11月11日放送

 今年、スポーツ関連で何かと話題に上った北海道の町といえば、何といっても「栗山町」。
 日本ハムファイターズの監督である栗山英樹さんの苗字が同じという偶然から、俄然野球と縁が深まった町だ。
 栗山監督就任1年目でリーグ優勝を果たし、日本シリーズでは惜しくもジャイアンツに敗れたものの、まさにファイティングスピリットを見せてくれた日本ハムファイターズ。
 その熱きチームを率いる栗山さんが栗山町の観光大使を依頼されたのが1999年という。その頃、野球解説などで活躍していた栗山さんがそれをきっかけにすっかり町に魅せられ、地元の人達と親交を深めていったという話は道内ではすでに有名な話だ。
 そして、小高い丘を訪れた時に、現役の時に観て感動した映画「フィールド・オブ・ドリームス」のような夢を叶えたいと、町の皆とともに手弁当で野球場を造ったという話はさらに優しい感動を呼んだ。その名も、少年野球場「栗の樹ファーム」。
 2002年にオープンということは、そこから今に至るまで10年の歳月があるのだと改めて気づく。北海道という場所に種を蒔き、育て、大きくしてきた見えない絆。
 優しく、温かく、深い人柄が感じられる栗山監督ならではの種蒔き。
 すべての結果には、何らかの根っこがある。そこに心が伴うから、人を感動させる。
 今年のファイターズを率いた栗山監督が届けてくれた感動は、そんなところからもにじみ出ていたのだと改めて思った、清々しい「祭りのあと」だった。

岡本大作さん どんな縁で小さな町が元気になるか、誰もわからないから面白い。そして、どんな町でも何かの種がひょんなことから芽を出し実になる可能性があるから、希望もある。
 この栗山監督と縁が深い栗山町は、ご存じ農業の町。
 「ほっかいどう元気びと」の今回のゲスト、「有限会社 植物育種研究所」の岡本大作さんは広島県出身ながら、野菜の品種改良に取り組みたいと栗山町を研究のフィールドにしている農学博士で、札幌黄という昔ながらの品種のタマネギから「さつおう」へと品種改良したことで知られる「タマネギ名人」だ。「消費者のニーズに合わせた野菜を作りたい」と大手の種苗会社を退職して栗山町に移住し、その土地にとっての付加価値に繋がる”野菜のブランド化”に取り組んでいる。
 栗山町との縁は、奥さんが出身だったからとのこと。ほんのささいな偶然が、その土地に新しい種を蒔いていく。

岡本大作さん 岡本さんは言う。「野菜の品種改良は、10年先を見越して研究を地道に続けなければ成果は出ない」と。消費者がどんな考えを持ち、何を望み、どんな「食」を欲しているのか、その傾向を捉えて何百という種からいいものを抽出して新品種を生み出していくわけだが、その未来への目線と地道な努力が欠かせないのだと。
 「研究所と名付けていますが、白衣を着て試験管に向かっているのではなく、ほとんど農地へ出て、農家さんと同じような作業をしています」と「タマネギ名人」は笑う。

 そんなセンスと努力で世に出したのが、「さらさらレッド」と名付けた健康タマネギ。
 健康を気遣う現代人のために他のタマネギとの差別化を図り、従来のものよりケルセチンという血液さらさら成分が1.5倍から3倍多く含まれる品種を2006年に誕生させている。
 これは、栗山町の農家のみが栽培し、その「機能性」をアピールし、「ブランド化」することで人気を集めているという。特徴のある作物を地域の特産にすることによって、さらに付加価値を高めていくという未来。
 自分が学んだ農業のバイオ技術によって、北海道の各地域でそんな機能性の高いブランド野菜を世に送り出すことが出来れば、もっともっと北海道の農業は力を持つことができる。そうして、全国は勿論、世界にもアピール出来れば農家もやりがいを覚える、と岡本さんは言う。

 当たり前のことだが、植物の種から作物を育てるということ。その種を何百種となく研究して、その中からいいものを生み出していくということ。そうして出来た品種を安定的に作っていくということ。その流れがどれだけの時間と思いと苦労によって支えられているのかを想像すると、果てしない思いになる。
 私達の食べている作物は、ほんとうに多くの人が手をかけた「チーム」による完成品なのだと改めて感じたインタビューだった。

 岡本さんが試食にと持ってきてくださった「栗山町の健康タマネギ さらさらレッド」。
 私も幾つかいただいて、くたくたのスープ煮にして食べてみた。
 血液さらさら成分とともに、「甘み」もアミノ酸のグルタミンの量、つまり「旨味」も他のタマネギより多いという。塩以外何も入れないスープの味がびっくりするほど深かった。
 作物ひとつひとつの美味しさには、何らかの根っこがある。人が力を注いだ根っこ。そして、その味わい深さに感動するのは、そこに「心」も込められたからなのだろう。
 そのあらゆるものの元になる「人の力と、思い」、そのひとつひとつを伝えていくのが、この番組の役割だと、改めて思う。
 北海道をあらゆる根で支える多くの人達。タマネギのように実力も味もある魅力溢れる存在を、これからも丁寧に料理させていただこう。

(インタビュー後記 村井裕子)

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