2月8日放送

 自分の思いや考えを相手に伝えるためには何が必要か。
 「話し方」講座を始めて10年の中で確信出来たひとつには、その人が自分自身と向き合って「問いかけてきた」その分量と時間の大事さだ。
 自分と向き合うきっかけとなるのは、例えば「本気で取り組むもの」。仕事でも趣味でも、何かを身に付けたいとか、今より上達したいという思いが強いと、「じゃあ、どうすればいい?」「どんな方法がある?」「何でうまくいかない?」と自ずと問いかけが生まれる。
 自分と向き合い、問いかけ、考える時間と分量。となれば、勿論、年月を積み重ねた大人が考えや自己の思想なるものを語れるようになるというのは当たり前のようだが、そんなことは面倒とばかりに「考えること」をスルーし続けると、やはり自分の言葉で表現することは難しいままになる。逆に年齢が若くても、例えば何かを目指してスポーツに励んだり、これという好きなものに打ち込んだりすることで、その「自分はどうすればいい」という問いかけの習慣が生まれる。自問自答することで自分の中から自分の言葉が生産され、多種多様な人との間でそれが交換されることで確固たるものになっていく。
 サッカーでも野球でも、あらゆる趣味でも、打ち込めるものや好きなものを見つけなさいというのは、その「問いかけ役」となる「もう一人の自分」を生み出すことで、ほんとうの自分を成長させることが出来るからなのではないだろうか。

横田彩青さん 今回のゲストは、今まさに打ち込めるものによって自分を成長させている真っ最中の「未来の元気びと」、民謡のスーパーキッズと呼ばれる岩見沢の小学6年生 横田彩青(りゅうせい)君。両親が取り組んでいた「YOSAKOIソーラン」を観ていて、踊りよりも耳から入ってくる歌の方の「民謡」に心奪われ、5歳から習い始めたという北海道民謡界の期待の星だ。
 週2回岩見沢から千歳の民謡教室に通いメキメキと上達。数々の賞を獲るようになり、昨年には「第53回 郷土民謡民舞青少年みんよう全国大会 民謡グランプリ部門」で最高賞の文部科学大臣賞も受賞。これまで練習は嫌だと思ったことがなく、歌っていると元気が出てくるというから、好きこそ物の上手なれなのだろう。 

 10代の人達への質問は一筋縄ではいかない。経験というポケットはまだまだ小さいし、問われ慣れていない。質問の内容についてこれまでに考えたことがなければ、即座に「わからない」と答えたり、話し始めても途中で諦めて言葉を紡ぐのを止めてしまう。
 彩青君は、大人への質問と同じような私の問いかけに、時々、コンピュータが操作命令の過剰により“固まりそうになる状態”のように言葉が続かなくなることもあったが、「ゆっくり考えて話していいですよ」と伝えると、民謡という取り組みで確実に何かが入っているであろう“経験ポケット”から一生懸命に言葉を掘り起こそうとしてくれる。そんな、考えるのを諦めずに再度集中力を振り絞り答えを探す中でぽろりとこぼれた言葉からは、やはり何かひとつのことに取り組んできたからこその表現がいくつもあった。
横田彩青さん 例えば、「人に言われる前に自分でやってみる、工夫してみる、努力してみる」という表現。「あなたの宝ものは何ですか?」の聞き取りで、彩青君は「形の無いものでは自分が今取り組んでいる唄が宝もの」であり、「形のあるものでは民謡と共に習っている三味線」と答えてくれたが、特に三味線は、人から言われる前に自分でCDなどから音を聴いて、自分でそれらの微妙な音を工夫して出してみる、バチをどう持てば細かい音が出るかを率先して試してみる、その大切さを話してくれた。
 なぜそういうやり方を大事にしているのかを訊くと、彩青君、「これまで、いろいろなことで何度も怒られた。その時に反省して、“ああ、そうか!”と思った」と言う。
 次は怒られないように、言われる前にやれることをやろうと、経験から気づいたのだと。
 「でも、やっぱり練習に集中出来なくて怒られたり、自分でやる前に言われてしまうことが多かったりして、まだまだ“ああ、そうか!”と後で気づくことばっかりなんです」と、見せる笑顔は子供そのものの表情で、その無邪気さにかえってほっとする。
 12歳。早くも大きな目標を見つけて力を伸ばそうと行動し、反省し、学びを生かそうと頑張る日々には、悔しい思いや落ち込む気持ちもあっただろう。小さな体と頭に重ねてきた経験は、確実に成長の糧になっているのだろうなと感じられた。

 優勝した「十勝馬唄」を一節歌って貰ったが、それはもう堂々とした歌いっぷり。身体全体で声を響かせ、開拓の時代の情景や人の心情を想像することを大事にしながら歌っているというその姿勢には既に大人の雰囲気も漂わせていた。
 ひとりの子供の中には沢山の顔の“こびと”が駆け回っている。遊びたいとか楽しいことをしたいとか、押さえつけられるのは嫌だとか甘えたいとか、様々な感情を放出し、時々自分でも持て余しそうになる“こびと達”。でも、彩青君のその奥から才能という無限の可能性がそれらを乗り越えて伸びよう伸びようと力を振り絞っていることが確かに感じられた。

 12歳の彩青君の夢は、自分が「三橋美智也さんや細川たかしさんのような民謡の歌手になる」というなりたい職業にとどまらず、「民謡や和楽器の良さを、日本中、世界中に広めたい」という、外に向けての使命感を感じさせるような言葉も使っていた。
 子供の中の“こびと達”は、毎日毎日いろんな思いをてんでに主張し、小さな頭を悩ませることも多いが、大人になるというのはその“こびと達”と問答を重ねて、共に成長していくことだ。
 その為の最強の“杖”は、やはり「好きなことを見つけた」ということではないだろうか。
 「なぜそれをするの?」「どんなふうに道を進めばいいの?」「自分を信じて頑張れるか?」
 ワクワクする自分への問いかけこそが、“こびと達”を味方につけ、自分の中の最強サポーターになっていくのではないか。
 これから益々花咲かせるだろう才能と向き合って、そんなことを感じた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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