1月20日放送

小林英夫さん 小樽で「ダンスうんどう塾」を開く小林英夫さん。
 ダンススポーツの競技選手としておよそ19年間活躍し、引退後に指導者に転身して数多くの後進を育てている。
 ダンスの楽しさを広げ、ダンス文化を発展させようと尽力する熱意が人の中にある力を引き出し、「ダンス留学」という一定期間親元から離れてダンスを学ぶ子供たちにも信頼され、成果を上げ続けている。

 指導者小林さんが最も大切にしていることは、子供たちの「楽しんで取り組む」心。
 ステップや型を「覚えさせる」というアプローチでは子供は飽きたり、嫌になったりする。音楽の心地よさやリズム感を体で感じて、心から楽しんで踊れるようにすることが先決なのだと。
小林英夫さん そして、小林さんご自身がそのすべてを楽しんでいるということが、お会いした瞬間伝わってくる。笑顔で年輪を作ってきたような表情だ。失礼ながら男性の60代は苦虫を噛みつぶしたような渋面がその人の顔として定着している人も少なくない。まるで、「世の中、不機嫌でいた方が人に対して威厳を保てる」と勘違いしているような、勿体ないやり方。その対極にあるような小林さんの笑みは、「上機嫌」があらゆるいいものを運んでくる究極のコミュニケーション術。そんな笑顔の達人は、長い年月の取り組みがもたらした結果だろう。
 例えて言うなら「笑顔の形状記憶化」。長年の意識が、無意識にその人の顔を作っていく。

 そして、志の高い指導者というのは、どういう基本姿勢や理念が必要なのだろう。
 私自身も培ったものを受け渡すことで相手をより良く導いたり育てたりする役割を担っている一人として、深く自分の中に落とし込んでいきたいテーマだと思っているのだが、小林さんとダンス指導の話をしていて共感したことがある。

 それは、自分が苦労して身につけた技術を人に伝える時には、その「方法」をきちんとわかるように伝えること。そのために理論を指導者自身が学び、説明力を付けて納得を引き出していくこと。その当たり前のことに尽きるのではないかということだ。

 小林さんが、ダンス指導の例をわかりやすく紐解いて教えてくれた。
 日本人がダンスを踊れるようにするのに大事なことは、遺伝子の中に組み込まれている「摺り足」を克服することが最大のポイント。日本の文化である日本舞踊や柔・剣道、相撲などはすべて摺り足運動であり、それが身に付いている日本人は、そのままだとダンスは上手く踊れない。小さい頃から足を「上げる」という動作、腿上げ運動などを組み合わせた動きをすることで、体にとっては新しい動きであるダンスも楽々できるようになる。その組合せ運動こそが「ダンスうんどう」であり、その体の使い方ひとつひとつを子供にも、指導者にも広く伝えていきたいのだと小林さんは熱く語る。

 小林さんが、「ダンスは地球のパスポート」など、これまでのご自身の活動をキャッチフレーズ化してきたのも、何を成し遂げたいのか、何を目指すのか、一瞬で「わかる」ことを心掛けてきたからだと言う。
 「相手ありき」の姿勢で言葉を尽くす。
 それは、あらゆる分野の指導者に言えることに違いない。

 この原稿を書いている最中、メディアでは、大阪の市立高校の男子生徒が顧問の教諭から体罰を受けた後に自殺した問題を受けて、「体罰」をどう考えるかという論議が飛び交っていた。
 心に染みたのは、元プロ野球投手の桑田真澄さんの言葉だ。
 時代の変化をきちんと捉えて自分を絶えず成長させてきた桑田さんならではの指摘はこうだ。
 「道具も戦術も進化した。それなのに指導者だけは進歩せず、昔の指導方法のままだ。もっとスポーツの理論やコミュニケーションを勉強して、時代に合った指導方法に変えなくてはならない」と。

 プレイヤーとしても、指導者としても、「ほんもの」でありたい、あり続けたいと、自分の中の人間力を鍛え続けている人から学べるもののなんと多いことかと、改めて思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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