、災害に対して自分は何が出来るのだろうか。
 簡単に答えは出ないかもしれないが、「ほっかいどう元気びと」は、3月11日を前に、実際に被災地支援の取り組みを続けている方の思いを聞かせて貰うことにした。
 「自分は何が出来るだろう」「日頃からどんな力を備えられるだろう」という原点を思い起こすために、二週に渡ってお二人に出ていただく。

吉崎文浩さん 3月1日のゲストは、東日本大震災の一月後に単身ボランティアとして現地に入り、ボランティア達のコーディネーターとして活動した、札幌在住の吉崎文浩(よしひろ)さん 70歳。現在も尚、東北は釜石に学生ボランティア達を連れて訪れ、高齢者が従事する漁業や農業の仕事の建て直し、子供達の心のケアといった支援を続ける他、「ふくしまキッズ」の活動に参加し、さらに、その体験を伝える取り組みにも力を注いでいるという。
 吉崎さんを駆り立てるものは、まだまだ被災者の人達の心の復興も途上にある中で、彼らの「忘れないでほしい」という強い願いを感じ、さらに自分が出来ることで関わりたいという思いだと言う。

 なぜ、吉崎さんは単身ボランティアとして現地へ赴き、そこでボランティア達を取りまとめたり指導をしたりするコーディネーターの役目を担い、一度だけでなく継続して取り組めてきたのか?
 その問いかけをして分かったのは、日頃の暮らし方の意識や取り組み、人との繋がり方ひとつひとつの積み重ねが、やはり何かあった時に大きく発揮されるのではということだった。
 吉崎さんは、公務員の傍ら、友人と二人で25年に渡り「函館山少年レンジャー」という子供と親のための自然学校を運営したことがあったという。大勢の子供や親達と接することで人の気持ちが分かるようになったことや、自然の中での生活の知恵にこだわって来たことも、もしかしたら役に立ったのかもしれないと思う、と言う。そして、母親の介護を長年経験した後は脱力感に見舞われたけれど、高齢者が圧倒的に多い被災地でそれも生きた、とも。
 何かが起こった時に、自分を守り、そして、周りの人のためにどう動けるかというのは、日々に「何を考え、何に取り組み、どう動いてきたか」ということが試されるのだ。そして、それは、ボランティアのノウハウとしてだけではなく、実は私達ひとりひとりが身に付けたい「人として生きる力」に他ならない。
 吉崎さんは、ボランティアの指導の時に、遣う言葉のひとつひとつにも気を配るようにと若い人達に伝えたそうだ。
 「災害で傷ついた人達が、それ以上傷を負わないようにする配慮が最も大事なこと。言葉ひとつで人の心に大きな影響力がありますから」と。

吉崎文浩さん 吉崎さんの宝ものは何ですか?
 恒例の問いかけに、ちょっと考えて、「精神的に大切なこと、それは思いやりかな」と答える。ボランティアは、してあげるのではなく、させていただくもの。相手が何を求めているのかを理解する気持ち、それが吉崎さんの思う「思いやり」なのだと伝わってくる。
 そして、相手が何を求めているかは、少し距離を大事にしながら見守っていると、ふとした行動の中から分かるものがあると吉崎さん。相手が何を発信しているのかをくみ取ることが大切だと語る。被災地のみならず、北海道で福島の子供達を夏休みなどに受け入れる「ふくしまキッズ」の活動も続けてきた経験の中からも思いが溢れていたが、ひとりひとりが何が出来るのかのヒントが次の言葉に込められていた。
 「何も被災地に行くばかりがボランティアではない。今、ここで出来ることも沢山あるんです」
 そして、多くのボランティア達と出会った経験から、ひとりひとりそれぞれが出来ること、得意なことをすればいいのですとにこやかに話す。人は皆、何かしらの力を持っているから、必ず人は何かで誰かの役に立つんです、と。

 吉崎さんは、中国の言語学者・林語堂の「人生の黄金時代は老いていく将来にあり」という一節を引いて、まだまだ体力も時間もある高齢者がボランティアに関わりましょうと話を締めた。させていただくことで、まだまだ出来ることが沢山ある喜びに気が付きます、と。
 吉崎さんにとってボランティアは、生き方そのものなのだと思った。

(インタビュー後記 村井裕子)

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