7月6日放送

 「人は、どうより良く自分で自分を変えられるのか?」
 最近、私の中で考えているテーマであり、ここのところよく夫婦の会話や友人、講座の仲間達ともそんな話題でブレーンストーミングをしている。
 人への向き合い方について、「人は変えられないので、自分を変えよう」という言い方がある。もっともだ。人は「こうしなさい」と言われれば言われるほど心の扉を閉じてしまうもの。こちら側の受け取り方や考え方を変える・・それしかない。しかし、例えば、人に対して支配的な人、怒りで人を押さえつけようとする人、悲観的すぎる人、問題を人のせいにすることで周りを遠ざけ、無意識で自分の心をも辛くしている人などは、どうやって気づきを得たらいいのだろう。
 「気質は変えられないが、性格は変えられる」という言葉もよく聞く。自分で自分を変える大きなヒントだ。もしも“短気”という気質を持っていても、自分でそれをコントロールし感情に振り回されないやり方は獲得できる。
 5/25のインタビュー後記で引用した心理学者のアドラーも、「“性格”という言い方を、“ライフスタイル”や“世界観”と変えることで、自分が選択して身につけてきたものを改めて選択し直せる」と言っている。それは、人に対して扉を開くことにもなるし、何より自分自身が「幸せな心で生きていく」ための大事な処方箋にもなる。
 人は、いつ、どこで、どうやって、自分自身をより良く変えていけるのだろう。

伊藤カズヒロさん 今回の「ほっかいどう元気びと」のゲストは、釧路の男性デュオ「ヒートボイス」の伊藤カズヒロさん 42歳。明るさの中にも目の前のことに真面目に取り組む熱心さが感じられ、その言葉のひとつひとつから「自分をより良く変えるために、“気づき”の感受性を高めてきた人」なのだという印象が伝わってくる。
 伊藤さんは、釧路の造園会社に勤めながら音楽への道を模索し、白糠町出身の目黒広幸さんとフォークデュオ「ヒートボイス」を結成して19年。釧路を拠点にデュオとしての活動に加え、地元のCMソングや小学校校歌、釧路市民憲章の歌に阿寒湖を世界自然遺産へ登録のための応援歌まで、地元の要請に応える形で数々の曲を発信してきた。
 最近では、釧路市阿寒町のイメージングとして作った「イランカラプテ~あなたの心に・・・~」が、「政府インターネットテレビ~イランカラプテ~」のテーマソングに採用になり、“釧路から世界へ発信”という夢に弾みをつけている。

伊藤カズヒロさん 伊藤さんがよく使う言葉は「縁した人達」。自分の人生は自分が主役だが、出会う人達を通りすがりのエキストラに終わらせないで自分のドラマの中に引き込んでいくことが大事。そのためには自分から声を掛けること。そんな沢山の人達との縁があって今の自分があると話す。相棒の目黒さんとの出会いや、数々の曲を引き受けることになった流れ、そもそも今の会社に勤めながら音楽活動を続けられる環境などすべて人の繋がりのお陰と言うが、「引き寄せ力」や「人の縁を繋ぐ力」というのもやはりその人の持つ「強み」に違いない。
 伊藤さんの中にそんな一生ものの“スイッチが設置”されたのは、本州の会社を3年で辞めることになった時。日頃可愛がってくれていた上司の言葉がきっかけだったと言う。その頃の伊藤さんは緊張の伴う仕事の日々でストレスも溜まり、父親の体調の悪さを地元に帰る理由にして会社を辞めることに。それまで息子のように面倒を見てくれていたその人が、釧路に戻ることに対してこう声を掛けてくれたのだそう。
 「帰るのもいい。しかし、今いる場所で人生に勝たなければどこへ行っても勝利できない。釧路に戻るのであれば、今度は腰を据えて“北海道の太陽”になりなさい」と。そして、別れ際に“伊藤君、北海道の太陽たれ”という色紙を贈ってくれたのだと言う。
 そこにいるだけで明るく周りを照らすような伊藤さんだが、その時までは、「けっこう後ろ向きな10代だった」と言う。きっとまだ自分の力をどう出していいか分からず、好きな音楽というツールはあっても迷いの中で足踏みをせざるを得ない悩み多き年頃だったのだろう。そんな伊藤さんの中にまだ日の出前の可能性を感じ、生命力を引き出す言葉をくれたその恩人の温かさ。同時に何らかのきっかけを待っていた伊藤さんの中の“気づきの種”が、絶妙のタイミングで化学変化を起こしたターニングポイントだったのだ。
 21歳で釧路にUターンしてきた伊藤さんが、音楽の道を諦めずに沢山の出会いから夢を叶えてきたのは、そんな人の縁に感動したことで自分を“開き”、開いたことで沢山のアンテナが磨かれ、大切な出会いをいい循環で引き寄せてきたのだと思う。

 人がより良く自分を変えるために、何が必要なのだろう?
 それはやはり「誰に出会うか」だ。より良い人に出会うためには、「予め自分が備えておく準備」も必要だし、出会った時に「それはどういうことかを熟考できるための準備」も欠かせない。考える力のために1冊でも多く本を読んでおくとか、人の話を聴けるように鍛えておくとか、面倒なことを厭わない気力・体力を付けておくことか。
 「人の縁」とよく言われるが、それを生かす自分をあらかじめ「耕して」おくこと。やはりそこに尽きるのだろうと思う。

 インタビューの直前、伊藤さんは思い出したかのように1冊のノートを取り出す。中にはびっしりとインタビューの想定問答のQ&A。こういう質問だったらこう答えよう、こうも訊かれるかもしれない、その時はこう答えようと書きとめた“自分を耕す”予習ノートだ。「収録とは言え、ひとつの問いにダラダラ答えてもいけないと思って」と、宿題をやってきた学生のように答える伊藤さん。自分と向き合い、問いかけ、言葉の発掘を厭わない人は、すでに自分の引き出しに表現は保管されている。収録は、ノートに一度も目を落とすことなく言葉が次々に溢れていた。
 そして、終了後。
 「今回『ほっかいどう元気びと』で自分に向き合ったことで、ここのところの忙しさで忘れそうになっていた“誰のために音楽をやっているのか”という大切なことを思い出すことが出来、初心に戻ってまた頑張れそうです」と一言。スタッフ一同、番組に関わる者としての醍醐味をまたひとつ味わわせていただき、皆で充実感を覚えたひとときだった。

 自分をより良く変えられる人は、“気づける人”。
 気づけば、さらにどんどんより良く変える方法が見えてくる。
 その“スイッチの設置”は、出来れば若いうちがいい。
 誰と出会うか、その出会いをどう生かすか、そのために、どう自分を耕すか・・・
 しかし、人は可能性の宝庫。いくつであろうが、遅すぎるということはけっして無い。

(インタビュー後記 村井裕子)

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