9月2日放送

 「ほっかいどう元気びと」で様々な分野の方とお話ししていて頭に浮かぶのは、「適材適所」という言葉。出演される皆さん、それぞれ自分の場を求め、精進し、その見つけた場で精一杯役割を果たしている。
 今回のゲスト、網走の合同会社「大地のりんご」代表を務める道山マミさんも、まさに自分の力を発揮出来る「適材適所」を見つけた人。朗らかな笑顔から仕事への揺るぎない誇りが伝わってくる素敵な女性だ。

道山マミさん 「漬け物で日本を元気に」をテーマにした「T-1グランプリ」。その2011年の「法人の部」で、道山さんが考案した「ガツンと辛い山わさび粕漬け」が日本一になり、地元網走を始めオホーツクの農産物の加工、販売の可能性を広げる活動に奔走する毎日という。
 道山さんの信じるもの、目指すものはとてもはっきりしている。
 食べるものを自分たちの手で生み出す農業の素晴らしさへの敬意があり、その素晴らしさが伝わるような仕組み作りをして、埋もれていた可能性をひとつひとつ形に変えていく。
 例えば、北海道は農産物が豊富に作られているけれど、勿体ないことに規格外で余って捨てられるものも大量にあるのが現実。それらを加工して販売できる十分な体制が産地に無いことがネックだとすると、加工技術を確立して、生産と加工、販売をその土地ですべて出来るような連携を生み出すことが必要になってくる。いわば、最近よく聞くようになった1次産業に加工(2次産業)と流通(3次産業)を加えた「6次産業化」だ。
 道山さんは、その橋渡し役。これからの北海道の地域農業の総合プロデューサーとでもいうべき仕事に取り組んでいる。そして、道山さんの強みのひとつは「よそ者」であること。地域の人達が当たり前と思って気づかない「その土地ならではの食」に光を当て、埋もれていた潜在力を掘り起こしていく役割も外せない。

道山マミさん そう、道山さんは本州の人だ。千葉に生まれ育ち、網走にある東京農大生物産業学部で学んだ後、東京で就職し、結婚後は埼玉のマイホームで家族4人の平穏な日々を過ごす。ところが、30歳も後半にさしかかったある日、突如、農大の恩師から網走で仕事を手伝ってくれと声を掛けられたのが人生最大の転機となる。
 2年かけて夫と向き合い、「それをするために何が出来るか」をとことん話し合い、ひとまず道山さんは幼い子供2人を連れて網走へ移住するという大決心をする。
 東京で就職し、結婚し、子育てをしていた日々にも、道山さんの心の中には「農業」という分野で何か役割を果たすことが出来ないか、熱い思いがふつふつ滾っていたのだという。思いを持って、熟成させて、そして天からの一声をきっかけに夢を現実にした。

 「農業」への思いは、子供心にすでにあったという。生まれ育ったのが千葉の九十九里という関東でも農業の盛んな土地だけに、農地の大切さは肌で知っていたと。
 自分が作物を生産する立場にならなくても、「農」と関わる仕事をずっとしたいと思っていたという道山さんに、何か小さいときに印象に残った出来事があってのことですか、と訊いてみると、こんな答えが返ってきた。
 中学生の頃、広島の被爆体験を通して反戦を訴える漫画「はだしのゲン」を読んだ時。戦争の悲惨さにショックを受け、それをくぐり抜けてたくましく生きる少年ゲンに感動した道山さんは、「絶対、戦争は起こしてはならない」と子供心に強く思ったと同時に、ストーリーの中で農家にお米を貰いに行くくだりに深く反応。「どんな時でも、食糧を生み出せる土地があれば人は生きていけるのだ!」と、農業への尊敬の念が芽生え、今の自分の元が作られたのだと話してくれた。

 そして、「あなたの宝ものはなんですか?」という問いには、キッパリと「日本の豊かな農地です」という答え。途上国の農業事情などについても学んだ経験から、「こんなに何でも収穫出来る豊かな農地と水は日本の宝。絶対、残さないと駄目」と強調する。
 この、「絶対」と「駄目」は、ニュアンスとして、「ゼッッタイ!!」「ダメッ!!!」というくらい力がこもっていた。

 そういう人が、オホーツクという地で、農業に関わる仕事に明るく生き生き取り組んでいる。農産地と消費地とを結ぶために、今、そしてこれから何が必要かを模索しながら。
 その取り組みは、「自分」のためでなく、遙か遠くの地平を見ていることに、一番の理解者であるご主人も共感されたのだろう。そして、その役割が道山さんの「適材適所」であることを確信したのだろう。道山さんのご主人は、関東での仕事に一区切りをつけて、その後網走に移り住み、家族4人、北海道生活をスタートさせたという。

 どんな「ものさし」を持つのか。これから益々求められていくもののひとつに違いない。
 「経済」の尺度も今までの時代は大事な道具だったのかもしれないが、そこから脱して、どんな新しい「ものさし」を見つけ出していくか。
 たった1%の人達だけが裕福な思いをするような、歪んだ「ものさし」ではなく、この豊かな誇れる農地のある国でみんなが幸せになれるような「ものさし」。そこを間違わなければ、日本の、北海道の強みを発揮する「適材適所」は何なのかに辿り着くであろう。

 「日本の豊かな農地を残さないと、ゼッッタイ!!ダメッ!!!」
 そう、道山さんが強調していた宝ものこそ、その大いなるヒントになるのだと思った。

(インタビュー後記 村井裕子)

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