1月13日放送

 2013年新しい年、皆さんはどんな夢を心に描いているだろうか。
 「こうしたい」とか「こうなっていきたい」という夢や目標は、自分の中だけに留めずに「外」に出すことで叶っていくという考え方がある。自分の「外」に出すというのは、「書きとめる」ということや「話す」ということ。そんなふうに自分のやりたいことの「意識化」がガイド役になって、行動も選択もその夢に沿ったものになっていくという。
 例えば、「今年は将来の起業のために勉強する時間を取る」という目標を立てると、同時に自分の中で立ち上がったアンテナがそれに関する情報を無意識に集めてくれるなどのサポートをしてくれる。「思っていたら偶然にその類の本に出会った」とか、「願っていた分野のセミナーの広告が絶妙なタイミングで目に入った」というシンクロ体験は、自分が立てたアンテナが引き寄せた必然の出会いだ。
 「強く想えば、夢は叶う」というのは荒唐無稽な絵空事ではなく、自分の中にある力を信じ、引き出し、より良い循環を自分で作っていくことに大いなるヒントがあるのではないかと思っている。

 「ほっかいどう元気びと」でも、毎回、インタビューの最後の方で必ずしているのは、その人の「未来」にクローズアップして、夢を語っていただくということ。
 歩んで来られたこれまでの道を踏まえて、「これからどうしていきたいか」の静かな想いをご自身の「中」から「外」へ出していただくことで、インタビュー後もその言葉がゲストご自身の意識に残像としてとどまり、更なる実現への小さなきっかけになっていくようにと願いながら質問をしている。

朝倉奉文さん 新年2人目のゲストは、鰹から「鰹節」を作るように鮭から「鮭節」を作れないかと、全く新しい食品の製品開発に取り組んで来た、羅臼町「のりとも朝倉商店」代表取締役社長の朝倉奉文さん。
 朝倉さんの夢は、この「鮭節」が普通に各家庭の食卓にのぼって、日常的に食べて貰えるようになること。
 「夢」=「普通に」という表現が印象的だった。「世界へ羽ばたく商品に」というよりも、不思議と懐の深さが感じられる。
 お吸い物の出汁として密かに力を発揮する役割として。おひたしの上で旨味をさりげなくプラスする役割として。垂らしたお醤油と共にご飯のお供という役割として。
 「そういえば、我が家にも鮭節がいつも食卓にあるわね」といった「普通」が夢と語る。

朝倉奉文さん 朝倉さんは、40年以上漁師を生業としてきた中で、採卵だけされてほとんど廃棄される運命の脂の抜けた「ブナ鮭」が気になっていたそうだ。「何とか美味しい加工品に出来ないか」を考え、専門家の力も借りて取り組み続けて辿り着いたのが、「鰹節」からヒントを得た「鮭節」。
 「誰がそんなものを食べるのだ」「ほんとうに商品になるのか」という声もある中で、試行錯誤を続けてようやく完成。研究段階から実際に販売へと向かった時の設備投資の大きさに一度迷いもしたそうだが、背中を押してくれたのは、共に研究し続けた技術長の「絶対出来るよ」という言葉と、二人三脚でやって来た奥さんの「もう戻るわけにはいかないでしょ」という言葉だったそうだ。
 晴れて販売されて料理人にも好評という「鮭節」を実際にいただいてみると、勝手なイメージで「鮭トバ」のような強い味を想像していたが、全く違って、それはそれは優しく控えめな味。食べ飽きしない「普通」の削り節の味わいだった。
 何より、頑張って泳いで北海道まで辿り着いた「ブナ鮭」が、余すところ無く使われてどんなに喜んでいるだろうかと、鮭の気持になって感謝したくなるような加工品だ。
 削り節はかえって脂ののった鮭だと生臭くなってしまうそうだから、「ブナ鮭」はもしかして、「出来るものならこうなりたかった」ものに姿を変えることが出来たのかもしれない。
 形にしたのは、長年海と関わってきた漁師・朝倉さんの想い。

 何かの潜在的な可能性を信じることで期待が現実のものとなる作用を、心理学の分野では「ピグマリオン効果」と呼んでいるそうだ。
 古代ローマの詩人オウディウスが謳った彫刻家ピグマリオンの逸話。ある時、ピグマリオンが大理石の中から理想の女性像を掘り出し、恋をする。是非ともその彫像と結婚したいと強く願い続けた結果、アフロディーテの女神が応えて人間化したという伝説からきているという。
 「潜在的な可能性」は、強い想いで現実化する。
 大事なのは、自分自身の「ああしたい」「こうなりたい」という目標や夢のイメージ。
 「こうなってほしい」「こんな力を発揮して欲しい」という、他者へかける期待。
 よき想いを持つことで、信じることで、あらゆるものがより良い現実になっていく。
 それは絵空事ではなく、個々の内側にすでにある力が引き出された結果だ。

 想いが自分を作り、人をより良く変え、世界を、未来を作っていく。
 だとしたら、「私はこうなりたい」「こんなより良い世の中にしていきたい」と夢を抱き、共感と共に語り合える人が増えれば、世界は必ずいい方に変わっていく。
 2013年の年頭。
 そんな「想いの力」を信じることが出来たら、どんなに素敵だろうと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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