12月28日放送

 HBCで駆け出しアナウンサーだった頃、北海道の広報番組を担当していたことから毎週のようにあちこち取材で回っていた。広い道内、海のあるところや山のあるところ、各地を訪ねることは道外出身者の私にとって実際に北海道を学ばせて貰った得難い経験だった。
 30年以上経っても強く印象に残っているのが“美味しいもの”の記憶。特に、その土地の“お母さん達”が何人か集まって作ってくれたごく普通の食事の美味しいこと!「いつも食べてるものだけど」と謙遜しながら振る舞ってくれた山菜や魚の煮付け、地元野菜の漬け物といった、観光用ではない“当たり前の食事”の奥深さに大感激。そして、それを作る女性達の稼働力と料理能力の高さにいつも感心して、有り難く味わわせていただいていた。
 家庭の料理は、家族の中で消費される“内向き”のものだが、実は凄い実力を備えているもの。その潜在力をもっと社会で活用できないものかと思っていたが、今回の『ほっかいどう元気びと』で「コミュニティレストラン」の話を聴いて、やはりその力は“外向き”でも発揮出来るのだと改めて感じ、地域の活性化と共に興味をそそられた。

片山めぐみさん ゲストは、寿都町に2012年6月にオープンしたコミュニティレストラン「風のごはんや」の提案者である「札幌市立大学 デザイン学部」講師の片山めぐみさん 39歳。
 「風のごはんや」を形にしていった経緯や思い、専門の「コミュニティ・デザイン」を通してどんな役割を果たしていきたいのかを聞かせていただいた。
 「コミュニティ・デザイン」とは、地域の町づくりに対して、そこに関わる人達も巻き込んで共に話し合いながら活性化を進めていく研究や取り組み。これまでは、建築家が関わるのは実際に建物が建つことが前提だったが、最近では、いわゆる“目に見えないコミュニティ”を作るところからデザイナーや建築家が関わるようになってきているとのこと。
 片山さんは、もともとモノ作りに興味があり、「札幌市立高等専門学校インダストリアルデザイン学科」に入学後、「東京工業大学大学院」を経て、2006年から現職に就いたとのことだが、“そこに暮らす人の生活”に惹かれて、コミュニティ・デザインの研究を深めていったという。
 寿都町の「風のごはんや」は、町から大学に「町での新たなビジネスの提案をして貰えないか」という依頼があり、片山さんは同僚とふたりで2年以上の時間を掛けて寿都町に足を運び、町の人達と話し合う中で町民が関わるレストランを立ち上げていった。
 聞けば、昔はどこの地域でもそうだったが、寿都町の女性達の地域力は健在で、お葬式があれば地域の主婦が20人ほど集まりすぐにお料理を作り、寿都神社の例大祭があれば各家々で地元の食材を使った料理を作り、知らない人達にも振る舞うのが土地柄なのだそう。片山さんは、そんな地元の特性を知り、「この人達だったら、経営の経験はなくてもレストランが出来る」と確信し、無理のない形での企画を推し進めたと言う。
 かくして、町内のグループホームとデイサービスセンター、高齢者の賃貸住宅の入る建物の1階ホールにレストランを出店。営業は月曜のみの週一回で、料理の得意な人が持ち回りで担当する「ワンデイシェフ」形式。1食500円で地産地消ランチを提供することに。
 寿都の魚や野菜を使った料理は勿論、パン作りが得意な主婦の手による焼きたてパンなどもその日によって提供され、お年寄りのみならず、赤ちゃんを連れたお母さん達や町外の人達も訪れているとか。人口約3000人の町が取り組む地域活性化の取り組みは、ひとつのモデルケースとして注目を集めていると言う。

片山めぐみさん 片山さんは、「食を介したコミュニケーション」の大切さをこんなふうに語る。
 「お年寄り達が気軽に集まれる場は、やはり美味しいものが食べられるところ。高齢者施設などに入る前の元気でいられる間にいかに在宅の時間を多く持って豊かに暮らせるかを考えることはこれからの地方を考える上でとても大事なこと。週に一度位集まってくる居場所として地産地消のレストランがちょうどいいのではないかと思った」と。
 そして、まだまだ働きたい人や料理好きな人達の力を発揮出来る場所を作るというのも、やはり個々の生きがいに繋がると、地域住民が当事者になって関わる大切さも語る。

 「コミュニティ・デザイン」とは、専門家の提案のもと、町の人達自身が関わり、自分たちの居心地のいい場所を自分たちの手で作り出していくということ。
 一昔前は、地域のあちこちで自然発生的に人が集まってごはんを食べたり、お茶を飲んだりしていたものだし、お年寄りを支える担い手も少なからずあったから、その“デザイン”を考える必要も無かったと思うが、超高齢化社会に向かって、家族の担い手は減り、一人暮らしのお年寄りは増えていく。住み慣れた場所で、顔なじみの人達に囲まれて暮らしていくためには、こういうちょっとした“仕組み作り”としての「コミュニティ・デザイン」が必要になっていく時代なのだ。
 赤ちゃんを連れてごはんを食べに来たお母さんにおばあちゃんおじいちゃん世代が声を掛け、赤ん坊をあやす・・・寿都の試みでのそんな光景を伺って、新しい“地縁”を創造していくこれからのコミュニケーションの形がイメージされた。

 人と人の繋がりがあって、はじめて地域の暮らしが豊かになる。
 住む人が支え合って、その町は魅力的なものになる。
 やはり財産は「人」であり、大切なのは、それをどう繋ぐかなのだ。

(インタビュー後記 村井裕子)

※北海道を支える人、それぞれの人の中にある力を掘り起こしてきた『ほっかいどう元気びと』、今年も1年、聴いてくださりありがとうございました。
2015年の放送は1月4日がスタートです。
新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。

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