3月16日放送

武良千春さん 今回の「ほっかいどう元気びと」は、留萌市の「三省堂書店を応援し隊」代表の武良千春さん 52歳。
 市から書店を無くしたくないとの一心で武良さんを始めとする主婦仲間達が「三省堂書店を留萌に呼び隊」を結成したのが今から3年前の2011年4月。行政の書店誘致をバックアップするために多くの市民の意識を掘り起こし、3ヶ月後の7月に晴れて出店を呼び寄せたその時の思い、そしてその後の取り組みを訊いた。
 いわゆる「市民活動」の成果が地域の再生に繋がった成功例だが、武良さん達が街づくりに関して声を上げ動いたのは今回が初めてとのこと。それまであった市内の唯一の書店が閉店してしまうというごく身近な出来事がきっかけだっただけに、「それは困る・・どうしたらいいだろう?・・どうにかしなくてはいけない」という当事者意識が自然に高まっていったのだという。まずは身近な主婦仲間に、そして、本のことならと図書館長へ相談し、同じように不安に思っていた人達へと繋がって「三省堂書店を留萌に呼び隊」を結成。知恵を絞ってアイディアを出し合い、出店後にポイントカード会員に繋がるような隊員募集の署名を集めて市民をも巻き込んでいく。
 人口2万3千人あまりの小都市に大手書店が出店するなど前例の無いことだったそうだが、2500人の署名人数を集めた「呼び隊」の熱意、官民あげての誘致活動が功を奏して、我が街の書店の灯を消さないという目標を達成した。
 そして、「呼び隊」は誘致が成功して終わりではなく、「三省堂書店を応援し隊」に名称を変え、それ以降も武良さん達主婦グループは書店の存続のために様々なアイディアを出し、病院などへの出張販売を手伝ったり、本の読み聞かせ会を開いたりして本の魅力を伝える活動を地道に続けているという。

 「市民の力」。旗を振っただけの一過性で終わらせないために大事なのは、やはり継続していくということだ。武良さん達は組織を必要以上に大きくしないためにスタート時のコアメンバーを基本とし、それでいて活動の仕方は柔軟に形を変え、「今出来ることは何か?」を引き出しあいながら自分たちが出来る範囲で関わっているそう。
 当初のベクトルをぶれさせずに、知恵を出し続けていくということ、そして、何より「楽しく関わりたい」という思いが市民パワーを形あるものにしていく秘訣なのだということが、武良さんの生き生きとした話しぶりから伝わってきた。

武良千春さん 武良さんはもともとそれほど本好きではなかったそうだが、「市から本屋が無くなる」という事態に向き合って、改めて本が身近にある大切さに気づいたのだと話す。
 「武良さんにとっての宝ものは?」という問いかけで出てきたキーワードは、「想像する喜び」ということ。
 「私の中にはクリエイトするほうの“創造する”という才能は残念ながら無いけれど、イメージするほうの“想像する”ことはいくらでも楽しめるから」と話し、作家は頭の中のイマジネーションを伝えるために文字を繋げ、組み合わせて世界を創る。その才能は本当に素晴らしいと思う。そんな本に出会うたびに凄いと思うし、ありがとうと思う。その感動に出会うために本を手に取るのだと、本に対する思いを語ってくれた。
 そして、「手にとって、紙を触り、表紙や帯や挿絵に実際に触れることも宝ものなのだと思います」と本屋が身近にある大事さも。

 武良さん達市民の活動が守ったものは、地域経済ということ以上に、本があることで豊かになる「地方の文化」だ。そして何より「人が本から得られる沢山の恩恵」。それにより育まれる大切な感受性を守ったのだと思う。
 探している本をネットで検索し注文することと、ぶらりと書店を歩きながら「ライブラリー・エンジェル」という名の“本の天使”が囁きかけてくれる1冊の本との偶然の出逢いをも楽しむこととは、全く違う次元の営みだ。その「違う」という感覚すら、書店が消えてしまえば失ってしまうのだ。

 目に見えない大事なものを守るということ。それは、やはり、日々生活をしている一市民の“センサー”が欠かせない。
 大事なものを見落とさない街づくりのために声を上げていくということの大切さ。
 「人にとって、地域にとって、ほんとうに大事なものは“お任せ”にはしない、黙ってはいない」という姿勢は、きっとこれから益々必要になってくる。
 私たち一市民として、一生活者として、すでに、その“センサー”が問われる時代に来ているのではないかと思う。 

(インタビュー後記 村井裕子)

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