5月6日放送

森直子さん 子供たちの心を花で育む「花育」の活動が注目されている、花作家・森直子さん。
 インタビュー収録が終わりマイクのスイッチを切った途端に、頬を桜色に染めてほとばしるようにこう話してくれた。
 「私、こんなに心の中にあった思いを話せたのは初めて!今までやってきたことを言葉で表すことができた。ありがとう、村井さん!」
 その感覚は、森さん自身の中のもうひとりの森さんがインタビューの最中に立ち上がってきて、これまで言葉にしたことがなかったことを自由に話せている。そのもうひとりに、これまでの森さん自身が対面したような感じ、といったらいいか。「そうそう、私、そう言いたかったの!」と、深い思いと言葉が絶妙にシンクロ出来た感動なのだと思う。

森直子さん その夜、森さんのブログを拝見すると、こんな感想がアップされていた。
 「村井さんは、奥深いところの私を引き出してくれて、今まで、思っていても話したことのない私の深淵の想いや思考をラジオでお話することができました。自分でもとても怖くなる、自分で言っていて驚くほどの意識していない領域の私の魂の言葉がでてきました。誰かが引き出してくれない限り、言葉では出てこなかったでしょう。取材の中で、ここまでのことを話せたのは、生まれてはじめての経験でした」

 新たな自分との出逢い。

 私は、こういう時、ほんとうによかったと心から思う。「人の中から、その人自身もまだ気づいていない答や思いを引き出す」という、私自身の仕事の醍醐味だから。いや、仕事や番組を超えて、その「人の中にある金塊を発掘する」ことは、私のライフワークであり、ミッションだから。

 人は、自分がこうだと思っている「顕在意識」と自分でも気づいていない「潜在意識」がある。
 人は、的確な問いをかけられ、話せる安心感があることで、思考を潜在意識まで掘り下げていくことができる。訊かれ、考え、話し、訊かれ、考え、話すという「潜在意識への階段」を降りていくことで、自分で自分の中の「宝もの」を引っ張り出すことができるのだ。
 「言葉の力」は未知なるもの。そして無限大だ。
 森さんが引き出した宝もの、それは自分のなかにあった力。思いを「言語化」したことによって、これまで自分が何に取り組み、何を達成させたくて進んできたのか、大切にしてきたことは何なのか、困難な時ほどどんな力が出るのかが自分で確認できる形になり、これまでの道とこれからの往くべき道への視界が拓けたのだ。

 答えはもう、自分の中にある。

 「花育」という新たな人の心の育み方にチャレンジしてきた花作家の森直子さん。
 子供たちの世界で、いじめという悲しい出来事を無くしていきたいと思ったのが活動のきっかけだったそうだ。
 前例がそれほどないオリジナルの道は、例えば熊笹の野山を切り開いて通れる道をつけていくのと同じようなものだろう。悩みも葛藤も付きもの。そして、何をしたいのかが分かりにくければ時に反発もあるだろう。しかし、だからこそ、やりがいも人一倍。
 「すべてのいのちを大切にしたい」という確固たる軸を真ん中に、森さんはこれから様々な活動を見せてくれるに違いない。
 インタビューを通して私が感じたのは、「今後、さらに何をすべきか、もうすでに心の中で準備が出来ているのだろうな」ということ。「問い」により、ほとばしるように言葉が溢れ出てくる人は、試行錯誤によって積み重なったほとばしるほどの思いが、もうすでに、心の中で溢れんばかりになっているということだから。

 「インタビューとは、話す相手の湖に水路を繋ぐことである」と表現したのは、ノンフィクションの名手である沢木耕太郎さん。
 溢れる思いにうまく「水路」を繋ぐことが出来れば、相手が語りたかった思いが言葉になって溢れ出る。
 この番組は、その人その人が「どんな活動をしているか」ではなく、「どんな思いで取り組んでいるか」、いい時よりも辛い時にどんな力を総動員してきたか、そのひとりひとりの原動力に光をあててきた。
 話してくださる方が、ほとばしり出た自分自身の言葉で次への一歩を踏み出すヒントを感じていただけたら、「無限の可能性という湖に水路を繋ぐ」役割としてこんなに嬉しいことはない。

(インタビュー後記 村井裕子)

HBC TOPRadio TOP▲UP