2月1日放送

 先日のHBC「テレフォン人生相談」。パーソナリティーの加藤諦三さんの締め言葉が耳に残った。「どんな逆境でも、人生の困難に噛みつく力のある人がいる。レジリエンスのある人と言います」
 その、「人生の困難に噛みつく力」という表現と「レジリエンス」という言葉が気になり調べてみると、レジリエンス(resilience)というのは「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などと訳される心理学用語。「脆弱性 (vulnerability) 」の反対の概念であり、自発的治癒力の意味・・・とある。「外力による歪みを跳ね返す力」という表現もあり、研究の最初は貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境に置かれた児童に焦点を当てていたというが、最近では成人も含めて今を生きる人の必要な力として注目されているという。
 同じような大変さに遭遇しても、その壁を越えていく人と、無理だと諦めてしまう人。その違いのひとつに「レジリエンス」があるとして研究が進められているというわけだ。
 「レジリエンス」のある人。「ほっかいどう元気びと」で紐解きたいひとつがまさにそのような“人が内に持つ力”だ。なぜ、あなたの中にはその困難や試練の壁を越える力があるのか?どう行動することで耐性が付いてきたのか?或いは、どんな考え方でマイナスと思えることをプラスに変えているのか?
 前回のゲスト、レバンガ北海道の選手兼代表の折茂武彦さんも「とらわれない」が信条のまさに「レジリエンスのある人」だったが、「元気びと」はすでに200人の方に出ていただいている。その200の“サンプル”の中から、「レジリエンス」要素も浮き彫りになるのではないかと、インタビュアーとして更なる思いを込めている。

中島輝司さん 今回のゲストは、子供達の夢を育むドリームバスの開発・製造を手掛けている、北広島市の「光源舎オートプロダクツ株式会社」代表取締役社長の中島輝司さん 63歳。
 ドリームバスとは、車体を機関車や犬、猫の形にデザインしたもので、主に幼稚園の送迎バスに取り入れられているもの。この話を聞いて初めて知ったのだが、中島さんがパイオニアなのだという。今から30数年前、中島さんは、やはり先駆者としてキャンピングカーを自分で作り、販売も始めていたそうだが、ある時、移動販売車の依頼を受けて蒸気機関車の形の車を作ったことをきっかけに、幼稚園向けのドリームバスを開発・製造するようになったと言う。思いはただ、子供たちに喜んで貰いたい、夢を持って貰いたいという一心。
 ところが、機関車や犬、猫のでこぼこした形の車は前例がないので、まず法律の壁が立ちはだかる。道路運送車両法に則り安全基準に沿って製造はしていても、「なぜそのような車を作らなければならないのか」との既成概念で難色を示されてしまう。理解をして貰うために何度も掛け合い、数年後にようやく認可が降りると、今度は当の幼稚園の関係者達の「なぜ、教育の場での幼稚園バスがそんな形をしていなくてはならないのか?」という批判的な反応の壁。中島さんは全国をデモンストレーション車で回って、一軒一軒熱く説得して歩き、その結果、次第に受け入れられ浸透し今があると、長い道のりを飄々と話してくれた。
 新しい発想の何かを世に広めようとする時に、「非常識だ」「前例がない」「見たことがない」と批判されたり笑われたりしたものが、時代の流れの中で受け入れられ、やがて「常識」になっていった例は数限りなくあるが、やはりその風圧をものともせず実現化させるためには、何度跳ね返されても復元する強い精神力が必要だ。
 中島さんの場合はそれがどんな力なのかと訊ねると、再び飄々と語ってくれる。
 「子供達に絶対に喜んで貰える、いつかこういう夢のあるバスが社会に受け入れられると信じる気持ち」
 自分の仕事が成功するとかしないとかよりも、自分自身がほんとうに喜べるかが大事と。

中島輝司さん 収録後の「あなたの宝ものは何ですか?」の紐解きで、さらに中島さんの信条が明らかになっていった。
 「私の宝ものは、子供心をいまだに追い求めることが出来る自分です」
  中島さんは、子供の無邪気さにすごく惹かれると言い、何をやっていても生き生きしているその中に無限の可能性を見ることが出来ると言う。自分にとってその子供達の感性にどう応えられるか、どこまで近づけるかのチャレンジがとても大切なことと断言する。
 そして、“人はなろうとした人になれる性質を持っている”という哲学の言葉にある一説を紹介し、「そうであれば、皆が“自分はこうなろう”と思えばいいじゃない」と笑いながら続ける。縛られず、自分を解き放して、“自分はどう生きたいか”という思いを持つことで苦労も困難も乗り越える覚悟が出来てくる。本当にそうなりたいのかと何度も問いかけて、自分の不足を紐解き、努力し、補っていくことでどんどん“なりたい自分”に近づいていくのだと語り、やはりそのためには「情熱=思いの強さが大事なのだ」と、中島さんの生き方の軸が浮き彫りになっていった。

 まさに、人の中の力である「レジリエンス」は、“思いの強さ”がその最大要因だろう。
 「どんな逆境でも人生の困難に噛みつく力」は、強い思いが行動を引き寄せ、その経験の度にパワーアップされ、そうすることにより苦痛や辛さでさえ楽しさや喜び、幸せに繋がっていくと実感出来るのではないか・・・中島さんの“ゼロから何かを生み出す”先駆者的な取り組みを聞いていてそう感じた。
 レジリエンスは、特別な人の中にあるわけではなく、誰の中にもその因子はあるとも言われている。どう育てるか。思い込みにとらわれずに考え方の切り替えのコツを掴むとか、自分を客観視するとかいろいろな方法があるようだが、中島さんと話をしていて気づくのは、やはり「喜ぶ人」をイメージ出来ているということである。
 前回もこの後記の中で「利他」という表現を使ったが、この役割感や使命感といった「誰かのために」という思いが、最も人の中にある「復元力」を後押しするのではないかと改めて思った。

(インタビュー後記 村井裕子)

HBC TOPRadio TOP▲UP