12月2日放送

黒田晃弘さん 人の顔って何を物語っているのだろう。心が顔に出るとしたら、私の顔には何がにじみ出ているのだろう。
 興味とワクワクと、ちょっぴり怖さとがないまぜになった心境で、今回の「元気びと」をお迎えした。
 ゲストは、画家として似顔絵を描き続けて10年。これまでの肩書を「似顔絵アーティスト」から「人仏画家」へと改名し、さらなる境地をめざす黒田晃弘さん、42歳。新進気鋭の札幌の現代美術家である。

 黒田さんは、会ったとたんに自分と他者の間の空気をふわりと和やかなものにする術をお持ちだ。きっとどんな人でも「この人なら扉を開けても大丈夫」と安心するに違いない。北風と太陽で言えば、オーバーなどの重い衣を捨てさせる太陽のような役割。

黒田晃弘さん 黒田さんが、画家として「似顔絵」をライフワークにしていこうと決めたその意味と手法を聞いていて、なるほど「柔らかな陽射しの太陽」であることがふに落ちた。
 黒田さんの似顔絵は、「目鼻立ちを似せていく」という表面的なことではなく、その人の顔の奥にある思いや生き方に心を共鳴させて、内側にある本質をも引き出すものであるという。だから、「人仏画」。人の中にある「仏」をも描き出していきたい、と。

 手法は、紙に木炭。2時間位たっぷりと時間をかけて、相手と会話を深めていきながら顔を描いていくという。
 黒田さんは話す。
 「頭ではなく心で描いていると、紙の上に顔が現れ、何となく気になるところを質問しながらじっくりと引き出していくうちに絵がどんどん変わってくる」と。
 そうしているうちに、その人が内に持つ「いいもの」が、紙の上にも現れてくるのだと。
 そして、その役割は「サンタクロースのようなものなのかな」と笑う。似顔絵を描くこと自体が「プレゼント」。贈れるものがある嬉しさが何よりだし、受け取った相手が絵の中のほんとうの自分に出会って心の変化のより良いきっかけにして貰えたら、それこそが自分にとっての大きな役割。
 そうして、「人の顔を描いていると、何か奇跡を起こせるような気持ちになれるのが楽しいんですよね」と話す。

 インタビュー収録後に、私の顔を描いていただいた。問いかけを重ねていく木炭の手法は時間がかかるので短い時間でもできる鉛筆画で、とデッサン用の鉛筆とスケッチブックを取り出しスタート。 「鉛筆だと消せないので、失敗しないように」と、慎重にA4程の画用紙の上に線を置いていく。一気には描き進めない。イメージが固まるまで少し時間がかかるという。
 いろいろ質問されるのかと思いきや、黒田さんから饒舌なお喋りが繰り出されていく。
 紙の上に最初に現れたのは目。何度もなぞって、私の目にしていく。
 話は奥さんとのなれそめ。「一目惚れだったんです」。出会ったその日のうちに似顔絵を描かせて貰い、描き終わった時には結婚を決めていた・・・。
 目の位置が決まると、輪郭の髪の毛。ウェーブの柔らかさが何本もの線で描かれていく。
 黒田さんには「不思議な話」の引き出しが沢山。こんなアトリエが欲しいなとイメージを思い描いていたら、奥さんがたまたま見つけた物件が自分の頭の中の映像の通りで驚いた・・・。
 髪のウェーブを丁寧に仕上げると、鼻、口、目の中の黒を。全体のバランスを見るようにしてセーターのVとネックレス、ジャケットの輪郭を。
 その間にも、会いたいと思っていたフジコ・ヘミングさんにあれよあれよと繋がって、ついに会えて絵を観て貰ったエピソードが続いて・・・。

似顔絵の写真 そうして完成した似顔絵が写真の通りである。
 黒田さんは私の何を引き出してくれたのか。
 絵の説明で伝えてくれた言葉が、温かい表情の似顔絵とともに、私にとって感激のプレゼントとなった。
 黒田さん曰く、「まず、印象として受け取ったのは『凛々しさ』。そして、右目の役割」。
 私の右目は、まるで潜水艦のスコープのようにその場その場の空気を探知し、判断していて、あらゆるところで自分の役割を一心に果たそうとしているという。
 反対に左目には人を和ませよういう意志が感じられ、口角が上がった線になったのは、役割を果たしながらも自分も楽しもうとしている現れだと。
 すごい。顔がそんなに雄弁に内側を語っているなんて驚きだ。
 一生懸命に「働いている」右目が愛しくなってきた。凛々しく生きて、人に向き合い、役割を果たそうとしているのが私の本質だとしたら、こんなに報われることはない。
 しかも、右目が真剣なのに、柔らかさや優しさが全体からにじみ出ているのがほっとする。そして気がついた。この絵は、私が「こうなりたいと思ってきた自分」だ。

 きっと、黒田さんに似顔絵を描いて貰ったひとりひとりがこう思うのではないだろうか。
 「自分がやってきた道のりは、これで良かったんだ」と。
 黒田さんがプレゼントしてくれたのは、そんな自己肯定なのだと納得した。

 12月、サンタクロースからの素敵な贈り物に、感謝。

(インタビュー後記 村井裕子)

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