2月2日放送

 ものの考え方について書かれた本を読んでいたある時のこと。自分の心のコントロールの仕方について、なるほどと腑に落ちたことがある。
 ウエイン・W・ダイアーの言葉だったと思う。怒りを生まないものの考え方は、「変えられないものにうんざりしない」ということ。例えば、雨降りとか交通渋滞とか。自分がどんなに頑張っても変えられないものには腹を立てないこと。物事をマイナスにするのもプラスにするのも自分の受け取り次第なのだ、と。
 「変えられないもの」、それは他人もそうである。イライラしてしまうのは「この人が私の思うように振る舞えさえすれば、私は怒らなくても済むのに」と考えてしまうから。「人は人。この人にもそう振る舞う権利があるのだ」と考え方を変えれば怒りで自分を痛めつけることも無くなる、と。
 ここ数年、「認知行動療法」という言葉が聞かれるようになり考え方のヒントとして触れる機会も増えてきたが、なるほど、そういった心の持って行き方というのは「認知行動療法」のひとつなのだと今気づかされる。

太田慈春さん 今回の「ほっかいどう元気びと」は、臨床心理士で、札幌市内に「カウンセリングスペースこころsofa」を開設する太田滋春さん 37歳。北海道医療大学、大学院で学び、病院の勤務やスクールカウンセラーを経験する中で、辛い思いを抱えた人にはなるべく早い段階で対処することが望ましいと確信し、気軽に足を運んでもらえる場としてカウンセリングスペースを立ち上げたと話す。
 専門が「認知行動療法」。うつや不安、ストレスなど様々な問題の陰には、その人の「考え方の癖」が影響を及ぼしていることも多い。カウンセリングをすることでその傾向に気づいて貰い、どういう考え方に変え、どういう行動をしていけばいい方向に向かうかを共に考えていく方法だと言う。
 人は、案外自分のことをわかっているようでわかっていない。無意識でどんどん凝り固まった考え方になることもある。認知行動療法は、「“○○すべき”“○○に違いない“だけではない他の考え方もあるのだ」といった、実はごく当たり前のことを気づかせるアプローチなのだが、「考え方の癖」が強くなり過ぎると当たり前のことも当たり前に出来なくなりひとりでは動けない状態に陥ってしまう。そうならないように自分の考え方や行動をもうひとりの自分が見つめ客観視出来るように導いていくのがこの療法なのだと太田さんは話す。

太田慈春さん 「カウンセリングスペースこころsofa」のイメージキャラクターはパンダにしているという太田さん、ご自身もまさに癒し系パンダの雰囲気。「ゆるい」感じを醸し出すことで、「この人になら話してもいいな」と思って貰える存在でいたいとのこと。十代の頃から「援助職に就きたい」と思っていたそうだから、根っからのサポーターなのだろう。
 「あなたの宝ものは何ですか?」の即答は、「1歳半の娘」。昨日出来なかったことが今日出来るようになるのを見ているのが嬉しいと満面の笑顔で話す。
 人の辛さに向き合う日々でストレスはたまりませんか?と訊くと、「どうやったら良くなるかを一緒に考えるのがこの仕事。最初は“生きるのが辛い”と苦しんでいた人が徐々に変わっていって、“生きるのもいいものですね”とより良く変化することにも立ち会える。そんな風に目の前で人が変わっていくのを見ることが嬉しい」と太田さん。関わる人が元気になることがもうひとつの宝ものかなと、話しながら気づいて付け加える。
 娘さんに対しても、悩んでいる人に対しても、その「より良い変化に寄り添える喜び」というところが共通なんですねと伝えると、さらに深い気づきをこう語る。
 「人はより良く変われる。その変わるチャンスに出会えなくて人生が真っ暗と感じている人に、より多くの出会いを通して元気になって欲しい。辛い状況でもなぜか生き生き楽しそうな人は、“何かと出会っている人”だと思うから」
 ちょっとした考え方の修正で“何かと出会う”チャンスも無限に広がるのだ。それは、人だったり、考え方だったり、書物だったり、言葉だったりする。あらゆる変化のためのきっかけへの出会いだ。
 自分の思いに凝り固まっているということは、いわば心のシャッターが降りているということ。違った視点を取り入れることで、初めてそのシャッターは開く。“閉じている人”には出会いも限られるが、“開いている人”には無数の出会いのチャンスもあり、そこから可能性も広がっていく。

 「頑張る時も大事だが、緩めることもとても大事。そのバランスが必要」と、“ゆるさ”が生き方のコツと話すカウンセラー太田さんの話を聞いていて、改めて感じた。「頭ではわかっているけど、なかなかそう出来ない状態が続くと辛くなる」ということ。当たり前のことが実は最も難しい。
 この厳寒期、体がこわばる時期は心も緊張しがち。太田さんのオススメは“背中を温めること”。「“手あて”と言って、お母さんや先生が背中に手を当ててくれるとほっとしたでしょ?背中にぬくもりが大事なんです」との言葉にいたく納得。
 まだまだ氷点下の続く北海道、背中にカイロでも入れて心の温度を高くしながら春を待とう。今時期の座右の銘は、そう、「節分過ぎれば陽が昇る」・・・

(インタビュー後記 村井裕子)

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