12月4日放送

 十代~二十代の若い人達のしっかりした発言に時々感心させられることがある。
 特にアスリート。ゴルフの石川遼選手やサッカーの長谷部誠選手など、自分をきちんと分析し、向かっていく理想を言語化できる高い表現能力と軸のブレの無さは一体どのように育まれたのか、とても興味をひかれてしまう。
 たぶん、「EQ値」が図抜けて高いのだろうと推測する。EQとは、心理学者ゴールマンが提唱した「人格的知性の知能指数(Emotional Quotient)」。心の知能指数ともいわれるが、元々備わっていて数値は変わらないとされるIQと違って、意識次第で高めていけるとされている。人としてのいい「資産」をより磨き、人としてのベースを作るための大切な要素と言えばわかりやすいか。
 EQアップのコツとして、自分の情動を知ること、感情をコントロールすること、目標を設定して頑張るなど自分を動機づけること、他人の気持ちを汲み取ること、人間関係をうまく処理できること…などがあげられるが、自分がこれという打ち込めるものをみつければ自ずと育まれるものであり、スポーツという「ツール」は、特にそれを体現しやすいものだから、一流になるのと連動してEQも磨かれていくのだろうと思う。
 その育み方は決して自然に身に付くものではない。彼らの後ろにはきっと、その大切さを教えた大人がいるに違いないと、その背景を想像したりする。

片桐麻海さん 今回のゲストは、ジュニアアルペンスキーヤーの片桐麻海さん。小学校6年生。世界大会で堂々優勝した、未来のオリンピック候補だ。
 このわずか12歳の彼女が、話していて実に爽快だった。
 突然のラジオ出演依頼には少しとまどったそうだが、「スキーやアルペンがもっとメジャーになるように、たくさんの人達に楽しいことを伝えられるのだったら、出たいと言っています」と、事前にご両親からご丁寧なメールをいただいていた。
 自分が、ではなく、聴いている人たちを視野に入れて、アルペンの楽しさを伝えたいのだという思いに感心しながら、どんな少女なのだろうと、私も楽しみに当日を迎えた。
 スタジオに入った彼女は、聞かれることを想定してきちんと準備してきた紙を目の前に置いていたが、収録が始まると、そのメモを一度も読まずに、ひとつひとつの質問にしっかり考えて、頭の中から思いを真っ直ぐ言葉に換えて話してくれた。
 その、もうすでに彼女の中にある一本の確固たる軸から繰り出される言葉がとても小気味よく、発掘する役目の私は、すでに12歳であることも、小学生であることも忘れるほど心地よい掘り起こしであった。まさに「金塊発見!!」といった心境。
 麻海さんはとにかく、初めてスキーを履いた2歳の頃から雪山が好きで好きで、スキーが面白くて面白くて、その思いでここまで来たのだと話してくれた。
 コーチングを学んだ私は、この若き才能に関わる指導者の皆さんはどんなふうに力を引き出したのかとても興味があったので、多くの選手を育てた名コーチと言われる「旭川ジュニアアルペンチーム」の美波秀行さんの指導について訊いてみた。
 麻海さんが言うには、美波コーチは「とにかく優しい。全然怒ったりしない」そうだ。「鬼コーチではなく、仏のコーチ」。
 聞けば、子供たちにとにかくスキーを好きになって貰うことを第1に、強制的な指導ではなく、とにかく褒めて褒めて、才能を伸ばすとのこと。だけど、「練習すれば必ず成績に繋がる。1本でも多く滑ろう!」という口癖が、しっかりと麻海さんの中にも根付いている。だから、「コーチの言葉を信じて今まで練習してきたけれど、それで結果を出すことが出来ているから、やっぱりコーチはすごい!」と絶対の信頼感で繋がっている。

片桐麻海さん インタビューの最後に、「もっと力をつけていくために何をすればいいと思う?」と訊くと、麻海さんからはこんな答えが返ってきた。
 「人の話をちゃんと聴くこと」。
 まさに、EQの大切な要素である。
 その背景には、多くの大人たちの存在が透けて見えた。美波コーチ始め麻海さんを見守るコーチ達が日々かけてくれる言葉。態度で教えてくれるひとつひとつの大切なこと。そして、ご家族の大きな支え。

 若い心と体に蓄積していくものは、やはり周りの大人たちの与えるものに他ならない。
 そんなことを感じた、気持ちのいいインタビューだった。

(インタビュー後記 村井裕子)

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