11月18日放送

 「夜と霧」で多くの人達に生きる指針を与えたユダヤ人の精神科医フランクル。
 困難を乗り越えて生きていく方法のなかに、「大切なのは『態度価値』である」という考え方がある。
 生きる意味と使命を見つける3つの手がかりとして、自分の仕事などを全うする「創造価値」があり、人との繋がりや自然との触れ合いなどからもたらされる「体験価値」がある。そして、3つ目の「態度価値」とは、自分では変えることの出来ない運命に直面して、その人がどのような態度を取るかによって実現される価値のこと。
 つまり、自分がとる「精神的態度」によって、引き受けざるをえない運命をもより良く変えていくことができる、というものだ。

佐藤章臣さん 今回の「ほっかいどう元気びと」の佐藤章臣さんは、「事故で身体が不自由になるという経験をしなければ、DJになる夢は叶わなかった」と言い切る。「昔の自分が夢を求めて上京しても、人間関係作りのひ弱さでうまくいかなかったと思うから」と。
 事故によって体験させられた挫折が今の自分を作った。そう言い切る。
 そう、それこそが「態度価値」なのではないか。
 勿論、葛藤も不安も他人が想像する何倍もあったに違いない。同じ年頃の人達が遊んでいたり自由に飛び回っていたりするのを見て、気落ちすることもあるだろう。
 しかし、自分で決めたのだ。
 「困難が自分を育て、試練があったから夢が叶ったのだ」と。
 自分の態度で決める、意味のある人生のための大きな価値。

佐藤章臣さん 佐藤章臣さんは、DJ OMIという名でクラブやイベントで活躍するDJ だが、18歳の時の交通事故で車イスの生活になった。16歳から始めた憧れの仕事。建設関係の仕事と掛け持ちしながら夢を大きく膨らませていく。18歳。DJ としてのキャリアを積むなら東京へ出るしかないと北海道を離れることを決め、その直前に函館のイベントに向かう途中で事故に遭う。
 その出来事の組み合わせに、切ない気持ちでふと思う。「東京へ行かせないようにした見えない力は、何の計らいだったのだろう」と。
 私の気持ちを読んだように、佐藤さんは言う。「あの時東京へ行っていたら、何かもっと大変なことになって、DJ など諦めて北海道に逃げ帰ってきていたかもしれないです」と。
 そして、前述の「事故があったおかげで、DJ として今こうやって生きていられるのです」という言葉に繋がっていく。
 そして、宝ものは「周りの人達」。
 体が全く動かなかったときに、人の世話になるということを体験し、人の手を借りることはなんて有り難いことなのかと、母親を始め周りの人達の大切さにどんどん気づいていったという。
 人に対してトゲだらけだった自分が見え、人間関係が未熟だった自分に気づき、自分のことしか考えていなかった自分を省みて、今、初対面の人とも仲よくなっていくことを大事にしていると、少しはにかみながら教えてくれた。「自分から人に話しかけることを率先しているけれど、笑顔でというのがまだまだ課題かな」と真面目に話す。

 脚の機能が奪われたことで、自分の足りなかったことを知ったという佐藤さん。
 何かを奪われる試練によって、大事なことを知る。
 何年も経ってから、「あのおかげで」と言える人間の強さに圧倒される。

 その強さを引き出すのも自分なのだ、とフランクルは言う。
 「3つの価値により、私達の人生はいつでも有意義なものにすることができる可能性が残されている」と。

 「創造価値」「体験価値」、そして、精神性が問われる「態度価値」。
 今、自分も含めて、多くの人達が、自分を試されているような気がしている。

 「あなたは、どういう態度で、この世界を生きますか」と。

(インタビュー後記 村井裕子)

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