12月21日放送

 「ほっかいどう元気びと」でおひとりおひとりに問いかける質問は、その人その人の取り組みによって変わってくるが、浮き彫りにしたいことの大事なひとつに、「あなたはどうやって今の自分になったのか?」ということがある。
 誰一人、最初から自信満々で一足飛びに何かを成し遂げる人になったわけではない。皆初めは新人だし、何かしらの一歩を踏み出すきっかけがあったからこそ今の立ち位置がある。そして、10人いれば10人の考え方ややり方がある。どんな体験があり、何に気づき、どういう背中の押され方をしたのかは数々の“サンプル”となって聴いた人に届くだろう。より多く疑似体験を持っていれば、困難な時の“前に進む杖”になるかもしれない…そう思い、「元気びと」達がそれぞれ自分を確立していったキーワードを紐解いている。
 興味深いことに、個々の経験則がある一定の数になるといくつかの法則が浮かび上がってくる。この番組のゲストはもうすぐ200人に達するが、逆境の時の乗り越え方、前向きの考え方へのスイッチ、「宝もの」=大切にしていることなどから、それぞれが自分自身の自信の土台を作ってきた大事な要素が、言葉は違えど共通してくるのが面白い。

原田直樹さん 今回の「ほっかいどう元気びと」は、札幌市内で活躍するフォトグラファー、個人写真事務所「n-foto」代表 原田直樹さん47歳。
 子供の頃からカメラ好き。職業としてはグラフィックデザイナーを目指し専門学校に入学するも中退し、アルバイトなどで自分の道を模索するが、カメラが好きだったことを知る人達に声を掛けられカメラ店へ就職。そこで技術を多くの専門家から教えて貰えたことで、フォトグラファーの道へ進んでいったとのこと。
 10代の頃から音楽やラジオが好きだったという原田さんは、ミュージシャンとの接点を足掛かりに音楽ライブや芝居などの写真で経験を重ね、現在は個人写真事務所を構え、引き続き得意とする音楽ライブなどの記録写真や出版物のインタビューの人物写真などを手掛けているが、アルバイト時代にどの仕事が最も向いているのかあれこれと模索し、消去法でカメラマンが残ったと笑いながら話す。
 背中を押されたきっかけのひとつは、その当時、病床にあった母親が発した「あなたの人生、今のままでいいの?」という言葉だったとのこと。ことある毎にその“問い”に後押しされてこれまでの道を決めてきたような気がすると言う。
 その、自分の事をわかってくれていた人の問いかけによって自己問答をし、「これが自分の人生」と言える職業を自分の手で掴もうと心を決めた後で、取り組む仕事に自信を深めていけたのは何なのだろう。
 原田さんは、元々カメラ技術は独学で覚えていき、わからないところは縁のあったプロのカメラマンに「こういうことをしたいが、どうしたらいいか?」と声を掛けて教えて貰い、カメラ店に勤めていた時もキャリアの上の同僚にどんどん訊いて覚えたと言う。「今思えば、自分でまずはやってみて、その上で訊いていたのがよかったのかもしれない」と気づきを口にする。原田さんにとってカメラは「コミュニケーションツール」。カメラを間に人と接することで自分の中で積み重なるものがあり、仕事へ繋がる機会にも自ずと出会っていったと言う。
 カメラ店を辞め、音楽ライブなどの撮影で経験を積んだ数年後にプロとしての独り立ちに踏み切っているが、その時背中を押したものは?という問いに原田さんはこう答える。
 「全く根拠はなかったけれど、自分に対しての自信があった。期待や希望があり、不安もないまぜになっていたが、多分55%位の自信があったのだと思う」
 カメラ店時代に撮った写真を「いいよね」と仲間達が評価してくれていたことが後押しとなり、自分は大丈夫という思いで前に進めたと言う。
 残り45%の不安はどう埋めていったのか?原田さんは、周りの人達が信じて仕事を振ってくれたことやきちんとダメ出しもしてくれたことでひとつひとつの不安が解消していったと振り返る。「宝もの」も、「カメラと人です」。

原田直樹さん “自信を深める”ために何をすればいいのかは藁をも掴むようでとても難しく感じてしまうが、原田さんの話そして、これまでの出演者達の話の中から、“自分を信じる”ためにすることは、案外シンプルで当たりのことなのだということが見えてくる。
 失敗してもいいから、まずやってみる。小さなことからでも始めてみる。それをとにかく続ける。自分から人に訊きに行く。掛けられた言葉を素直に受け止める。誉め言葉を信じる。それを力に変える。感謝を言葉にする。…
 並べてみると、「なあんだ、そんなこと」と思えるような数々だが、そこが実に難しい。案外「当たり前」のことが手強い壁だ。その壁を乗り越える“杖”が“自分を信じる気持ち。その“自信という杖”は、じっとしていても手に入らない。壁を乗り越えることで初めて手にすることが出来る「卵とニワトリ」のようなものだ。「行動と自信」は車の両輪が連動するように、同時に作られる。その歯車がかみ合うことで、昨日の自分が更新されて、今日の自分になり、さらに明日の自分が更新される。

 そんなことを考えていたちょうどその時、「自信をもてない人のための心理学」(フレデリック・ファンジェ著 高野優監訳 紀伊國屋書店)という本に出会った。それによると、自信をつけるために必要なのは「自己評価を上げる」「行動」「自己主張」という3つの要素。この三つは歯車のように噛み合って、プラスの方向に動いていくと、だんだん自信がついてくるが、逆にマイナスの方向に動いていくと、自信を失っていく…と書かれていた。
 マイナス方向に動いて益々自信を失う“悪いサイクル”を、プラスの方向に動くように転じてやって、自信がついてくる“良いサイクル”に変えていくことが大切で、「自己評価」を低め、「行動」を邪魔し、「自己主張」を抑制している“悪い思い込み”をなくすために、考え方の転換や心のトレーニングが有効なのだという。
 そうすることで、“根拠なく自分に自信をもてない”という悪循環から抜け出せる、と。
 「自信がついてくる“良いサイクル”に変えていく」という言葉がストンと胸に落ちた。「ほっかいどう元気びと」で掘り起こしたいのは、「あなたは、どうやって自分で自分の人生を“良いサイクル”にしていったのか」というヒントなのだ。どんな考え方で、どんな言葉で、どんな行動で。

 自分で自分を変えられた人は、明るい顔をしている。爽やかなエネルギーに満ちている。
 大変な時代と言われる時だからこそ、そこに気づくことは大切だ。

(インタビュー後記 村井裕子)

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