6月9日放送

阿部晋也さん 「人との出会いが楽しくなる名刺を作ります」
 この人の名刺には、「ホノルルマラソン挑戦予定」というプロフィールなどとともに、そんな目を引くキャッチフレーズが印刷されている。
 バナナの茎から作ったエコ名刺などを世に広めてきた札幌の丸吉日新堂印刷株式会社の代表取締役、阿部晋也さん。せっかく仕事をするなら多くの人の幸せに繋がることをしたいと、「バナナペーパー・プロジェクト」を立ち上げて環境保全や途上国の経済的自立支援までをも視野に入れた活動を続けている。
 バナナペーパーの活用でアフリカなど貧困が問題となっている国に雇用を作り出し、ただ与えるというだけの支援ではない自立を促す取り組み。最近よく聞かれるようになった「フェアトレード」、途上国の農産物や雑貨などを適正に消費することで雇用を作り出し、経済的自立を促すという関わり方だ。
 パソコンの導入で印刷業がしのぎを削り生き残りを模索する中、他があまりやりたがらない名刺に特化したのが始まりだったという若き二代目社長の阿部さん。ペットボトルの再生利用で名刺を作って欲しいというメーカーからの依頼が発端となり、環境問題を意識した「エコ名刺」へ移行していったという。
阿部晋也さん バナナの茎が紙になることを講演で知り、HPで探し当てたスエーデン出身の環境問題コンサルタントに会いに行ってからの阿部さんの行動は、まさに夢を現実にして行く人のエネルギーに満ち溢れている。
 自分が支援しているザンビアではその土地の人たちが従事出来る仕事が無い。バナナペーパーで雇用を生み出したいがやってくれないだろうか?と問いかけられて、「やってみます!」と即答したという阿部さん。何の根拠も無いのに言っちゃったんです・・・と、ここにも「言霊(ことだま)」で夢を叶える元気びとがいる。
 「言っちゃったら、あとはやるしかない」
 バナナペーパーが印刷紙として使えるように試作を重ね、現地の労働環境や雇用契約など働く人のためのルールを作り、実際に足も運びながらひとつひとつ現実に結びつけていったという。
 そこにどんな阿部さんの思いが込められているのかを訊いてみると、阿部さんは好きな言葉をあげてくれた。
 「善の循環」。
 まさに「人の出会いが楽しくなる」その元にあるものだと深く共感。
 私は、こんなふうに真っ直ぐに「善」の大切さを話す人と出逢うと、この世の中はやっぱり素敵だと思ってしまう。心の湖から綺麗な水を柄杓で丁寧に汲み出すような凛とした表現。世間ではちょっと揶揄されてしまいがちな言葉をてらいもなく取り出せる姿勢はやはり忘れてはならないものだ。

 良き人と出逢い、善を循環させることで、偶然の出会いを必然に変えてきた阿部さん。
 ニコニコと話される笑顔からは全く想像がつかないが、ずっと自分は人と接するのが苦手だった、30歳頃まで人が怖かったと意外なことを言う。
 大学卒業後に入社した本州の会社での体験。営業のカリスマと言われる上役の部下に対するあまりにも理不尽な接し方に失望し、「ここにいたら10年後の自分が描けない」と5ヶ月で辞めたことも「人が怖いコンプレックス」として引きずっていたと。
 「その怖さをどう克服したのですか?」との問いに「尊敬できる多くの人たちとの出逢いによって、自分が変わってきたんです」と阿部さんは言う。
 常に目標を追いかけることで輝いている人は、人に勇気を与える。困難や壁を乗り越えて来た人ほど、その人生のストーリーは人によい影響を与えるものになる。自分もそういう生き方をしていこうと思ったのだ、と。

 何かを成し遂げようとしてきた人の「人生のストーリー」に触れることで、人はより良い影響を受ける。
 いい人生の循環。
 そう言えば…私はここのところとても元気で、いろいろなことも勿論あるが気持ちがどんどん前向きになっていく。毎週毎週、おひとりおひとりの「元気びと」のストーリーに触れているからだ、とふと思う。
 何と贅沢なことだろう。これまで115人の、115種類の「前に進むストーリー」を一番先に聴かせていただく幸せ。
 「常に目標を追いかけることで輝いている人」「困難や壁を乗り越えて来た人」の言葉。その「言霊」の循環は確かにあると、私は実感する。

 そして、さらに良き循環に繋げていくために出来ることがある。
 それは、番組を聴いているみなさんとそれを共有すること。
 この文章を読んでくださる方々と深く心を繋げていくこと。
 個々が汲み上げた水は、触れ合い繋がる誰かの心を潤すものになっていくだろう。

(インタビュー後記 村井裕子)

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