12月30日放送

 この1年も「ほっかいどう元気びと」を通して、沢山の出会いをいただいた。
 おひとりおひとりの話から、私が感じた「大切なこと」を綴るインタビュー後記も今年1年で53本を数える。
 この書くという作業は面白いもので、毎回何もない砂浜を掘っていく感覚に似ている。
 ゲストのお話が私の中で「触発」という名の「スコップ」となり、ここだという砂の山を掘り進めて行くと、地中から、探していた言葉や伝えたいことが出てくる。毎回毎回新しい砂浜を一から掘り進める作業。スコップを握り、深いところまでコツコツと。
 寝ても覚めても「その砂の下=大切なこと」を考えていると、だんだんに私が文章を書いているというよりも、その砂の下に埋まっているものが、掘って掘ってと向こうから出たがっている感じになってきて、そうなるともう「次は何に出会えるだろう」と、果てしない砂浜に嬉々として向かう感覚になっている。

大西重成さん 今年最後の「ほっかいどう元気びと」のゲストは、津別で私設美術館「シゲチャンランド」を運営する、イラストレーターで造形作家の大西重成さん。
 プロの芸術家である大西さんは、自然物である流木や木の根っこ、動物の角の「私を作品にして!」という声をひとつひとつ聞いてあげ、それらを「不思議な生き物」にして息を吹き込んでいるうちに、巨大なテーマパークが出来上がっていっちゃった!!・・・といったような、壮大で楽しいエネルギーが満ち溢れている人だ。

 50代からの人生を考えた時に、それまで活躍していた東京での「イラストレーター」という広告業での仕事の全うではなく、造形物に囲まれてそれを皆に楽しんでもらいたいと180度舵を切り、やはりデザイナーである奥さんのCoCoさんと津別に移住してきたという。
大西重成さん 「極楽美術館」と呼ぶ「シゲチャンランド」を広大な牧場跡地に造ってからは、まさに「自由」な創作活動だ。

 普段見えない地中にある木の根っこなどは皆が皆違う表情で踏ん張って上を支えているから面白いよ~と、「シゲチャンランドの仲間たち」について楽しそうに教えてくれる。
 酔っぱらって千鳥足で歩いている宇宙人のような「チドリア氏」や、みんな顔が笑ってゆらゆら揺れる「ひょうたんオヤジ」も皆自然物から大西さんに「生き物」にしてもらった。実物と向き合ってみたら、何やら自分の中の本質と反応する摩訶不思議な接点に出会えるかもしれない。

 大西さんの話は、ひとつひとつがキーワードとして取り出せるほどユニークで、心に残るものだ。
 「自分が造形物を創っているというより、自然にあるものが向こうから訴えかけてきて、そうかそうかとお喋りして手を動かしていたら、向こうがなりたい生き物になっているんだよねぇ。僕はそれに従って繋ぎ合わせたり、組み合わせたりしているだけ」と大西さん。

 ふと、夏目漱石の『夢十夜』の中の『第六夜』を思い出す。
 鎌倉時代の運慶が、なぜか明治の時代に現れて護国寺の山門で一生懸命に仁王を刻んでいる。
 迷いの無い鑿と槌の運びに見物人たちは、「さすがは運慶だ。天晴れだ」とか、「大自在の妙境に達している」とか言って感心しきりだが、無教育な男と見えたひとりが悟ったように言う。
 「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の下に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」

 木の下に埋まっているものを取り出すだけ・・・。
 天賦の才能を持つ人への憧れと、精進の大切さ、目に見えない何か大きな力の存在を感じ、このくだりは深く私の心に刻まれている。
 運慶は、そして芸術家と言われる人達は、「誰」に力を借りて、どれだけの努力を重ねて「無いもの」から自在に「すでにそこに有ったもの」にしているのだろう。

 運慶までとはいかなくても、人はひとりひとり、その人の彫るべきもの、一心に掘り続けていくものがあるのだと、私は信じている。
 それを見つけて、役割を探し続けていくことが、生きていくということだと思うから。

 この1年も、「村井裕子のインタビュー後記」を読んでくださり、ありがとうございました。新しい年も、さらにもっと深いところから何か「大切なもの」を掘り出せるように精進するのみです。
 どうぞ、よいお年を。2013年も素敵な日々になりますように。

(インタビュー後記 村井裕子)

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