11月25日放送

 先日、コーチングの学びの中で、働く女性達10数人と「自己管理」をテーマにディスカッションしていてある共通点に気づいた。
 すでにキャリアも積んで仕事の方法も身に付いているが、その他に子育てや老親の介護、自分自身の体のケアも外せない年代の興味の的は「自分の時間をどう有効活用させるか」ということ。いわゆる「タイムマネジメント」をもっと上手にできるようになって、降りかかるあれこれを焦らずこなせる自分でいたいというものだった。
 「タイムマネジメント」とは、自分の行動や仕事を客観的に把握し、ただただ忙しいという日々の曖昧な感覚だけで大事な時間が逃げていかないように一日の時間を組み直し、効率を上げていくという意識化。そうすることで、新しい習慣を取り入れるべく「隙間(スペース)」を空けていくことができるというものだ。
 では、その「時間のスペース」を空けて、彼女達は何を取り入れたいと思っているか?それは、健康のための体力作りや体調管理というのが、私も含めてその場の全員の思いだった。ある人はウォーキングやマラソン、ある人はヨガや筋力アップのための体操、心を穏やかにするリラクゼーションあれこれ・・・etc.
 健康は今や自分でデザインし、いくつになっても元気でいられるよう心身を管理していくという意識は格段に高まっていると実感した。

池田篤英さん 昔は観光地や湯治場だった温泉も、今の時代、この「健康増進のデザイン」が益々求められるキーワードだ。
 今回の「ほっかいどう元気びと」、道東は弟子屈町にある川湯温泉旅館組合長池田篤英さんの取り組みを聞いていて、改めてそれを感じた。
 52歳の池田さんの十代の頃は、温泉地がどんどん賑わっていく過渡期だったそうだ。団体を受け入れられるように設備投資され、温泉街もたくさんの観光客が訪れたが、バブル経済崩壊後は社員旅行などが激減し、右肩下がりの一途を辿る。
 川湯は温泉で生きてきた町。そこを生かすしかないと、池田さん達2代目の後継者が中心となって新たな取り組みを始めていく。
 やはり川湯温泉の強みは「源泉100%かけ流し」のお湯と自然環境。何よりその基本を枯らしてはいけないと温泉川の定期的な清掃に取り組む一方で、健康にいい入り方や各種セラピー、リラクゼーションの提案を積極的にしていくという、時代に見合った「あたらしい湯治」案を打ち出していく。

池田篤英さん 池田さんは言う。「自分は目標に向かって邁進するというタイプではなく、不思議に何かしなくてはと思うと、ふさわしい人が現れてやってくれるんですよ」と。例えば、川湯の森病院を引き継ぐために弟子屈町に移住してきた齋藤院長も温泉療法に熱心に取り組んでくれ、健康にいい温泉の入り方など、しっかりした根拠に基づく方法をともに提案しようとしてくれているのもその大きなひとつだと話す。

 「こうこうこうだから体にいい」「こう組み合わせれば効果的」など、今の時代の私達は嘘偽りない根拠を求め、「なんとなく」では納得出来なくなっている。
 「裏打ちされたデータ」や「ほんものは何か」をしつこく要求される時代。となると、思いつきやどこかの真似など「上澄み」だけの企画もすぐに見抜かれる難しい時代。つくづく古い温泉地の脱皮方法は難しいのだろうなと、不況の中での各地方の取り組みに思いを馳せるひとときだった。

 それにしても、「ほっかいどう元気びと」でいろいろな分野の方にお話を伺っていると、どの分野にしても同じような課題があることが浮き彫りになってくる。何かを「売りもの」にしていく場合、その場所へわざわざ足を運んで貰う場合、お財布の口を開いて貰うために今の世の中で最大のテーマとなるのが「付加価値」と「差別化」だ。
 これから一層、その「付加価値」と「差別化」のための工夫をそれぞれに知恵を出して見つけていくことが大切なのかもしれない。
 ・・・と、文章を着地させようと思うのだが、何だか、何かが小さく引っかかる。
 何が引っかかるのか?それは、その見方が「経済のものさし」だからだと気づく。
 川湯の強みは100%混じりけのない「温泉」、そして今も尚そのまま残っている「自然環境」。これほど素晴らしい価値があるだろうか。それは、例えば「地球のものさし」のようなもの、或いは「本質を測るものさし」のようなものを当ててみれば、最高の「宝」だ。私達の住む北海道にこういう場所があちこちに奇跡的に残っているということ自体がかけがえのない価値であり、誇り。
 だが、「お金が動かなければ」町は生きられない。現代人の求める「ニーズ」とやらにクローズアップ出来なければ、人は来ない。

 世の中自体がじわじわと坂を降りていくこれからの時代に、何を守り、何を取り入れていけばいいのか。
 地方のほんとうに大事な宝と、将来の生き残り策、そしてそこに住む人達の「しあわせ度」。それらを上手に一致させていくやり方はほんとうに難しい。
 私達は今、そういう時代に生きているのかもしれない。

(インタビュー後記 村井裕子)

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