12月25日放送

 20年近く前のこと。
 友人がクリスマスの季節にドイツはミュンヘンを訪れた。何でも、ミュンヘンには中世から続くそれはそれは幻想的なクリスマスのお祭りがあり、生涯に一度は見るべき価値があるとのこと。彼女は、その憧れだったクリスマスシーズンをたっぷり満喫し、私に天使をかたどったオーナメントをお土産に買ってきてくれた。それ以来、12月はその天使を飾り、まだ見ぬ古き歴史のクリスマス市に思いを馳せて過ごす月になった。
 そうこうして年月が過ぎたある12月、思いが届いたかのように、遥か遠くのミュンヘンクリスマス市が姉妹都市提携の札幌の大通公園で開かれるようになった。通勤途上に憧憬のクリスマス市が出現したのである。その時の驚きと嬉しさといったら!早速オーナメントをあれこれ選び、友人達へもプレゼント。甘くスパイシーな温かいグリューワインに感激しつつ、あまりの回りの早さにびっくりするやら可笑しいやら。ほろ酔いの笑う足でつるつる路面を歩きながら、まさに夢の中にいるような楽しさを満喫した。
 ぐんと身近になった大通のミュンヘンクリスマス市に何年か行っているうちに、面白いことに気がついた。期間限定の戸外のイベントなのに、食器が紙皿や紙コップではなく洗って使う陶器なのだ。食べたり飲んだりしたその食器を、ゴミ箱ではなく食器返却口へ返す。「ごちそうさま」「ありがとう」と微笑みの交換をしながら。

フュルスト・ビルキット・ビアンカさん その心遣いがなんて素敵な催しなのだろうとさらに好きになったのだが、札幌でも本場同様使い捨て食器を使わないゴミ減量のクリスマス市を提案したのが、今回のゲストのフュルスト・ビルキット・ビアンカさんだった。

 ドイツは「エコ先進国」と言われているが、なぜ環境への取り組みが進んだのかを訪ねると、ドイツも日本と同様、環境への意識の高い人もいれば、そんなの面倒という人もいる。意識だけに任せても物事は決して前に進まない。では、何をしたか。ドイツは「仕組み」を考え、国や自治体のルールとしてエコに関する方法を導入したのだと話してくれた。それも、「こっちの方が面白そう」とか、「こっちの方が快適、お得」という、人の心理にうまく響くような、楽しい「仕組み」。
 聞けば、なるほどというようなルールが沢山あった。しかも、自国だけではなく、輸入や消費などを通して他の国へも配慮するフェアトレードなども率先するなど、さすがドイツといった仕組みも進んでいる。

フュルスト・ビルキット・ビアンカさん ビアンカさんは札幌市で環境保全アドバイザーや環境カウンセラーとして活動し、ドイツ方式から様々なヒントを提案しているが、日本でのあるひとつの壁をこんな風に表現してくれた。
 「日本は何かを導入する前から、それは日本では無理。札幌では無理でしょうと言ってしまう。ドイツだから出来るのだと。でも、そんな風に言われ絶対無理とされていたレジ袋を無くす仕組みだって、やれば出来たじゃないですか」
 そうなのだ。そこが、洋の東西問わず大事な精神性なのだと私も思う。
 何かを始める前から「それはしょせん無理」と言わないところから可能性は広がっていく。そして、自治体側のしくみにしても、個人ひとりひとりの意識にしても「それは面白そう、快適そう」というわくわくするところに光を当てながら取り組んでいくことがすべてにおいて大事な根本なのだ。

 ビアンカさんが流暢な日本語で、なにか確固たる精神性も含めたドイツの「エコ先進国」のノウハウを誇り高く話しているのを聞いて、ふと思った。
 日本人の私達、今、もし海外に行って同じような立場で日本のことを話すときに、胸を張って話せる「先進性」は何なのだろう、と。「○○先進国」というキーワードを考えたときに、今の日本は何の先進国でいられるのだろう、と。
 振り返ると、ひとりひとりは精一杯頑張っているが、政治、経済、科学技術までもが混沌としていて、先に進む方向をも見失っている日本。国としての精神性は?哲学は?幸福度は?いったい何を誇れるのだろう・・・。
 すべてが立ち竦んでしまっていて、国が丸ごと自信を失っていることに愕然とする。その現実に何やら蓋をして何も無かったことにしてしまおうというムードさえ漂って、焦りにも似た気持ちになる。

 ドイツは反省を活かす国だと聞く。環境に関しても酸性雨や公害などで酷い状況に直面し、方向転換してきた結果が「エコ先進国」なのだという。
 困難や失敗をした後で、何を考えるか。何を見直すか。
 今、日本はその最大のチャンスなのだ。気づいた大切なことを活かす国。
 次の世代の人たちが、この時代の人たちはよく方向転換してくれたと誇りに出来るような、後でちゃんと答えが出る正しい方向へのバネはどうやって効かせたらいいのだろう。

 答えの出ない2011年のクリスマスが過ぎていく。

(インタビュー後記 村井裕子)

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