1月19日放送

斎藤美智子さん 自分の人生は、自分でしっかり考えて自分で選ぶ。どんな働き方をするか、どこで暮らすか、そして誰をパートナーにして生きるか。
 そう、誰と結婚するか或いはしないかも個人個人の権利。人に言われてするものではない。だから、今のこの時代で「結婚」を仲立ちする仕事というのは、とってもデリケートなものなのではないだろうか。
 今回の「ほっかいどう元気びと」は、そんな人と人のご縁を繋ぐ「結婚相談所」を55歳という年齢でスタートさせたという、札幌の「株式会社 オフィス・アン」の代表 斎藤美智子さん、69歳。
 ひところずいぶん話題になった親同士のお見合いという奇想天外な企画も、全国に先駆けて最初に始めた人でもある。
斎藤美智子さん 「親同士のお見合いイベントに対して、“ほっといて欲しい”という子どももいるのでは?」と率直な疑問を投げかけると、当然余計なお世話と思う子世代もいるが、独身の子を持つ親同士が交流することで同じ悩みや心配を分かち合えてほっとしたという親もいて、そんな人たちの気持ちの支えにもなればと斎藤さんは話す。
 そして、「もちろん、今は親が結婚に介入する時代ではなく、自分で結婚しないと決めてバリバリ働くという選択をしている人たちもいる。そういう人たちの選択を尊重することも大事。しかし、結婚したいと思っていてもなかなかうまくいかないという人たちも多い。そんな“結婚に対して困っている人たち”に様々なきっかけ作りをしてあげたい」と力を込めて言う。
 “おせっかいなおばちゃん”が「何か出来ることはない?」と世話をする感覚なんですと笑い、だからこそ、「結婚相談所」よりも敷居を低くしてもっと出会いのサポートをしてあげられるようにとNPO法人も2013年から立ち上げたと語る。NPO法人「全国結婚・家庭未来塾(結ネット)」。地域のサポーターとしての“仲人おじさん、おばさん”の養成に今後力を入れて、結婚に踏み出せないでいる男女の背中を押してあげる役割のシニアを増やしていく計画なのだという話をしてくれた。

 “おせっかいなおばちゃん、おじちゃん”は、確かに昭和の時代にはご近所に必ずいて、どこそこの娘さんが年頃だとか誰それのお兄ちゃんが成人になりお嫁さんを探しているとか、上手に人の縁を繋いでいたものだが、血縁への意識が変化し価値観も多様化の時代にあっては、旧来型の“おせっかい”は実際疎まれることも多いだろう。“プライバシー重視”という時代の流れも、人に関わっていく際の大きな壁だ。
 あえて、それをも乗り越えて「仕事」として取り組むという斎藤さんの背景には何があるのか。お話を伺うと、ご自身の闘病の体験の中からの思いだったことが伝わってくる。これまで何度となく癌の病にかかり、57歳の時の肝臓癌の際には余命1年ほどという確率が高いケースと宣告された経験も持つ斎藤さん。生かされた命なら人が幸せになることに使いたい、人と人を結ぶのは私の「天命」と朗らかに言う。「結婚相談」という決してたやすくない仕事の原動力はそこにある、と。
 そして、とにかく、会って話してみると、根っから人が好きな“おばちゃん”の温かさに溢れている。入院時、闘病生活の果てに独りで亡くなった同室の女性との出会いから、人には寄り添う人が必要なのではないかと思い立ち「結婚相談所」をスタートさせたというエピソードも、人が困っているのを見逃せないというお人柄のなせる技なのだろう。

 私自身は、時代背景として「女は仕事より結婚」「女の幸せは夫と子供に尽くすこと」「学問を付けすぎると女はイキオクレル」という風潮がまだ“尻尾のように”残っていた頃(多分、時代の変わる転換期だった)に育った反動で、「価値観はひとつではない。幸せも人に決められるものではない!」といった抗いが根強く養われた世代のひとりなのだが、斎藤さんと話をしてみて、今の時代、人権を尊重する意識の一方で人への介入全般が減り、ほんとうに困っている人たちが受けたい“必要なおせっかい”も享受されなくなった時代でもあるのかもしれないと、この平成の世に人が縁を結ぶ難しさを改めて感じた対話だった。

 斎藤さんは、「何か私に出来ることはない?」という気持ちはいつの時代でも無くしたくないと言う。
 「“おせっかい”をすると疎まれることもある時代だけど、シニアはそこから逃げちゃダメ。若者たちにエールを送り続けなくちゃ。それは、次のいい時代を作るためでもあるのだから」と、シニア世代の新たな役割の掘り起こしがもうひとつの原動力なのだということが伝わってきた。

 自分の人生は自分で決める。自分の幸せは誰かに作って貰うものではなく自分で作る。その形は様々あっていい。それを認め合うのが成熟した社会だろう。
 でも、どんなに時代が変わっても、人と人が支え合うことは人が人と生きる基本だ。時には距離をグンと縮めて世話を焼いたり焼かれたりすることで新たな絆も作られていく。
 人情のさじ加減の難しい時代、結婚のより難しい時代に、“より良いおせっかい”には知恵とセンスが求められていくのだろう。
 斎藤さんの発した一言にもそのヒントはあった。
 「相手のことを気遣うその気持ちが本気ならば、必ず思いは相手に伝わる」
 それこそ、どんなに時代が変わっても変わらない、人としての大切な法則だ。

(インタビュー後記 村井裕子)

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