6月3日放送

豊島琴恵さん 今回のゲストは、旭川大学短期大学部で教鞭をとる豊島琴恵さん。
 学生たちに、食文化の大切さを伝授しながら、地元上川の農産物にこだわり、生産者と消費者とを繋ぐ活動を続けている。
 農家のひとりひとりはどんな思いや工夫で野菜を作っているか、卵を美味しくするためにどんなふうに鶏を育てているのか、足を運んでその懐に入り、それぞれの収穫物の旬の味わいを最大限に引き出す料理を発案し、調理する。手塩にかけた葉ねぎの、ピーマンの、卵の、豆の持つ力に丁寧に向き合いながら。まさに、「農」と「食」の橋渡し役である。
 地元ケーブルテレビ・ポテトでのそんな4年前からの取り組みをまとめた一冊が、レシピ集である「cotcotごはん」。

豊島琴恵さん 長いもを使った簡単且つひと工夫のチーズ焼きや、黒千石を混ぜたおにぎり、ウナギを巻いただし巻き卵の美味しそうなことは勿論だが、生産者がどんな志で作物と向きあっているのかが丁寧に紹介されている。
 豊島さんが「私の本と言うよりは、生産者を紹介する気持ちで作った本。とにかく素材の持ち味を生かすことを第一に、誰もが作れるようにシンプルに調理しました」と力説するように、生産者への敬意が込められていることが伝わってくる。

豊島琴恵さん 豊島さんは、農家の方々と触れあううちに、「野菜やお米や生きものに対する純粋な気持ち、その姿勢がその人の生き方そのものである」という、農に携わる人たちの哲学に触れていったという。
 台風などの天災に何度も見舞われても、気持ちを切り替え、立ち直る力。諦めない力。コツコツ同じことを地道に継続させていく力。人の優しさや思いは、生きものにも伝わり、その思いが慈味を引き出すことを信じる力。
 そして、与えすぎない厳しい環境におかれた植物はしっかりと根を伸ばして必要な栄養素だけを吸収するようになるという「そぎ落としていく」農法に触れ、必要のないものをそぎ落としていくシンプルな考え方は生き方にも通じると、その農に向き合う魅力的な人たちからたくさんの生き方ヒントを貰っているという。
 お話を聞いていると、そんなふうに土と生きる、強く優しく、芯の真っ直ぐな人たちに会いたくなってくる。「農」の力、「農力」を内に秘めた北海道の食の担い手たちに。

 豊島さんの宝ものは何でしょう?
 収録後に皆さんに問いかけるいつもの質問では、「ちょっと格好よすぎる言い方ですが」と前置きして、「学生です」と答えてくれた。
 「これから社会に出ていく子供たちに、何を残し、何を託していったらいいか。とても厳しい時代だけに、その土台作りをしてあげるのが私の役割」と。
 最近の若者たちは、早く結果を求めすぎて、すぐに空しくなってしまう。そのひ弱さがとても気にかかるそうだ。
 「どうせやらなければいけないことなら、文句を言って立ち止まっているより、そこに面白さや楽しみを見つけて、無理をしない範囲でちょっと伸びをしながら前に進んでいくことしかないと思うのです」
 そう語る豊島さんの表情は、すっかり教職者のそれになっていた。

 足元を見て、ちょっとずつ背伸びをしながら進む。その連続。その繰り返ししかない。
 豊島さんが実際に懐に入っていって感じた農家の人たちの生き方のヒントが、そのままその言葉にも溢れていた。

 豊島さんが前に進む原動力は、やはり教職者だった父親から受け継いだそうだ。豊島さんがまだ若い20歳の時に他界された、尊敬するお父さんの精神からだと。
 蒔かれた種は受け継がれていく。時を超えて、次の世代へ、確実に。
 志や使命感や気概も、人から人へ長い時間をかけて繋がっていくのだなあと、すべてが果てしない連続性の先にあるということを改めて感じ入ったひとときだった。

(インタビュー後記 村井裕子)

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