8月5放送

 女子サッカーなでしこジャパンの第一戦勝利で幕を開けたロンドン五輪。
 2012年のこのオリンピックは、これまで女子選手を派遣してこなかった3カ国から女子選手が参加。すべての競技が男女で実施される画期的な大会といわれている。
 各分野での女性の進出、それは、未知の分野へも挑んできた女性の力は勿論のこと、受け入れる社会の、そして人ひとりひとりの「器」が成熟してきていることの現れ。意識が高くならないと、男女差ではなく、一個人としての力を認める目線は育たない。
 その、人としての「器」をより広く、より深くするために必要なのは、人が人を「尊敬できる」力なのではないかと私は常々思っている。昔々は、「男性が尊敬する対象は男性」という目線が「常識」で、女性に対しての「尊敬の念」はごくごく少なかったと思うが、ここにきて、女性を「尊敬できる」男性達が増え、性別ではなく個々人の持ち味を純粋に評価できる「尊敬力」が確実に高まってきている。
 女性の頑張りが先か、人を人として尊敬できる力を養うことが先か、多分それは相乗効果。
 スポーツが最も分かりやすいので、例えば五輪の例。なでしこジャパンのキャプテン宮間がカナダ戦の直前にロッカールームで選手達に言葉を掛け、彼女たちはその言葉で心をひとつにしたという。
 「ここに立てるのは選ばれた18人だけ。大切な思いや大切な人たちがいて、私たちは戦っている。ここからの6試合、お互いのために戦おう」。
 この言葉を傍で聞いていた佐々木則夫監督の感想がこうだ。「宮間のコメントが格好いいというか、素晴らしくて。僕もジーンと来て涙を流しそうになったぐらいだった」。
 女性の取り組みに感動できる感受性と、「尊敬できる」度量。それがあるから、互いに切磋琢磨できるのだろうと思わせられた。

井川公子さん あらゆる場で、そんな意識改革がなされているのが今の時代。
 勿論スポーツのみならず、女性が多く従事する農業の場にしてもずいぶん前から女性たちが立ち上がり、発案し、持てる力を最大限活用させることで周りの男性達を納得させ、自分たちのフィールドを快適なものにしている。
 今回、「ほっかいどう元気びと」に出ていただいた美瑛町の井川公子さんは、農作業に従事する傍ら、得意な洋裁の腕を生かして仲間と共におしゃれな農作業着の制作・販売を立ち上げたおひとり。自分自身もいきいきと充実感を感じながら、多くの農業女性たちの気持を日常の「おしゃれ心」を満たすことで支える役割を果たしている。
 どうせ仕事をするなら、「かわいい、かっこいい、きれい」のビューティフル3Kで。初めは自分たちで楽しんでいただけの洋裁を世に送り出すきっかけになったのは、「美瑛の学舎」代表の田中勝さんの後押しがあったからと井川さんは言う。「農作業のファッションショーをするから来てくれないか」と声を掛けられたそうだが、田中さんは、廃校を利用しながら地域活性化のための活動を進め、農業を通じて美瑛に人が集まる仕組み作りにも力を注ぐ活動を精力的にされてきた方だそうだ。

井川公子さん 農家の奥さんの手仕事、洋裁、ものづくり。
 ひと昔前なら、「奥さん方の農作業の合間の趣味」といった目線が一般的だったのだろうが、きっと、布きれ1枚から実用とおしゃれを兼ね備えた農作業着が生まれるということに対し、田中さんは「尊敬の目線」でとらえたのだろう。その従来の趣味の域を少し工夫すれば、多くの農業従事者を喜ばせる役割を担うことになる。そこから新たな「仕事」を生み出すことになる、と。
 農業の活性化。そのためには、働く人達自身の気持ちのモチベーションアップが欠かせない。そのヒントが女性の日々の暮らしの中に沢山あり、目線次第でこれからもまだまだ出てくるということだ。

 井川さんは、同じ農業従事者である美瑛の菅野三津子さん、富良野の竹内紀代子さんと3人で「び・ふらねっと」を立ち上げ、主にインターネットでそれぞれが制作した農作業着や帽子などを販売しているということだが、周りの男性達、特に伴侶に徐々に徐々に自分たちがやれることを示していったのだろうという頑張りがお話からにじみ出ていた。
 実際に行動し、日々の作業も手を抜かず、何倍もの労力を厭わずに結果を出していくことで、自分たちのやれることを「みせていった」のだと思う。真摯に取り組むことを「みせていくこと」で、きっと変わっていったのだろう。「うちの奥さん、なかなか出来るな」と。

 女性の頑張りが先か、人を人として尊敬できる力が先か、きっとそれは相乗効果。
 「わかってくれない」とぼやいていても何も始まらないし、「隣の女性はいいな」と人と比べていても何も形になっていかない。こうと思ったら、やってみればいい。ちょっとずつ爪を研ぎ、筋肉を付け、しなやかな行動力で前進あるのみ。
 その姿勢無しには、周りの「尊敬力」を育てることは出来ないだろう。

 「北海道の農家のおばちゃんだけどさ、作る農作業着にはちょっぴり憧れのフランスのデザインも入っているのよ~」と、明るくカラカラ笑う井川さんのエスプリに私も脱帽した。

(インタビュー後記 村井裕子)

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