3月10日放送

定池祐季さん 2011年3月11日の東日本大震災から丸2年を迎える10日放送の「ほっかいどう元気びと」、是非ともお話を聞きたかった北海道大学大学院 理学研究院付属 地震火山研究観測センター助教の定池祐季さんをスタジオにお迎えした。
 奥尻で北海道南西沖地震に遭遇したことをきっかけに、災害と人・社会の研究を志し、阪神淡路大震災のその後の研究を経て、今、東日本大震災で被災した多くの人たちの為に活動しているという定池さん。インタビュー後の番組締めくくりコメントで私はこんな実感を言葉にした。
 「『人の使命』というのは、困難な出来事からも見つけ出すことが出来、人は『役割感』という原動力で前に進むことができるのだ・・・」と。

定池祐季さん 33歳の定池さんの来た道は、何かこの人が社会に大きく関わる為にひとつひとつが決められていたのではないかと思う位、何らかの符合を感じずにはいられない。
 20年前の中学2年の時の奥尻の地震と津波は定池さんの今にどういう影響を与えたかの問いに対し、定池さんは淡々としかしリアリティ溢れる言葉で紐解いていく。
 地震・津波の恐ろしさということ以上に、そういうことによって町が破壊され、残った人達の苦労は一瞬ではなく何年も続いていくという現実を目の当たりにして、災害とはいったいどういうものなのか、それを知りたいと思ったのが今の仕事を目指すそもそものきっかけだったという。何より、大事な人を亡くし、もっと出来ることがあったのではと悔やみ続ける人達に向き合っているうちに、なんとか立ち直るお手伝いをしていきたい、災害に見舞われてもその被害を少しでも減らしていく方法を生み出していかなければと思った、と。

 そうして、災害復興について大学院で学んだ後、阪神淡路大震災の被災地である神戸市の「人と防災未来センター」に研究員として2011年3月まで勤務。4月から北大の現職に赴任することが決まっているその流れの中で3月11日を迎える。
 「3.11、その日はどこで何をしていましたか?」
 定池さんは、ちょうどその時間、神戸市で開かれた「東南海南海地震・津波に備えるためのシンポジウム」に出ていたのだそうだ。今となれば皮肉な話かもしれないが、と定池さんは話す。
 広域で巨大地震・巨大津波が起こった場合、予想される被害は甚大。広域エリアで被災することで救援物資が届きにくく、サポートを得られにくいという話をまさにしている時だったそうだ。皮肉な現実に研究者達は皆無力感に苛まれたそうだ。今まさに津波が襲っている瞬間、自分達は何も出来ないではないか、と。
 襲いかかる無力感と闘いつつも、今出来ることをしなくてはと奮い立たせる気持のせめぎ合いの日々の中、すでに北海道への赴任が決まっていた定池さんも、東日本大震災の被災者の為の活動をする為にこのまま神戸で研究を続けるべきかと心は揺れたそうだが、培ったことを北海道で生かしていこうと決意し来道したという。
 奥尻での体験に加えて、どう災害に人と社会は向き合っていったらいいのかという専門を生かした発信は定池さんならではのもの。震災後からメディア出演や新たなリサーチのために東奔西走する日々が続き、このインタビュー後も東北被災地での講演のためにすぐに千歳へ向かっていった。

 『人の使命』というのは、困難な出来事からも、いや、それだからこそ見つけ出すことが出来、人は『役割感』という原動力で前に進むことが出来る。
 定池さんを見ていて、心底そう思う。そして、土地もまたそうであってほしいと願う。
 定池さんのお話の中から「奥尻の経験や取り組みは、今東日本大震災の復旧・復興に大変役立っている」という言葉が何度も繰り返された。奥尻が体験した地震と津波は心痛極まりないものだったに違いないが、その体験からの歩みが、今東日本大震災の復興の為に役立っているという事実。何かとても救われるような気がすると同時に、人も土地もどんな困難な目にあっても、そこからまた歩き出し、そしてそれ以上に「役割」を果たすことが出来るのだという事実が、かすかに光る希望のように胸に響いた。

 よく、「試練は、乗り越えられる人にしか訪れない」と言われる。孟子の言葉だそうだ。
 私は東日本大震災から2年が経って、「あの大きな震災は、東北という土地が引き受けてくれたのだ」と思わずにはいられない。あの東北という地、そしてそこに住む人達が、私達の代わりにあんな大きな試練を引き受けてくれたのだ、と。東北は、そういう逆境に幾度も立たされ、そして乗り越えてきた土地だ。乗り越える毎にどんどん深みを増してゆく。
 あの地に生まれ、そして遠く離れて暮らす私には何が出来るだろう。無力感に苛まれるばかりだが、私自身も信じてやまないあの東北の精神性を伝えていくことも、「役割」なのではないかと思っている。
 宗教学者で岩手県花巻市出身の山折哲雄さんが「デクノボーになりたい 私の宮沢賢治」(小学館)の中で、岩手の精神性をこんなふうに表している。
 「新渡戸稲造の侍の精神、石川啄木の反逆の叙情、そして宮沢賢治の宇宙感覚、この三つがそろうとき、「東北」という風土が持つ活力が背後からせりあがってくるような気がします」と。
 敗者や弱者を思いやる「惻隠の情」を大事にする侍精神、「反逆」から生まれ出るエネルギーと感受性、そして、宇宙と繋がる意識により育まれた深い精神の柱。
 「東北」という風土が持つ活力。そのひとつひとつを紐解き、現代に生きる私達にこそ必要な生きるヒントを紐解いていきたい。
 2年という歳月の中で、東北という土地の、そしてそこに暮らす人達の痛みを忘れないという思いを新たにしながら。

(インタビュー後記 村井裕子)

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