1月12日放送

 「2014年の今年はどういう年にしようか?」「どんな目標を立てようか?」
 これを読んでくださっている皆さんも、年の初めに自分自身にそんな問いを立てたのではないだろうか?
 相手により良い質問を投げかけることも、自分自身に問いかける自問自答も、気づきを促して前に進むための大事なやりとり。自分、他者、どちらに対しても「問いかけ」の達人になっていくことは、自分を知り、相手を活かす魔法の杖だ。
 私は「話し方講座」をここ10年ほど続けているが、コミュニケーションスキルに関して10年前よりも重きを置いているのが、「聴く」ことと「訊く」こと。つまり、「人の話を良く聴いて」「質問する」ことの大切さである。
 「質問」には2つの種類がある。ひとつは「自分が知りたい」質問。「あなたの出身地はどこですか?」など、自分の興味や納得のために相手に投げかけるもの。いわば自分軸の質問。そしてもうひとつは「相手の気づきを促し、力を引き出す」質問。例えば、「なぜその仕事を選んだのですか?」という問いかけは、訊かれた相手が深く“考え”なければ答えられない。相手軸の側に立って、潜在意識から思いと力を引き出す質問だ。
 当然ながら、コミュニケーションで大切なのは後者の意識。人は自分の話をちゃんと聴いてくれて、「あなたはどう思いますか?どうしたいのですか?」と自分に関心を寄せてくれた人のことを信頼するからだ。それが意識出来ていれば、自分がうまく話せるだろうかとか、初対面の人に何を話せばいいのか・・などと余計な心配は無用。センスのいい「問いかけ」を磨いていくことで、会話は深まり、人をさらに活かすことにも繋がる。

炭谷貴博さん 実は、この「問いかけ」上手な人は、案外いろんな分野のいろんな場所にいて、多くの人を活かしている。「ほっかいどう元気びと」で、様々な出会いの刺激によって自分の道を切り開いてきた方々にお話を伺う中で改めて気づかされる。
 今回の元気びと、南宗谷消防組合中頓別支署の救急救命士 炭谷貴博さんもそんな出会いの宝ものを自分自身に最大限活かしてきた人だ。
 炭谷さんは、人の体の仕組みなどをわかりやすく解説した本「超カンタン!解剖生理」(東京法令出版)の著者だが、中頓別で救急救命士の仕事をしながらそのような本を出すきっかけになったのが、監修をしてくれた国立病院機構旭川医療センターの医師 玉川進さんとの出会いだったと言う。
 炭谷さん曰く、「玉川先生は、自分が気づいていないところを見てくれて、わかってくれて、いろいろなことをやってみないかと声をかけてくれる人。本当にこの人に会えて今の自分がある。折に触れていろいろなことを問いかけてくれて、自分のまだ見ぬ可能性を引き出してくれた」。
炭谷貴博さん 救急救命士資格取得の際、医療に関して全くの素人だった炭谷さんにとって難しかったのは解剖生理学。親睦会の席だったそうだが、「難しかったところはどういうところだったの?」と玉川医師に質問されて、複雑な医療用語の暗記が大変だったと炭谷さん。
 「どうやって覚えたの?」と訊かれて、文章を暗記するだけでは頭に入らないので、図やイラストを使って“人の体をイメージする方法”ですと答え、オリジナルの勉強法を語っているうちに、「じゃあ、それを本に書いてみようか!」とあれよあれよと引き出され、これから救急救命士を目指す人たちに活用して貰えるような本を書くことになったのだそうだ。
 完成させるまでに3年もの歳月を費やしたと言うが、自分では大の苦手だと思っていた“書くこと”がいつのまにか好きになっていたそう。
 「やってみないと、自分は何が出来るかわからないものなんですね」と炭谷さんは言い、今度はいただいたものを次の人たちに返していきたいと力を込める。

 「問いかけ名人」はいろいろなところで、これからという人たちの力を引き出しているのだ。“ネイティブコーチ(native coach)”は、いたるところで人の可能性を発掘し、活かしている。
 炭谷さんの救急救命士という仕事は、最初はなりたくてなったものではなかったそうだ。ただ、受けてみないかと背中を押されてその学びの世界へ踏み出してみると、世の中には一生懸命に何かに取り組んでいる人たちがいるということに気づく。そういう人たちに出会って、自分の中にも出来ることがあるのだと気づかされたことがほんとうに有難かったと、踏み出せた最初の一歩を嬉しそうに振り返る。

 人は、それぞれの「螺旋階段」を昇っていく。
 そして、そこに欠かせないのが“人”の関わりだ。出くわし、すれ違い、引き出し合いながらともに昇って行く。
 私は、2014年の今年は、その「自分の螺旋階段」を昇ろうとしている人たちとどれだけ出会えるだろう。どれだけ、その背中を支えることが出来るだろう。
 「あなたはどこに向かっているのか」「何を目指しているのか」「そもそもなぜ昇るのか」・・そう問いかけることで、引き出すことで、言葉と言葉の受け渡しによる素敵な化学反応をもっともっと起こしていきたい。
 私は、私自身の「螺旋階段」を昇りながら。

(インタビュー後記 村井裕子)

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