6月23日放送

 毎週日曜にお送りしている「ほっかいどう元気びと」、10代から80代まで様々な年代の方に出ていただいているが、私より年下の方ならその頃には自分もこうだった、そういう視点もあったのかなどと振り返る楽しさがあるし(最近は気づくと自分が年上パターンも多く、その事実に改めてびっくりすることがあるが)、年上の方ならその先の世界はそう見えるのかと、未来を想像する楽しさがある。

黒田仁智さん 今回のゲストはNPO法人「サッポロ・ミツバチ・プロジェクト」代表の黒田仁智(やすとも)さん。年齢50歳。節目として感慨深いものがある「ちょうど半世紀の人」だ。
 黒田さんは、レコード会社でプロモーターとして活動するなど音楽の仕事が本業だったが、2010年から札幌市内のビルの屋上にミツバチの巣箱を設置し採蜜をする養蜂をスタートさせ、思いを共有する仲間たちとこれまでに例のない全く新しい活動を続けている。
 きっかけは、札幌都心の環境への関心。札幌中心部のカラス対策を考えているうちに、蜂がいいらしいということを知り、そこから札幌の街の緑が意外に少ないことを知り、環境への意識が高まって都心部の環境対策へと方針が変わっていったとのこと。お手本は、銀座の真ん中で行っている「NPO法人銀座ミツバチプロジェクト」だったという。
 「まったく新しい仕事への転換とは考えていない。植物から蜜を吸い上げるミツバチはその土地がどういう環境なのかを教えてくれる大切な存在。それを世間に伝える自分の仕事はやはりプロモーターと思っているので」と黒田さん。
 ミュージシャンがアーティストなら、蜂もまたアーティストなのだという表現に、なるほどと頷く。

黒田仁智さん 黒田さんたちの思いはこうだ。
 札幌の都心で採れたハチミツを販売したりイベントで提供したりすることで、手にした人たちは「札幌でもハチミツが採れるの?」と興味を持つ。食卓でパンなどにそれを塗りながら「その蜂はどこにいるのだろう?どうやって?どんなふうに採るのだろう?」とさらに関心が増し、「じゃあ、どんな花から?私たちが見ているあの北1条のニセアカシアからも採れるのかしら?」「その植物、緑はちゃんと残っているの?」と、市民が自分の住む札幌をどうしていきたいのかという発想につなげるのが「ほんとうに伝えたいところ」。

 なるほど、プロモーターだ。自然環境を守る意識と方法を広く伝えていく役割。

 全く新しい仕事に対して気持ちを切り換え、実行に移していくのはかなりのエネルギーを使うものだ。若い時の体力が失われる中でどう知恵と工夫を働かせて気力を溢れさせるか。その意識いかんで後半進んで行く道は大きく2つに別れていく。
 人生折り返しを過ぎてもいきいきと、機嫌良く、フットワーク軽やかに活動していけるか、もういいやとあらゆることをあきらめて不満顔のまま生きていくか。どっちに自分を進ませるのか。
 あの101歳の日野原重明さんは、「自分の運命は自分でデザインする」ことで自身の「ミッション=使命」を果たしていくことができると表現し、充実した心で生きて行くコツを具体的に発信し続けている。

 人それぞれが自分で見つけた「エネルギーを枯渇させないオリジナルの考え方や方法」は、とても大事だ。
 ちょうど50歳の黒田さんは、意欲をどうやって湧かせているのか?「宝ものはなんですか?」の問いで訊いてみた。
 黒田さんは「小中学生だった頃に読んで感動した本を定期的に読み返すことをしている」そうだ。黒田さんにとっての「宝もの」である「この星、地球」の神秘を知り、まだまだ埋まっている何かを掘り出していきたいという話の中から出てきた「感受性を摩耗させない」ための取り組みだ。
 「かつての感動を何度も掘り起こして、その時の自分と向き合うこと」。
 そうすることで、「ちょっとだけいい感じになる」のだと。

 「これが自分の原点だとふと思い出すのがいいのだと思います」という言葉を聴いていて、これまで出てくださった100人以上の「元気びと」の沢山の言葉が共通キーワードとして頭の中に降ってきた。
 「心を柔軟にし、いい状態の自分を自分で作り出し、何より『感じる心』を見失わないように努力する姿勢」を皆さんお持ちだった。
 自分の原点「自分は何をしたかったのか?」を思い出しながら、年齢と共に両手からこぼれ落ちそうになるものを拾い直し、修復し、そして尚も感受性を高めていく。その志と取り組みが人を引き寄せ、パワーとなり、形になっていなかったものがひとつひとつ始まっていくのかもしれない。

 黒田さんの言う「この星、地球にはまだまだ沢山の神秘が埋まっている」は、「それと繋がる人そのものの中にもまだまだ沢山の力が埋まっている」とも言えだろう。
 スコップを持って、その「トレジャー」を掘り起こしに行こう。

(インタビュー後記 村井裕子)

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