3月11日放送

 苫小牧の「あんぷる」というグループは、メイクアップを通して、高齢の女性たちの明るさと元気を引き出す活動をしている女性ボランティアグループだ。

諸角妙子さん メンバー14人が手分けして市内の高齢者福祉施設を訪れ、その人の良さを引き出すメイクを施すことで喜んで貰うその活動は、平成23年度「北海道福祉のまちづくり賞」を受賞。グループを率いる代表が、今回のゲストの諸角妙子さんだ。
 元々、痣や傷などを目立たなくさせる「カモフラージュメイク」に興味があり、手法を学んでいるうちに「メイクセラピー(化粧療法)」に出会い、化粧をすることでその人の心が解放され、自信も湧くことで生き方までより良く変わっていくその効果を多くの人に広めたいという思いが、ボランティアを立ち上げる原動力になったそうである。
 高齢者福祉施設を訪れるようになったのは、亡くなった諸角さんのお母さんが施設に入っていた時、たまたま職員の人に口紅を塗ってもらい、それがとても嬉しそうだったという思い出があるから。「娘である私が、もっとしてあげるべきだった」という気持ちが、今の活動をスタートさせるきっかけにもなったという。
 にこやかに笑いかけ、手を取り、慣れていない方にはハンドマッサージから始め、優しくさすったり触れたりも大切なコミュニケーション。近年、認知症のお年寄りにも、このメイクセラピーは有効とされているが、優しく会話しながら直接肌に触れることで精神的な安心感と適度な刺激をあたえるのだそうだ。

 「メイクセラピー(化粧療法)」という言葉はまだ耳馴染みが薄いが、東日本大震災後、被災された方々がひとまず安全な場所に身を寄せ、寒さをしのぎ、食べ物も三食何とか提供されるようになった後、女性たちに届けて欲しいと化粧品のセットが送られたり、顔のマッサージをして荒れた肌を整えるスキンケアのボランティアが話題になったことがある。
 避難生活を余儀なくされていた女性たちは「それどころではなかったが、やっぱり嬉しい」と頬を染めていた。そして寄り添っていた子どもは、「お母さん、キレイだね」と笑顔に。これこそ、「メイクセラピー」。化粧の力は女性にとって、そして、取り巻く周りにとって、実は魔法にも匹敵するくらい大きいものなのだ。

 人の心を支える支援。
 自分はひとりではないと思って貰えるような支援。
 日々の中で活力が湧いてくるような支援。
 共感を力にしていくような支援。
 この一年、様々な支援が、何かしたいと葛藤する多くの発想の中から生まれ、形のあるもの、無いものとして被災地に届けられている。
 例えば、メイクセラピーは、たかが化粧されど化粧。生きるための最優先事項ではないが、足を前に進めて行く時、確実に女性の「気」の持ちようをアップさせる。

諸角妙子さん そんな意識で掘り起こしていくと、まだまだいろいろな「気と心を支える支援」は発想できるかもしれない。被災地の人たちが、自分の力を自分で引き出していくような、そんなサポートを。
 すべてがこれからなのだと思う。
 「あなたのことを忘れていない」と伝え、「背中を少しでも押してあげられることはないだろうか」とひとりひとりが考えなくてはならない、そんな時代の中に、いる。

 誰もが想像出来なかった大震災が起こり、津波被害があり、誰もが安全への意識に目をつぶっていた原発による事故とその被害があり、誰もが思いもよらなかった「世界が昨日と大きく変わってしまった」という現実に向き合うことになった。ちょうど一年前の今日。

 あの「世界が一日にして変わってしまった」災害後の道のりで、これまでの暮らしを形作る方向や私たちのやり方はほんとうによかったのかと、これからのことを考えに考え、考えぬいている人たちの言葉に覚醒させられることが多い。
 「私たちは何に気づけばいいのだろう」
 「忘れてしまっていた大事なことはなんだろう」

 おおもとを見つめる誰かの思いに触れるたび、この変わってしまった世界でも、皆が本気で思いを寄せあえば、ほんとうに向かうべき場所に向かっていけるのではないか、そんな希望が湧いてくる。
 私の仕事「インタビュー」で、そんな言葉を掘り起こしていきたいと思う。
 3月11日は毎年やってくる。けっして、1年経った今日が「区切り」ではない。

(インタビュー後記 村井裕子)

HBC TOPRadio TOP▲UP