4月29日放送

 最近よく思うことがある。
 頭のなかに突然降ってくる考えって、どこから来るのだろう。いわゆる、「ひらめき」という、それだ。
 日々を一歩一歩前に進むとき、私はけっこう多くのことを、ひらめきに委ねている。
 例えば仕事や生きていく方法に関わる人生の選択といった大きな道。どっちだ?と思った時に、ひとまず棚上げしておいて、突然やってくるサインに従う。
 そして、ごくごく些細なことに関してもそう。対談後に大切なことを綴るこのインタビュー後記の内容も、考えて考えて一旦放置しておくと、突然蛇口が開いたかのようにジャージャーとキーワードが降ってくる。面白いことに、ほぼ入浴中。

 「ひらめき」の出どころ。その「蛇口」は何処と繋がっているのだろう。
 勿論、自分の中の経験の層からに違いないが、もしかして、血縁の先祖の体験、さらに、何千年も何万年も前の「人類」の体験もすべてがひとりひとりの無意識の中に刷り込まれていて必要な時に浮かび上がってくるとしたら、それはそれは面白いのではないかと、そんなことを最近よく思っている。
 「これは人類としてやっていいこと、やってはいけないこと」そんなDNAが太古の昔から脈々と受け継がれているのではと想像してみると、自分の根っこのようなものが、この宇宙の真ん中としっかりと繋がっているような心強さを覚える。

茂呂剛伸さん 茂呂剛伸さんの縄文太鼓は、何というか、その根っこが揺さぶられるような、不思議な高揚感がある。その音や響き、リズム、振動といったものから、「何か思い出そうとしていたけど、それはなんだったろう」といった、奥底に眠っていた感覚を引き出されるのかもしれない。音の波動によって呼び覚まされる、自分の細胞の中の遙か昔の人たちのDNAのかけら。

 西アフリカの伝統楽器ジャンベ奏者であり、独自の発想で縄文太鼓を編み出した茂呂さんこそ、まさに「ひらめきの人」だ。
 元々和太鼓を習っていた茂呂さんは、19歳の時に路上でジャンベの演奏に遭遇し衝撃を受ける。ジャンベの技法を学び演奏家となる過程で、この番組にも登場していただいた札幌舞踊会の千田雅子先生の後押しで大きな舞台で演奏。その最中に「これを一生の仕事にしよう」とのひらめきがあり、その後ガーナへ修行の旅へ。
茂呂剛伸さん 帰国後の試行錯誤の道筋で、今度は縄文文化の研究家である詩人の原子修さんと出会い、縄文とアフリカン太鼓を融合させた、全くオリジナルの「縄文太鼓」の制作と演奏を始めていく。

 「なぜそれをしているのですか?」という問いに対し、後付けでいろいろな言葉は付けられるだろうが、多分「自分でもよくわからない」というのが本当のところなのではないだろうかと私は思う。だって、「ひらめき」に理由付けをするのは、それをしている当の本人でも難しいのだから。

 こんなことも最近よく思う。
 「ひらめいたこと」、心の底から湧きあがってくる思いというのは、その人その人が生きて何を成し遂げて死んでいくかという「使命感」と繋がることが多いのではないか、と。
縄文太鼓  茂呂さんにとって何かに突き動かされるように始めた縄文太鼓だが、それをどうしていきたいかというビジョンも鮮やかに持っている人だ。ただ演奏を楽しんで貰うだけではなく、自分が住む北海道の産業にまで育てるのが夢。それは観光資源であり、子供たちの情操教育であり、そして音楽療法として心を癒すものでありたいという強い思いを話してくれた。
 なぜ、明確なビジョンが持てるのか。それは、自分の使命、或いは「役割である」と信じているからであろう。なぜ信じられるのか。それは「ひらめき」に素直に従ったからだ。この頃良く思う。「ひらめき」を受け取れる身体と心でいられたら、自分が何をしていけばいいのかの道は自ずと拓かれていくのではないだろうか、と。
 そのために大事な「道具」、それは、自分の中の「真っ直ぐな心」。斜めでもよじれてもいない「通りのいい」真っ直ぐな心。それは道徳というアプローチであるということを超えて、他でもない自分を救ってくれる。その「道具」を真っ直ぐに保つのは結構難しいことだが、果てしない道を進むための最大の羅針盤になってくれるに違いないと、私は信じている。

 帰り際、私が毎年講座の生徒さんを集めて朗読の催しを続けていると話し、縄文太鼓と朗読のコラボレーションをやってみたいとふと思いを伝えたら、茂呂さんの目がきらきら輝きだした。「それは面白そう!」と。普通こういう場での流れでは、連絡先を確認し、「では、いつかご一緒しましょう」で一旦終わってしまうものだが、茂呂さんは身を乗り出してこう言った。「次回の朗読の催しはいつ?決めましょう、やることに!」。
 何か、ひらめいたのだ、茂呂さんの中で。ひらめいたら、やることは早い。恐るべし、茂呂さん。 茂呂さんは、こんなふうに自分の人生の歩みを進めてきた人なのだと、ここにもいた「ひらめきの人」にいたく共感した。

(インタビュー後記 村井裕子)

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