9月16日放送

篠田静男さん 道東の標津町から飛行機とJRを乗り継ぎHBCまで来てくださった今回のゲストは、道路が音楽を奏でる「メロディロード」を開発した篠田興業の篠田静男さん。
 スタジオに入るなり、「これ、みんなで食べてね」とレジ袋を差し出した。
 お土産を有り難く受け取ると、スルメやホタテや珍しいカジカの干物のおつまみ。小ぶりのひとパックが食べやすい量になっていて楽しい。さらに「隣町の中標津のものだけど、これはうまいよ!」と説明付きで「標津羊羹」が。
 「ほっかいどう元気びと」では、番組を聴いてくださる皆さんにプレゼントを毎週抽選でお贈りしているが、篠田さんが持ってきてくださった標津ご自慢のお土産を見て、「この『標津美味しいものセット』いいんじゃない?」と、スタッフの間で即プレゼントが決まった。
 篠田さんは、土木工事業の「篠田興業」の代表取締役を務める前にコンビニ経営を手がけており、今でもご家族で続けているのだという。標津の美味しいものも扱っていて、仕事で出張する度に、地元をPRしたい気持ちからこんなふうに手土産を用意するのだそうだ。故郷を思う気持ちと、人が喜ぶことが何より嬉しいという人柄が感じられた。

篠田静男さん 篠田さんが歩んだ道のりもけっして順風満帆ではなく、時代の波に翻弄されてきた経験を持つ。父親の始めた土木工事業を兄弟で受け継ぐも、バブル崩壊で仕事が激減。会社は兄に任せ、ご自身は心機一転コンビニ経営に舵を切る。その後、兄の病気という思いがけない転機が訪れ会社に戻り、社長として経営を引っ張っていくが、借金を抱え存続の危機に瀕していた会社を立て直すのは並大抵のことではなかったという。
 いろいろとお話を伺う中で私が感じた篠田さんの「強み」。それは、とても単純な表現だが「素直である」ということだ。
 もう少しで還暦の年齢の方に「素直」とは少し失礼な表現なのかもしれないが、60年近く生きてきた人が「素直である」というのは、何ものにも勝る宝なのではないか。人と生きていく上でも自分を成長させるためにも欠かせない「人間力」の最たるもの、人生を生き抜く万能の杖なのではないかと思うのだ。
 篠田さんは、これまでの様々な経験の中でいろいろなことを学んだという。コンビニ経営の時には、50円100円という値段のひとつひとつの商品に向き合うことで、丼勘定ではない商売の方法を。お客様が来てくださる店にするためには、自分のいいところ悪いところを知る努力をし、良くない態度があれば改めなくてはいけないということを。そして、借金を抱えた自社を再建していく過程では、人の意見に耳を傾けるということを。
 篠田さんは言う。
 「会社が窮地に陥って、どうにかするために始めたメロディーロードですが、それが結果的に周りから注目されて、一生懸命やっているなと沢山の人が応援してくれました」
 本当に人に恵まれている、周りがよい人ばかりと、周囲への感謝の言葉が何度も溢れ出す。メロディーロードというオリジナリティ溢れることを始めたことをきっかけに、人が人を紹介してくれ、それがどんどん繋がり、相乗効果としてよい方向に向かっていったと。
 そして、社長という重責で仕事に取り組む流れの中で、「人に相談したときに返ってきた言葉は素直に聞くということが大切」と気づいたのだそうだ。
 曰く、「相談を聞いてくれるということは、相手も真剣に自分のことを考えてくれている。そういう真摯な態度に自分も真摯な態度で応えなくてはいけない」。
 そんな篠田さんも、以前は人の言うことを聞けないことも多かったそうだ。人から「当たり前」のことを言われると、「そんなの分かっている、知っているよ」と反発することも少なくなかったが、ある時ふと「結局は、当たり前のことをしていれば大変なことにはならない」と気づく。ごくごく単純なこと、それが一番大切なことなのだ、と。その単純なことをひとつひとつこなしていって、何か解決できないことがあれば、それは自分にとっての新しい障害物。そこをクリアしたとき、またそれが自分にとって当たり前のことになっていく。そういった積み重ねが大事。そんなふうに言葉が紐解かれていった。

 メロディーロードは、篠田さんがまだ20代の頃、重機で傷ついた道路を走った時に鳴る音を聞いて、もしかしたら傷の幅を変えれば音が変わり音楽になるんじゃないかと思ったことが発端だったそうだが、ひらめきが形になったのは、思っただけではなく行動が伴ったからだ。北海道工業試験場にその発案を持ち込み、可能かどうかの相談をしている。そこから、やはりアイディアや発明が好きな人が真摯にそれと向き合い、人が繋がって実用化に結びついたというわけだ。

 「素直さ」が強みの篠田さん。モットーは「よりよく人に頼ること」。
 メロディーロードの実用化を進めている時には、音楽の先生をしているその頃まだ20代だった娘さんを現場に連れて行って、「どう思う?」と相談したそうだ。
 「自分が知らないことなら、年齢も性別も問わずアドバイスをして貰う」、それが篠田さん流ものごと解決法。年上年下に限らず、時には子供の意見も「へえ~、そうかい」と素直に聞けるというのは素晴らしい能力だ。

 そんな能力はおそらく誰しも持っているもの。余計な力を抜いて心の扉を今以上に「開いて」みると、新しい風がきっと自分の中で吹く。

(インタビュー後記 村井裕子)

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