1月27日放送

 私は自分の人生で何をしていきたいのか。新しい年に自分の「棚卸し」をしてみた。
 なぜ、仕事をしているのだろう?
 なぜ、思いを発信しているのだろう?
 なぜ、人と関わっていきたいのだろう?
問いを立てて出てきた思いが、つまるところ「世の中を明るい気持ちするために役立ちたい」ということだった。
 講座を各地で続けているのも、考え方や言葉ひとつで気持ちも行動も変わるということを伝えたいから。自分自身の意識次第で潜在力が引き出され、未来の可能性が広がっていくということを多くの人と共有したいという思いが太い根っこになっている。
 そして、この「ほっかいどう元気びと」こそ、そんな内にある可能性に目覚め自分の決めた道を切り開いている人たちに体験に基づいた気づきを話していただき、聴いてくださる方々の中にもより良い「化学反応」が起こって欲しいと願いながら向き合い続けている。

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と言ったのは宮沢賢治だが、世界を今すぐ幸福にすることは難しくとも、関わる人の「気持ち」を幸福にしていくことは出来るかもしれない。そんな共感を広げていけば、必ず「世界全体」も変わっていく。そのために何が出来るだろうと、考えているだけで力が漲ってくる。

猪熊梨恵さん 今回のゲスト、「札幌オオドオリ大学」の27歳の学長である猪熊梨恵さんと話していて、年齢には30歳近くの開きがあるが、同じような「未来」を見つめているのかもしれないと感じ、とても嬉しくなった。
 「札幌オオドオリ大学」が目指すものは、街の中確かに息づいているけれど、まだ表に出てきていない魅力ある潜在力を掘り起こす場・・・そんな風に私は受け取った。
 街に暮らす人々が、仕事や家庭という日常の場ではなく、猪熊さんが表現するように「素の自分になれる場」で、互いに違う価値観や発想に触れて魅力を共に引き出しあう場。
 柔軟な視点を鍛え触発しあうことで、それぞれが自分のいる場所でなすべきことが見えてくる。地域にそんな人たちが増えていけば、その先にある未来は決して下向きではない。想いが繋がり、将来の街作りをも明るくしていける心豊かな学び合いなのではないか、と。

猪熊梨恵さん そんな、市民のための市民による存在である「ドリ大」。学長の猪熊さんは、人の中の魅力やパワーを見つけるのが得意という。
 「すべての人が何かの作り手であり、何かの担い手であるはず」と話す猪熊さん。だから、その力に触れたい、感じたい、発信のお手伝いをしたい。そんな思いに溢れている。
 「あなたにとって、仕事って何のためだと思いますか?」と問いかけると、「そういうことを聞かれるんだ・・・」という表情で、戸惑いつつも目を輝かせてこう答えてくれた。
 「友達に言われた『利他的』という言葉で気づいた。他人が喜んでくれることが私の喜びなのだと。『ドリ大』も関わってくださる方がより生活に持ち帰ることができたり、笑顔になったりすることが私にとっては幸せ。そういうことを仕事でしていきたいと思う」と。
 自分が何をしたいかより、目の前にいる人が何をやりたいのかの方を現実にすることが心地いいという「人の喜びのために」の原動力が、清涼な風のように伝わってきた。
 そして続ける。「最近は縮小する社会とも言われるが、それをどう楽しく知性を持ってデザイン出来るかだと思う。考え方ひとつで大切なことは見つかるし、見つけられると未来は明るくなるはずです」と。

 爽やかに道の先を見つめる20代の猪熊さんの言葉を聞きながら思い出したのは、宮沢賢治の若い人達へ向けた言葉だ。
 「諸君はこの颯爽たる
 諸君の未来圏から吹いて来る
 透明な清潔な風を感じないのか」
 そんな凛とした呼びかけで始まる「詩・生徒諸君に寄せる」。
 80年以上も前なのに、今の時代の私達へのメッセージかと思うような符合に驚く。
 旧制盛岡中学の学生達に呼び掛けたのは、「この時代に強いられ率いられて、奴隷のように忍従することを欲するか」という未来への啓蒙。「むしろ諸君よ、更にあらたな正しい時代をつくれ」と、あらゆることに目を見開くことの大切さを切々と説く。
 発病の前年32歳の時、ノートに赤インクで走り書きされていたという文はこう続く。

 「宙宇は絶えずわれらによって変化する
 誰が誰よりどうだとか
 誰の仕事がどうしたとか
 そんなことを言っているひまがあるか」
 (※「宙宇」=辞書には「天地の間。空間。空中。宇宙」とある)

 われらによって変化する宇宙。その「われら」は、私であり、これを読んでくれているあなたでもある。
 透明な風が吹いてくるという、賢治が想い描いた「颯爽たる未来圏」とは、どんな世界なのだろう。
 その「あたらしい正しい時代」のために、何が出来るだろうか。
 答えを求めて「棚卸し」は続いていく。

(インタビュー後記 村井裕子)

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