7月8日放送

 今から30年以上も前のまだ若かった頃、「フェミニズム」関連の本を読みあさっていた時期がある。
 「女の幸せは結婚にある」とか、「女の子の仕事は行き遅れないように腰掛けぐらいで」などという当時の「世間の常識」とやらに、違和感と反発心を覚えたからだ。
 その当時のフェミニズムの運動は、「性差別を廃止し、女性の権利を男性と同等に」という目標のもとに、過激な発想のものもあればソフトに男性社会への参画を目指すものまで、百花繚乱の意見で賑わい、そうして、確実に世の中を男女参画の方向へ進ませる原動力になった。
 私の年代は、いわゆる「最後のフェミニズム世代」だと思うが、あの漠とした潮流が何を求めていたのか、どこへ向かいたかったのか、「男女同権」というキーワードが折り重なり茫洋としていたものが何だったのか、今この時代になってひとつはっきりとわかったことがある。
 本当にしたかったことは、女性が男性社会へ乗り込んでいき、男性と肩を並べ、男性主導で作ってきた重厚長大の社会にくみしたかったわけではなく、もっと「女性性」=女性が本来持つ特性を生かす社会へなだらかに変革したかったのだ、ということではなかったか。

 去年の大震災以降感じている方も多いのではと思うが、「効率優先、科学万能、経済至上主義、競争に勝つため、あくまでも強く」という「男性性」の強すぎる社会ではもう立ちゆかない。「命を育むことを優先に、持続可能な循環で、平和を尊び、精神性の豊さに共感し、あくまでも優しく柔らかく」という「女性性」に振り子の重心を移さなくてはならないということを。

河野有美さん 最近、いいなあと思うのは、「フェミニズムって何?知らない」というその後世代の女性達が、「そのほうが心地いいから」と、内に持つ「女性性」を生かして社会と柔らかく繋がろうとしていることだ。
 今回のゲスト、「北海道女性起業家 有限責任事業組合 rimrim 」というネットワークを立ち上げた河野有美さんと話していて、それを感じた。

 女性は30歳前後で、「さて、この先どうする?」と自分に問いかける。未来に繋がる何本かの道の前に立ち、どの一本がいいのかの選択の時に「女性性」の本能は、柔らかく声をかける。「わくわくするのはどの道?」と。
 引き続き組織の中で自分を成長させ、自分の居場所からより良く社会を改革することにわくわくする選択肢も当然あるだろうし、独立してこれまで培ったものを土台に役割を果たしていくわくわくもある。子育てをしながら、出来る範囲で取り組む資格や趣味の延長線上に自分の立ち位置が見えてくるかもしれない。女性もいろいろ、選択肢も、生き方もいろいろ。

河野有美さん 一昔前だと、「仕事」はイコール「お勤め」。結婚や育児で退職した後に仕事に復帰するのは茨の道だったが、今はアイデアと熱意、そしてインターネットの活用により、いろいろなことが「仕事」として可能になっていく。そもそも「儲け」より「やりがい重視」だから、莫大な利益を上げなくても「幸せ指数」は大きい。そんな同じような志の仲間がいれば百人力。情報を交換し、悩みを喋ってすっきりし、共感が新たなコラボレーションにも繋がっていく。
 rimrim 」には、そんな「自分にあった仕事」をわくわくしながら選んだ女性達が、横の繋がりの心強さで仕事と暮らしの両方を楽しんでいるのだという雰囲気が河野さんから伝ってきた。

 人の意識は柔らかく変わってきている。心強いのは、女性のみならず男性の中にもそういった「女性性」の発想を基軸とするバランスのいい人達がここのところ増えてきたこと。
 そうして、そんな人達の住処である「地方」それぞれも、故郷のかけがえのないものを次の世代に引き継ごうと、未来の行く道を真剣に模索している。
 そんな「意識」を集めていくことで、大きなものを変えることは出来るだろうか?
 暮らしを根底から見つめるひとりひとりの思いとかけ離れ、声も聞かず、未だ旧態依然の重厚長大を守ろうとしているかのように見えるこの国の舵取りの方向を。

 声は小さなものが集まって、いつか大きな声になることがある。
 「ほっかいどう元気びと」で、地域に根ざしながら志のある活動を進めているおひとりおひとりに話していただいている言葉の中には、ひとつひとつは小さいけれど「たいせつなこと」が込められており、信念がある。
 その声をひとりでも多く掘り起こし、ひとつの潮流にしていくこと。この番組が出来る役割だと、私は思っている。

 この国のひとりとして、道民のひとりとして、それが、私にとって進んで行きたい「わくわくする道」。

(インタビュー後記 村井裕子)

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